文部科学省、中小機構、学生起業家がアントレプレナーシップ教育を語る
JID 2023セッションレポート「スタートアップ育成に求められる企業家魂 アントレプレナーシップ教育がなぜ必要か」
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2023年3月3日、ASCII STARTUPが主催する「JAPAN INNOVATION DAY 2023(JID 2023)」が、東京の赤坂インターシティコンファレンスで開催された。会場には、スタートアップ企業をはじめとした76社の展示のほか、スタートアップやイノベーション、先端技術等をテーマにしたビジネスセッションや交流の場が提供された。
「JID」は今年で5年目を迎えるが、今回、初めてアントレプレナーシップ教育をテーマにしたセッションが行われた。セッションでは、ASCII STARTUP副編集長のベルマーカス麻里の進行のもと、文部科学省の和仁裕之氏、中小機構の小田桐美帆氏がアントレプレナーシップ教育の取り組みを紹介した他、高校生で起業を体験した学生起業家の倉田速音氏が登壇し、自らの経験談を語った。
国を挙げてのスタートアップ育成支援がスタート
まず、ベルマーカス麻里が、JID 2023にアントレプレナーシップ教育のセッションが入った背景を解説。ASCII STARTUPでは、JIDを始めとしたスタートアップのマッチングの機会提供や、メディアとしての広報的な支援などを行っているが、同時に若い段階でのスタートアップ人材の創出と育成を自治体や国とともに注力している。
しかし、これまでは学校現場では、こうしたアントレプレナーシップ教育が受け入れられ難い状況があったが、2年ほど前から状況が変わり、自治体や学校が積極的に取り組みを始めるようになった。その大きな理由のひとつが、2022年に発表された「スタートアップ育成5か年計画」だ。今後、エドテックや教育分野においても取り組みが加速していくことを受け、今回のJID 2023でも、「スタートアップ育成に求められる起業家魂アントレプレナーシップ教育がなぜ必要か」というタイトルで、今後の取り組みなどが紹介されることになったという。
文部科学省:産業界や自治体と一体的な取り組みを進める
次に、文部科学省で大学等のアントレプレナーシップ教育推進を担当する和仁裕之氏が登壇。スタートアップ創出とアントレプレナーシップ教育を一体的に支援してきた文部科学省の取り組みや、今後、高校生へと拡大していく教育施策について語った。
始めに、和仁氏はアントレプレナーシップの全体像について言及し、「アントレプレナーシップは、自らの社会課題を発見し、行動を起こして、新たな価値を生み出す精神と捉えており、潜在的に誰もが持っているものである」と話した。そのうえで、「アントレプレナーシップ教育は、己を知り、行動を起こして試行錯誤したり、失敗から学んで軌道修正して改善し続けたりすることが非常に重要。そのためのマインドセットや行動を起こす方法をしっかり学ぶことが根幹にある」という。
文部科学省の取り組みとしては、2014年度から2016年度に実施した「グローバルアントレプレナー育成促進事業(EDGE)」が、アントレプレナーシップ教育のスタートとなった。当初は大学単位で行われていたが、「一大学だけでなく、大学間や産業界や自治体等と連携し、一体的に取り組んでいくことが重要視されてきた」ことから、2017年度からの「次世代アントレプレナー育成事業(EDGE-NEXT)」では、コンソーシアムを形成し、民間企業や金融機関などから5年間で合計9.8億円もの外部資金獲得に至ったという。
そして、2021年度からは、「スタートアップ・エコシステム拠点都市」という8つの拠点都市において自治体や産業界と連携し、アントレプレナーシップ教育や大学発スタートアップ創出の総合的な環境整備の支援を行っている。
和仁氏は、日本の18歳は、将来や目標に対する意識や、起業の意欲が諸外国と比較して低い状況にあることから、「アントレプレナーシップのマインドセットを整え、環境整備が必要である」とし、従来の大学中心ではなく、高校生以下にも拡大していく必要があることを語った。2022年度の補正予算では10億円が措置され、スタートアップ・エコシステム拠点都市を中心に、「EDGE-PRIME Initiative」として、高校生等へのアントレプレナーシップ教育の拡大を行っていくという。
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