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成功のカギはリスペクト――イノベーションはオープン、フラット、ダイバーシティな環境で生まれる

JID2023セッションレポート「大手企業とスタートアップがwin-winな関係を築くには」

連載
JAPAN INNOVATION DAY 2023

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短期か長期か、存在しない未来事業は経営企画部をスポンサーに

 2013年からNTTデータでオープンイノベーションに取り組んで来た残間氏は「この10年でオープンイノベーションは当たり前になったが、現場ではどんな課題が生まれているのだろうか」と問いかけた。笹原氏は「共創を支援しようしても子会社で別組織の事業部だと受け取ってくれないこと。日々のコミュニケーションがないと共創は難しい。(組織の)上の方はオープンイノベーションと言うが現業も忙しい。関係性がない人と話をするのは大変だ」と答えた。

 複数の企業でオープンイノベーションに取り組んだ経験をもとに橋本氏は「目指す目的と時間軸によって手段が違ってくる。オープンイノベーションという言葉も、目指すものは会社の状況によってまちまちだ」と語った。現在は三菱地所のビジネスモデル革新に向け、既存事業から脱却していくための起点をつくるという認識でCVCに取り組んでいるものの、前職で進めていたアクセラレータープログラムではむしろ足元の協業を期待していたという。

 三菱地所の社内には短期的な協業を目指すアクセラレータープログラムがあり、各事業部は自分たちの課題解決に資するスタートアップを見つけて協業している。だから短期的なものは事業部側に任せ、CVCは得た情報から短期案件に資する会社を事業部に紹介することはあっても、あくまで長期の視点で投資していく。

 笹原氏は「意識して『共創サポート』と書いている。『協業』だとまさに今の時間になる。もちろんそれもやっていきたいが、共創の中からより未来的なシナジーを考える」と話し、「未来の事業は担当する事業部が存在しないので経営企画部にスポンサーになってもらう」と社内の受け入れ先を確保するポイントを紹介した。まず「100日プラン」をつくり、100日間かけてスタートアップと経営企画部と一緒に考えて動いているそうだ。

コミュニケーションが成功するカギはリスペクト

 セッションで残間氏は「ベンチャーと大企業のコミュニケーション上の成功のカギや気をつけるべきポイントは何か?」と問いかけた。橋本は「人生を懸けて事業をしているスタートアップに対するリスペクト(尊重する姿勢)が一番大事だ。投資したんだからうちのために何かやってくれよと上から目線になりがちだ。むしろ逆で、三菱地所を選んで貴重な時間を割いていただいているという感覚が大事だ」と強調した。

「心の持ちようが大事。そうしたマインドセットを持った人間が大企業にどれだけいるかというと、そんな多くない。どう育てていくかも大事になる」と言う橋本氏。これに対して笹原氏が「ドコモ・ベンチャーズのミッション『力と想いを束ね、世界の景色を変える』にあるように、自分たちの想いもちゃんと持とうと感じている」と応じた。

 残間氏は「オープンイノベーションというとベンチャーの新しい考えを大企業が育てるイメージがあるが、両方が想いをもっていないとだめだ。大企業の人材にイノベーションをやる想いをどう育てるか、そういうマインドを持った人たちとどれだけマッチングできるか。大企業の側も一生懸命やらないと」とまとめた。

スタートアップにCVCが選んでもらう時代

「橋本さんの話ですごくいいなと思ったのは、これからはベンチャーに大企業が選んでもらう時代なんだということ。選んでもらえる大企業であるには何が必要だろうか」と残間氏は問いかけた。

 成長しているスタートアップは本業が忙しく、人も時間も足りないと理解している橋本氏は、CVCとして投資を意思決定するスピードを挙げた。「関係者が沢山出てきて検討だけで半年、1年かけてみたいなことがある。そもそも担当者がスタートアップを全然理解していないので会話が合わない」。スタートアップは付き合っていられないし、付き合うメリットもなくなる。「意思決定をスピーディーにして、スタートアップのビジネスをしっかりと理解し適切な支援ができるVC的な専門性を身につける必要がある。スタートアップから認めてもらえる存在にならなければ有望な企業からは選ばれない」とした。

 笹原氏は「CVCとして共創することで力になれる部分も結構多い。社内グループ内にある事業と、今までどんなスタートアップとご一緒して成長に寄与できたかを洗い出しておく。成功モデルでスタートアップを支援できると、私たちを選んでいただける意味がある」と指摘した。「整理してスライドに(成功事例を)まとめて社内で共有する。いろいろな案件があって忙しいので忘れてしまうから」と笹原氏は説明した。残間氏も「成果をどう(社内で)見せるかは大企業の中で課題。売上に結び付かなくても実はセーフで、中間的なものでも成果と認められるように」と話した。

イノベーションはオープン、フラット、ダイバーシティな環境で生まれる

 「最後に、オープンイノベーションを成功させるために心がけていることは?」と残間氏が2人に問いかけると、笹原氏は「イノベーションが生まれるのはオープン、フラット、ダイバーシティー(多様性)の環境の中」と即答した。そうした環境でお互いにフランクに意見を交わすことで良いものが生まれる。「大企業もスタートアップも共に想いを打ち明けて、いいディスカッションをしながら関係を築きたい」。

 橋本氏は「この国はそもそもチャレンジをしている人たちに対するリスペクトが足りないところがある。人生懸けてチャレンジしているスタートアップにリスペクトのある社会をつくっていけると、大企業側にも挑戦する人が増えてオープンイノベーションもうまくいくのではないか」と日本の風土の変革も求めた。

 残間氏は「イノベーションはパッション(情熱)、仲間、大義だと思っている。スタートアップと大企業の各々が想いを持ち、みんなでリスペクトし合い、1人ではできない事を仲間で大義を実現する、そんな世界になればと思った」とセッションを締めくくった。

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