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文部科学省、中小機構、学生起業家がアントレプレナーシップ教育を語る

JID 2023セッションレポート「スタートアップ育成に求められる企業家魂 アントレプレナーシップ教育がなぜ必要か」

連載
JAPAN INNOVATION DAY 2023

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中小企業基盤整備機構:高校現場への起業家教育で生徒の意識が変わった

 次にアントレプレナーシップ教育の具体的な取り組みとして、中小企業基盤整備機構(以下、中小機構)が行っている起業家教育事業を、創業・ベンチャー支援部の小田桐美帆氏が解説した。

独立行政法人 中小企業基盤整備機構 創業・ベンチャー支援部 参事 小田桐 美帆氏

 小田桐氏は最初に、日本における開業率の低さや、創業無関心層が多いことなどを挙げ、「日本経済を牽引するベンチャー企業の創出や、地域経済を支える起業家を生み出すこと、起業の裾野を広げるために創業機運の醸成が重要である」と話し、起業家教育を始めるに至った背景を伝えた。

 今年度から中小機構が行っている起業家教育事業は、中小企業庁が2018年度から実施している取組みを引き継いだもので、現在は中小企業庁や文部科学省と連携して進めているという。事業内容として、「起業家教育プログラム実施支援」と「出前授業実施支援」、「起業家リストの公開」の3つを行っている。

中小機構の起業家教育事業

 まず、「起業家教育プログラム実施支援」は、中小企業庁が作成した「起業家教育標準的カリキュラム」に基づき、10~30時間程度の時間数を使った起業家教育を実施する高校への支援だ。授業のサポートやカリキュラム作成のほか、起業家・外部講師派遣支援、アウトプットの機会提供などを行っている。

 2つめの「出前授業実施支援」では、単発で行われる学校での起業家講演や授業について、企画の相談から講師の打診などを支援している。

 3つめの「起業家リスト」は、これらの授業や講演等に協力可能な全国の起業家を、都道府県ごとにリスト化し、中小機構のサイトで公開している。

 今年度に起業家教育事業を行った学校を対象にした生徒アンケートでは、「創業起業に対する関心に変化はあったか」という質問に対して、70%の生徒が「関心が高くなった」と回答したほか、85%が「課題を自分のアイデアで解決してみたい」と回答するなど、大きな変化が見られたという。小田桐氏は、「自身の起業への意識の変化について細かく記述してくれる生徒もいて、多感な高校生という世代に、起業家教育事業を実施することの意義や価値を深く感じられる結果であった」と話した。

生徒の起業への関心が大きく高まったという

大学生起業家から見たアントレプレナーシップ教育

 最後に、実際の学生起業家からの視点を語る立場として、高校時代から起業活動を始めた株式会社HAYATO KURATAの倉田速音氏が登壇した。

株式会社HAYATO KURATA 代表取締役 倉田 速音氏

 倉田氏は、自分が発症した「尋常性白斑」という病気に伴う課題を解決するため、「誰もが太陽の下で楽しめる社会を作る」というビジョンを掲げて、高校1年生から活動を始めた。「紫外線対策できるUVカットの素材を使いつつ、ファッション性も重視した洋服を作ることで、外に出たくなるような気持ちにさせ、病気のコンプレックスを克服したい」と話す。高校時代にクラウドファンディングを行って実際に服作りをし、デパートでポップアップストアなども行ってきたという。

高校生でクラウドファンディングを行った

 これらの経験の中で倉田氏が学びと感じたのは、「挑戦心を忘れない」「自分の気持ちに、より素直になる」「相手をよく知る」の3つだ。「何事も、挑戦しなければ変わらない。自分がやりたいと思ったことは、素直にやってみる。そして、ビジネスにおいては、『ターゲットをどう豊かにするか』という点において、相手をよく知らないと独りよがりになってしまう」と話した。現在は会社のM&Aを行い、白衣のODMをはじめとした新しいチャレンジを始めているという。

起業家には高校生のロールモデルになってほしい

 3名の登壇者の話を受けて、ベルマーカス麻里は「文部科学省や中小機構をはじめ、ASCII STARTUPのようなメディア、民間、コミュニティなど、様々な角度の支援が今後増えていくことで、受講する子どもたちが増えて、今後、社会に出てくることが楽しみ」と話した。

 文部科学省の和仁氏は、「アントレプレナーシップ教育は、子どもたちや学生がリアルな社会において体験の場を提供することが重要だが、学校現場の中では限界がある。学校現場だけではなく、色々な事業会社、スタートアップの方々に関わっていただき、学校内外問わず、多様な 活動の場ができるとうれしい」と、今後の展開に対する期待について語った。

 また、中小機構の小田桐氏は、「地域の起業家の方に、起業家教育に参加していただき、ぜひ、地域の高校生にとっての身近なロールモデルとなってほしい」と呼びかけた。

 学生の立場から「アントレプレナーシップ教育の中で、高校生が外部の大人と出会うことのメリットとデメリット」を聞かれた倉田氏は、「学生が外に出て大人と関わることで、事業がうまくいかなくなってしまうといったリスクもあった。一方で、自分一人ではできなかったことが実現できるなどのメリットは大きく、事業を進めてく上では外に出る必要はあると感じている」と答えた。

 最後に、ベルマーカス麻里は「ASCII STARTUPでは、小中高生向けにアントレプレナーシップ教育を行っているので、一緒に取り組めることがあれば、ぜひ声をかけてほしい」と話し、セッションを締めくくった。

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