仕事で急に上司を乗せることになったり、大きな家電を運ぶ必要に迫られるなど、自動車は購入後に予想もしていない使い方をすることがあります。その中の一つに「クルマの中で一晩を過ごす」いわゆる「車中泊」があります。過去、何度か車中泊体験を書いてきましたが、そのほとんどは「助手席を倒して寝る」というものでした。ですがHondaのZR-Vは違います。ガチで快適に寝られる(と思われる)クルマだったのです。
大男の車中泊はよほど大きなSUVでないと荷室は無理
結局大抵は助手席を倒した方がマシだったり
紹介記事に入る前に、少し長くなりますが、筆者(身長185cm、体重90kgの大男)の経験や思いをお話させてください。筆者は仕事の足としてHondaの「S660」なる2シーターの軽スポーツカーを購入しました。クルマの走りに不満はありませんし、なにかあっても知恵でカバーしてきました。しかし、購入してからしばらくして、想定外の使い方が求められるようになりました。というのも、筆者がモータースポーツ取材の取材をするようになったから。
モータースポーツ取材は、朝6時にサーキット入って出るのは夜9時とか当たり前。さらにサーキットは山奥にあることが多く、ホテルまでの移動に1時間かかったりします。つまり「数時間の就寝のために、往復2時間と宿泊費(8000円くらい)はもったいない」と思いはじめました。逆にサーキット近くの道の駅などにクルマを停め、その中で作業をして寝た方が効率がよいのです。ですが、S660はそうした使い方ができないクルマ。そこで過去、色々なクルマで車中泊を試しました。
そこで得た知見は、ラージサイズでない限りSUVでの車中泊は「助手席を倒して寝る」という方法しかない、ということ。大抵のSUVは後席の背もたれを倒しても、180cmを超える荷室長が確保できないのです。さらに言えば、確保できたとしても、荷室と背もたれの間に段差が生まれ、それをクッションで埋めるなどの対応が求められるなど、就寝スペースを構築するまでのハードルが高く、「だったら助手席で寝る」という考えにいたるわけです。ですが実際に助手席で寝ると、多少なりとも疲れが翌日に残ることに……。
さらに作業するにしても助手席がほとんど。というのも、一見大きなSUVでも、荷室に座ってノートPC作業をするには、天井高が低いのです。
車中泊はミニバンが最適との認識を覆す究極のスタイル
以上のことから、キャンピングカーや車中泊前提のカスタム車を除けば、車中泊をするならミニバンが最適解であると感じています。さらに言えばハコそのものが大きいがゆえ、冒頭に書いた、上司を乗せる、大型家電を載せるといった「購入後に予想もしていない使い方」の大抵なことに、ミニバンは見事に応えるのは言うまでもありません。
ゆえに「自分的に次にHonda車を買うならSTEPWGNしかない!」と思っていたことを正直に告白します。逆にSUVであるVEZELやZR-Vは、「よくできているなぁ」と感心しつつも、購入対象にはならないクルマであったことも、あわせて告白します。
まったく良い例えの写真がないのですが、「ゴルフバッグが詰めます!」という展示は「おぉ、これは分かりやすい」と思うものの、実際にゴルフに行く人からすると「荷物はコレだけでは済まないのでは?」という違和感を覚えたり
さて昨今、自動車メーカーは新車発表時に展示車の横にテントを張るなど、アウトドアとクルマの相性の良さを訴求することが多くなりました。ですが、その展示の多くは、同じキャンプ用品メーカーのアイテムで統一されていたり、「このクルマに、こんなに多くのキャンプ用品が詰めるのか?」といった、ちょっと現実感に乏しく感じる時も。
これは筆者がキャンプに興味が薄いというのもあるのですが、その展示が住宅展示場のモデルハウスや、80年代のトレンディドラマに出てくるセットのような「生活感の薄い違和感」を覚えたりするのです。こういうのはイメージですから、そこにリアルを持ち込むのはどうなの? とお叱りを受けるのはわかっているものの、一方で「神は細部に宿る」というか、説得力が薄く感じるのです。
そんなこんなを思っていた頃、ホンダアクセスさんから「アウトドア体験取材会」のお誘いをいただきまして、指定されたキャンプ会場へ。会場に到着すると、愛しのSTEPWGNと、車中泊の定番N-VAN、個人的に車中泊に向かないと思っているSUVのZR-Vという3車種と、キャンプ用品がズラリ。N-VANでの車中泊は、過去に何度か取り上げているので割愛します。また、STEPWGNとZR-Vのキャンプについては、後日、別記事でご紹介したいと思います。
最初は「住宅展示場みたいな感じ」と眺めていたのですが、これが実に「神は細部に宿る」展示。というのも「実際に車中泊をされている方、キャンパーの方の意見」を取り入れて、「実際に彼らが使ってイイと思ったものをセレクトしている」から。それゆえ取材していくうちに、実に学びが多く、実に楽しく、「キャンプしてみたい」と思いました。
ということで話が長くなりましたが、ZR-Vが車中泊にピッタリ、という話に移りたいと思います。
この連載の記事
-
第483回
自動車
【ミニバン売れ筋対決】ホンダ「フリード」とトヨタ「シエンタ」の良いところと微妙なところ -
第482回
自動車
これがBMWの未来! フラッグシップEVの「iX」は乗り心地良すぎで動くファーストクラス -
第481回
自動車
アルファ・ロメオのハイブリッドSUV「トナーレ」はキビキビ走って良い意味で「らしく」ない -
第480回
自動車
独特なデザインが目立つルノーのクーペSUV「アルカナ E-TECH エンジニアード」はアイドルも納得の走り -
第479回
自動車
レクサスのエントリーSUV「LBX」は細部の徹底作り込みで高級ブランドの世界観を体現した -
第478回
自動車
レクサスの高級オープン「LC500 コンバーチブル」は快適さのその先を教えてくれる -
第477回
自動車
BMWの都市型SUV「X4」は直6エンジンならではのパワフルな走りがキモチイイ! -
第476回
自動車
最新のマツダ「ロードスター」は乗った誰もが乗り換えを検討するレベルのデキの良さ -
第475回
自動車
EV=無個性ではない! BMWのEV「iX3」は剛性ボディーが魅力のミドルサイズSUV -
第474回
自動車
ルノーのコンパクトカー「ルーテシア E-TECH エンジニアード」は軽量でパワフルでスポーティー! -
第473回
自動車
ホンダの大人気ミニバン「FREED」に乗ってわかった5つの良くなったポイント - この連載の一覧へ