MSX0の特性はBasicで簡単にIoTを制御できる点にあり
現在のIoT機器の弱点は、様々なセンサーを簡単に使えるようにする仕組みが存在しないところにあると西氏は考えています。
「MSX0は、MSXとSeeed studioの様々なセンサー(グローブセンサー)との連動が、非常に重要なテーマであると認識していました。BASICとグローブセンサーを結合するライブラリをホビイストの人に書いてもらって、いろんな人が勝手にオープン化していって、それでプラグ&プレイで、簡単につなげられるようにする。グローブセンサーのプラグ&プレイをどう実現するかが大きなチャレンジなわけ。グローブセンサーは外のセンサーだからそういう機能は基本的に持っていないので。(マイコンとセンサーの接続を担う)I/Oのライブラリを書いてやるのはチョチョイのチョイだという強者もいるけど、それは本当に一部であって、一般的な人にはできないわけよ」
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MSX0とSeeed studioのグローブセンサー。連携することで、様々なIoT機器をつなげることができる。MSX0から出ているケーブルは、商品化を検討中のモニターやHDMIに接続するための追加パーツ
「それをもっと簡単なやり方、BASICは50年前の言語でそういうのがいいのかというのはいろんな議論があると思うけど、実績のあるBASICを使って、I/Oセンサーとコンピューターをつなぐ世界をやってみようというのがMSX0です。それで基本的にMSX1とか2は全部できるから、1より下の0という名前をあてはめました」
そして、MSX0はかつてのMSXが持つことができなかった、ネットワークをフルに使うことが大前提となっています。
「MSX0は、グローブセンサーとWi-FiとBluetoothをつけたコンピュータ。標準でWi-FiとBluetoothが付くんだけど、それに加えてLoRaのIoT用の低電力のネットワークと、LTE 4Gのネットワーク。あとギガビットイーサのネットワークをサポート。だから5つなんですよ。Wi-Fi、Bluetooth、LoRa、LTE、PoE。その5つがあれば充分かなと。そんな感じです。グローブセンサーをBASICから操れるようにできるといくらでもセンサーモジュールを拡張できるんですよ。これは10個ですけど、20個、40個と……まあ、あと80個のやつもありますね」(西氏)
そして、MSX0に持たせる特性として重要な鍵を握るのが、その数々のセンサーを「プラグ&プレイ」で実現する点です。西氏がサンプルを見せてくれましたが、QRコードを利用して、あるセンサーをつないだあとに、それをスキャンすればライブラリがダウンロードできるような簡素な仕組みを考えているようです。
「センサーに付属しているQRコードをカシャっと撮影すると、こうしてさ、本体にピッと繋げればそのセンサー用のライブラリが落ちてくる。プラグ&プレイが実現できるんだよね。センサー500種類くらいのドライバーをみんなで一生懸命書けば、それがドーンとダウンロードできるようになる。いいでしょう? ワケのわからんところからワケのわからんセンサー買うてきてさ、センサーのスペック見てさ、入力電圧と出力電圧考えてやるってあほらしいと思うでしょう。ハードをつくる人、1人に対してソフトつくる人は10人だよ。ハードもソフトも作れないけど使える人は100人だよ。ぼくはそのね、ハードもソフトも作れないで、コネクターに入れてボタンを押せる人をお客さんにしたい」
カートリッジを差し込めば、どんなアプリもその作りを意識しないで動いていたMSXを、今度はセンサーで拡張して同じような簡単さをMSX0では実現しようとしています。
今、西氏に支援しているユーザーにはどういう人がいるのかと聞いたところ「電子工作が好きな人、ソフトだけでなくハードも好きな人。あと、IoTは関係ないけど昔のゲームをポケットでしたい人。そういう感じもある。いろんな人。ありがたいなあと思っています」(西氏)とことです。
購入者の年齢で、一番多いのは40代で、時期的にはかつてリアルタイムにMSXを購入していたわけではない人も多数含まれているのではないかと推測されていました。
MSX0は、簡単に誰もが制御できるIoTデバイスとして登場しようとしています。一方で、昔のゲームソフトを動かしたいというニーズにも答えようとしています。ゲームパッドを取り換えれば、小型のゲーム機としてプレイが可能です。プログラムはWindowsで開発し、データを転送して使用する形での仕様になります。
しかし、MSX0は、新生MSXのスタートにすぎません。さらに完全新規の思想性を持ったハードとしてMSX3、MSX turboの発売も計画されています。
後編では、新型のMSXはどういう思想性をもって開発が進められているのかについて紹介します。
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