生成AI、マルチクラウド、データ主権、サステナビリティなどのテーマに対応、「Oracle CloudWorld」レポート
「統合」と「分散」、オラクルが掲げるクラウド戦略とOCI新発表まとめ
2023年09月27日 07時00分更新
Oracle Database@Azure:分散クラウドがAzureの中まで拡大
分散クラウド戦略に関しては、今回のOCWでもさまざまな新発表があった。
まず、OCW会期直前にマイクロソフトと共同発表したのが「Oracle Database@Azure」だ(詳しくは既報記事を参照)。
Azureデータセンター内にオラクルのサービススタック(ハードウェア/ソフトウェア)を配置し、オラクルが運用するOracle Databaseサービスを提供するこの取り組みは、これまでのマルチクラウド戦略から歩を進め、分散クラウドを“他社パブリッククラウドの中”にまで拡大することを意味する。
マグワイク氏は、マイクロソフトとオラクルは数多くの共通顧客を抱えており、そうした顧客のニーズに基づいて、4年前からOCI-Azureのパートナーシップを強化してきたと説明する。「Oracle Interconnect for Microsoft Azure」と「Oracle Database Service for Microsoft Azure」のエンタープライズ顧客数は、470社以上を数えるという。
ゲストとして登壇したマイクロソフトのジャドソン・アルソフ氏は、「モノクラウド(単一クラウド)戦略はすでに過去のものとなった。顧客はオラクルとマイクロソフトの協働に期待している」と述べた。
「マイクロソフトでは、AI活用を考えている顧客に対して『まずはデータ資産をしっかりと根付かせて(保管、管理できて)いなければ、AIに大きな投資をしても失敗する』とアドバイスしている。だから、オラクルのExadataやAutonomous Databaseにあるデータ資産をAzureで(シームレスに)扱えることは、顧客の進歩を大いに加速させることになる」(アルソフ氏)
なおOracle Database@Azureは、まず北米と欧州のAzureリージョンから提供を開始している。今後18~24カ月をかけて順次、他地域のリージョンにも展開していく計画だという。
Oracle Alloy:一般提供開始、最初のプロバイダーパートナーはNRI
分散クラウドの一形態として昨年発表された「Oracle Alloy」も今回、一般提供開始(GA)が発表されている。日本のNRI(野村総合研究所)が、Alloyを利用してクラウドサービスを提供する最初のプロバイダーパートナーとなる。
発表によると、NRIは自社の東京/大阪データセンター内でAlloyを活用したクラウドサービス基盤を構築し、金融業界をはじめとするデータレジデンシーや各種規制に対応したサービスを展開していく予定だ。
マグワイク氏は、オラクルがクラウドのハードウェア/ソフトウェア基盤を提供し、その運用は各国のローカルパートナーが行うというAlloyの特徴をふまえたうえで、たとえば政府・自治体のような各国の規制が強い市場にも、パートナーと共に参入しやすくなると説明した。
MySQL HeatWave Lakehouse on AWS:「AWSの5つのサービスを置き換えられる」とアピール
分散クラウド関連でははもうひとつ、「MySQL HeatWave Lakehouse on AWS」も発表されている(限定提供開始)。オラクルでは昨年「MySQL HeatWave on AWS」をリリースしたが、今回はその分析対象をオブジェクトストレージ上のデータファイル(レイクハウス)に拡大する。
オラクル EVP Chief Corporate Architectのエドワード・スクリーベン(Edward Screven)氏は、MySQL HeatWave Lakehouse on AWSはトランザクション処理、アナリティクス処理(データウェアハウス/データレイクハウス)、機械学習(AutoML)、オートパイロット(MySQLの自動処理)を高速に実行可能なサービスであり、「AWSが提供する5つのサービスをこれ1つで置き換えられる」とアピールした。
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