渋谷、横浜など5都市が「スタートアップ育成5か年計画」の展望を語る
YOXO FESTIVAL2023「スタートアップ・エコシステム拠点都市トークイベント」
2023年1月27日〜28日にかけて、横浜のみなとみらいで「YOXO FESTIVAL(よくぞ フェスティバル)2023 〜横浜でみらい体験〜」が開催された。2日間にわたりスタートアップによる技術実証や「未来」をテーマとしたロボットとモビリティ技術の展示、トークイベントなどが行なわれた。
本記事では27日に実施されたセッション「スタートアップ・エコシステム拠点都市トークイベント」の模様をお伝えする。2022年11月24日、政府より発表された「スタートアップ育成5か年計画」を受け、グローバル拠点5都市の担当者が各拠点の取り組みを紹介。拠点間の連携や日本全体におけるエコシステムの形成について、ディスカッションされた。
ディスカッションに先立ち、経済産業省新規事業創造推進室長の石井芳明氏はスタートアップ5か年計画の概要を説明したうえで「今はとても追い風だ。スタートアップ育成5か年計画を起動するための1兆円の予算パッケージを用意しているので、ぜひご活用いただきたい」と述べた。
渋谷区を拠点に環境整備、国際化、実証実験に取り組む
東京コンソーシアム
渋谷区の特徴は、民間主導で形成されたエコシステムの上層で、区がグローバルな施策を進めている点だ。国内有数の大学が集まる東京では、1990年代から学生を中心としたスタートアップエコシステムが、渋谷区を中心に形成されてきた。1990年代に誕生しIPOを果たした企業が次世代の企業を支援するサイクルにより、現在では2000社以上のスタートアップが集積している。
スタートアップが続々と生まれる環境下で、渋谷区は環境整備、国際化、実証実験という3つの柱からなる施策を推進している。環境整備では、150社以上が加入している官民連携のコンソーシアム「Sibuya Strartup Deck」がある。金融や不動産などの分野ごとに部会を設け、問題をヒアリングしたうえでサービスを検討している。金融分野では「法人口座を開設するハードルが高い」という声が大きかったため、コンソーシアムが金融機関と連携した支援パッケージを作成。通常2〜3か月かかる法人口座の開設を、1週間で可能となった。
国際化の取り組みでは、スタートアップビザの運用を約1年半前から実施している。既に500件以上の問い合わせがあり、24社にビザを発行した。累計では日本の自治体の中で最多の発行数だ。また、2022年11月には英語でスタートアップの情報を発信するグローバルメディアを立ち上げた。
実証実験の取り組みでは、通年での募集や区民がモニター参加することでBtoCのサービスを試しやすい環境整備に取り組んでいる。
産学官でディープテック、若手起業家の育成などを促進
Central Japan
Central Japanのエコシステムは愛知県名古屋市と静岡県浜松市を中心に成り立つ。特徴はディープテック、若手起業家の台頭、オープンイノベーションの3つだ。名古屋市と浜松市はものづくり産業という共通のバックグラウンドがあり、基礎研究の集積から生まれるディープテックが強みとなっている。2022年には自動運転のソフトウェアを開発するTIER IVや空飛ぶクルマを開発するSkyDriveが、それぞれ100億円規模の資金調達を実施した。また、愛知県に本社を置くデンソーが電動航空機用のモーター開発に注力していることもあり、世界に向けた次世代モビリティの開発拠点として注目されている。
2つ目の特徴は若手起業家の台頭だ。名古屋大学発のスタートアップであるオプティマインド代表取締役CEOの松下健氏や、名古屋市に拠点を置くAcompany代表取締役CEOの高橋亮祐氏など、複数の若手起業家が「Forbes 30 under 30 Asia(アジアを代表する30歳未満の30人)」に選出されている。若手起業家が台頭する背景には起業家育成の取り組みがある。東海地区5大学による起業家育成プロジェクト「Tongali(とんがり)」からは次々とスタートアップが誕生している。また「Tongali」に至る小中高生への取り組みを実施。小学生だけでも1000人規模が参加するプロジェクトになっている。
3つ目の特徴はオープンイノベーションだ。名古屋を拠点とする複数の研究開発型のグローバル企業とスタートアップのマッチングを成長の鍵と認識。グローバル企業と国内外のスタートアップを繋ぐ取り組みが進められている。中部経済連合会や名古屋イノベーターズカレッジなど、産学官が一体となった交流の促進によりさまざまなイノベーションが生み出されている。