LayerXの「全員で採用」と「羅針盤」による組織づくり
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経理精算・法人カード・請求書などの「バクラク」を提供するLayerX。Podcastやカジュアル面談をいち早く採用広報として取り入れ、結果としてベテランから若手まで多用な人材を集めている組織としてスタートアップ界隈で知られている。同社人事広報部でHRBP(HRビジネスパートナー:経営者のパートナーとして人材と組織から事業成長を促進する役割)の数長麻亜沙(かずなが まあさ)氏に、LayerXの人材採用・組織づくりについて伺った。(以下、本文敬称略)
LayerX羅針盤から「全員で採用」を目指す
マスクド:LayerXにおける担当業務と入社の経緯についていただけますか。
数長:主にバクラク事業部における組織人事全般を担当しており、評価制度や組織開発などを担当しています。LayerXに入社する前は人材系のスタートアップやフリーランスを経験しており、東京出身ですがフリーランスになるタイミングで福岡県に移住しました。LayerXは業務委託先として2021年9月から携わり、採用のオペレーション全般を構築してきました。その後正社員へのお話をいただき、福岡在住のままフルリモート社員第一号になりました。
マスクド:LayerXは2023年5月時点で社員数が178名で、半年ほどで58名増えています。どのくらいのペースで拡大しているのでしょうか。
数長:月によって差はありますが、5名程度から多い月で20名ほど入社しています。最近はフルリモート勤務の社員が増えており、6~7名ほどです。東京本社の社員でもリモート業務の割合は高く、エンジニア以外でも週2~3回出社する人が多いです。
マスクド:LayerXは採用に関する情報発信に積極的ですが、どのように時間を捻出していますか?
数長:まず採用広報は活動成果を定量的に表すのが難しいという問題があります。例えば弊社のPodcastがきっかけで応募した人を把握するのは難しいでしょう。こうした背景もあり、弊社では採用広報において明確な数値目標を持っていません。
採用にかける時間の捻出に加えて社員のSNS運用においても、ルールや強制は一切ありません。LayerXとして重要視するのは、社員全員にとって採用が自分の仕事だという意識を強く持ってもらうことです。当社の羅針盤(※)に「全員採用」というキーワードがあり、代表や役員がこれを体現しています。また、弊社の特徴としてアドベントカレンダーを年に複数回行っていますが、声をかけるとすぐに執筆者で埋まります。こうした社員全員が採用の重要性を認識する組織風土を重視しています。
※LayerXにおける会社の戦略・方針を示した組織の行動指針。2023年8月時点でVer2.0にアップデートされた。
マスクド:カジュアル面談を積極的に行っていますが、どのような成果が挙げられていますか。
数長:カジュアル面談の応募プラットフォームとして「LayerX OpenDoor」を開発して、こちらで募集を受け付けています。カジュアル面談は企業が採用を増やす方法として有効ですが、希望者にとってはプラットフォームごとにアカウントを作る手間がかかります。そこで専用の窓口として、役員の石黒が発案したところ、社内のHRメンバーが「できますよ」と内製で開発しました。おかげで応募者はプラットフォームへの登録作業などを必要としないため、お互いのハードルが下がった状態でカジュアル面談を実施できるようになりました。
応募窓口はカジュアル面談だけでなく、自己応募やリファラル(社員による紹介)も多いです。人材紹介会社などのエージェント経由をした応募は、他社に比べると少ないかもしれません。
マスクド:LayerXは書類選考からフィードバックを行うなど、フォローが手厚いと評判ですね。
数長:採用活動における考え方として、「企業と応募者は対等である」という前提があります。弊社が応募者を選考して合否を下すのではなく、お互いのマッチングを見極める場という考え方です。だからこそ選考の過程において、「この点は合致しています」「ここはズレがあります」とフィードバックするのが、お互いにとって対等な関係だと考えています。
マスクド:バクラクにおける経理業務の知識は、社内でどうやって共有していますか。
数長:経理業務には高い専門性が要求されるので、別分野の方が新たに学ぶのは大変です。だからこそ羅針盤における「Be Animal」という行動指針が重要です。
「Be Animal」の意味は、「不確実な状況において、目の前のお客様の反応や足で集めた情報をもとに直感的に動き、新たなファクトを獲得する。お客様や社会の課題解決のために、自分のコンフォートゾーンを出る勇気を持ち続けよう」です。そのため未知の分野でも積極的に学習できる人を、LayerXでは「アニマルだね」と言います。こうした行動指針を共感・体現していただけるかも、採用時に重視しています。
例えば弊社の主要なサービスに関連する経理業務を学ぶ施策には、入社から1ヶ月以内に必ず受ける実務研修があります。受講者はできるだけオフラインで集まり、当社で長く経理を務める社員の指導のもとで紙ベースによる経理業務を体験してもらいます。ここで紙による経理がいかに大変かを体感した後で、バクラクによる業務を経験してもらいます。こうして経理担当者の苦労や、紙とバクラクの違いを理解してもらいます。
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