北九州市のコミット力がすごい スタートアップ支援6事業合同デモデイレポ
北九州市が初の大規模スタートアップイベント「WORK AND ROLE 2023」レポート 1日目
グローバルアクセラレーションプログラム(GAP-K)採択企業4社による成果発表
GAP-Kは、事業拡大が見込まれるスタートアップ企業に対して、専門家による伴走支援や実証フィールドの提供、北九州市内の参画企業との協業、グローバル展開の支援を行なうプログラム。2022年度はハインツテック株式会社、株式会社Another works、株式会社レボーン、株式会社マリス creative designの4社が採択された。
再生医療・細胞治療の応用を促進・広げる「ナノチューブ膜スタンプ・システム」
ハインツテック株式会社
ハインツテック株式会社は、早稲田大学の技術シーズをもとに2021年に設立したバイオスタートアップ。新しいがんの治療法として細胞の移植による細胞治療が期待されているが、その際に必須である細胞への物質導入は高度な技術と時間を要し、導入できる分子サイズにも制限があるという。この問題を解決するため、同社は、短時間で高効率に複数の高分子を導入する「ナノチューブ膜スタンプ・システム」を開発。半導体の微細加工技術を用いて製造した特殊な膜をガラス管に貼り付けたスタンプで培養細胞に物質を導入する仕組みだ。医療だけでなく、環境、食品、化粧品などの分野にも応用でき、細胞を扱う企業のR&D部門や研究機関をターゲットとしている。今後最も市場の大きい米国で売り上げを立てるのが目標だ。
スポーツチームや学校、自治体への導入が進む「複業クラウド」
株式会社Another works
株式会社Another worksは、成約手数料無料の複業マッチングプラットフォーム「複業クラウド」を開発・運営している。「複業クラウド」は月額定額のサブスク型で、何人採用しても手数料がかからないのが特徴。現在は5万4000名が実名、顔写真付きで登録しており、1000社以上が導入している。一般企業だけでなく、スポーツチーム30チーム以上、学校は全6校が導入。さらに74の地方自治体が導入し、200名以上の人材が複業で参画している。北九州市とも連携協定を締結し、5職種で複業アドバイザーを募集。2週間で80名のエントリーがあり、5名が採用されたという。また北九州市に拠点をもつ企業に対して「複業クラウド」を提供し、北九州市から複業のロールモデルを創出していく計画だ。
AIカメラで危険を検知し、振動で伝える視覚障がい者用歩行アシスト機器「seeker」
株式会社マリスcreative design
株式会社マリスcreative designは、視覚障がい者用の歩行アシスト機器「seeker(シーカー)」を開発している九州工業大学発スタートアップ。視覚障がい者が移動時に特に危険を感じるのが駅のホームや横断歩道だそう。駅のホームドアや横断歩道の音響信号機の設置されていない場所では事故が起こりやすい。「seeker」は、白杖に装着する振動端末とウェアラブルのAIカメラで構成され、カメラが危険を感知すると杖の振動で伝える仕組み。現在は、同社と九州工業大学、NTTコミュニケーションズの3社で共同開発しており、ネットワークの繋がらない場所ではスタンドアローンで動作し、通信圏内に入るとデータをクラウドに転送してデータの利活用や見守りにも役立てられる。今後は、厚生省の日常生活用具給付制度の認定を受け、2万円以下で届けたいとし、2024年前半の量産化を目指す。
においセンサーとAI分析でにおいを可視化
株式会社レボーン
株式会社レボーンは、独自のにおいセンサーとにおいデータのAIプラットフォームの開発、においのコンサルティング事業を展開している。創業者の松岡氏は、13歳でRoboCup世界大会において準優勝し、「ロボットに鼻をつくりたい」という思いから開発を始めたという。においセンサーだけでは、その匂いを人間がどのように感じるのかまではわからない。食品や化粧品などの商品企画や品質管理は人間の嗅覚に頼って評価を行なってきたが、同社のAIプラットフォームを用いれば、これまであいまいだったにおいの標準化が可能になる。完全栄養食を開発、販売するベースフード株式会社は、においコンサルティングを利用し、パンの香りの特徴を地図化した香りマッピングを商品開発に生かしているとのこと。GAP-Kでは営業支援を受け、北九州市内で生産された若松トマトを用いたお酒「若松の赭(そほ)」の香り分析、定量的評価のほか、化粧品メーカーやハーブ生産と加工、自治体、総合商社などへサービスの提案をしているそうだ。
パネルセッション「GAFAMを生み出す地域戦略」
パネルセッション「GAFAMを生み出す地域戦略」には、パネラーとしてレオス・キャピタルワークス株式会社 代表取締役会長兼社長 藤野英人氏、Space BD株式会社 代表取締役社長 永崎将利氏、アレックス株式会社 CEO(Google日本法人元代表取締役社長) 辻野晃一郎氏、モデレーターとしてPIVOT株式会社 代表取締役CEO 佐々木紀彦氏が参加。
ChatGPTなどAIサービスの登場により情報格差は縮小され、地域から世界に通用するビジネスが生まれる機運が高まっている。途中で武内市長も飛び込み参加し、北九州市のポテンシャル、世代交代への課題、起業家を育てるために必要なエコシステムについて議論が盛り上がった。