NFTの今後を予測 米トップマーケターキューハリソン・テリー氏が語る
NFT Summit Tokyoは、日本発グローバルWeb3コミュニティ。シリコンバレーと東京に拠点があり、日本のWeb3推進の活性化のため、国内外からトッププレーヤーを招聘し最先端の議論をする場を創出することで、日本経済の発展に貢献することを目指している。2022年12月13日、14日には第3回となる「NFT Summit Tokyo 2022 Winter」が浜松町の東京都立産業貿易センター浜松町館ビルで開催された。
冒頭、NFT TokyoファウンダーのNatsuko氏が登壇し、本日3回目となるNFT Tokyoだが、3回やって内容が3回ともこんなにも違うのは初めてだと感想を述べた。NFT Tokyoでは、国内でのWeb3事情活発化させるためにイベントなどを通じてコミュニティづくりを支援している。まだ新しい業界でもあり、投資もチャレンジングな段階なので、コラボできるパートナーを見つけられるコミュニティの重要性を強調した。
そして、事務局としても参加者の役に立てるよう力を尽くしたいと開催に際しての意気込みを述べ締め括られた。
最初に「NFTハンドブック」発売記念セッションとして、「NFTで変わるビジネスモデルとは?」と題したセッションが行われた。
NFT書籍”NFTハンドブック”の著者、キューハリソン・テリーが来日!日本初登壇!
あの米国版マネーの虎「シャーク・タンク」でも有名な投資家マーク・キューバンのマーケティングチームにも携わるトップマーケター。日本初登壇で、マーケター、NFTをはじめWeb3従事者必見の内容となった。
まず最初に、22日に発売された「NFT Handbook」についての紹介があり、日本語版の発売に際してのエピソードが紹介された。
テリー氏は、2015年からNFT(Non-Fungible Token)を始めていたが、当時は偽造や改ざんが難しいブロックチェーン技術「代替不可能なトークン(NFT)」を扱うことは珍しく馬鹿げていると思われており、周囲からはおかしな人だと思われていたという。しかし6年後には市場も大きくなっており、NFTに関して初めての書籍を執筆する機会が訪れる。
日本語版に関しては、日本で講演した際に「実際に手を動かしている人が書いた本が日本でも欲しい」というNatsukoさんの依頼がきっかけで、いつか日本で本を出したかったというテリー氏の意向もあり実現したという。
NFTの本当の価値、現在のテクノロジーとの違いについて問われたテリー氏は、「現在のテクノロジーで作られたものは、例えばどんな素晴らしい写真でもそれはただのデータであって、その画像の権利を守るブロックチェーン技術はありません。つまり複製されたデータのうちどれがオリジナルの写真かわからなくなります。しかしNFTならそのデジタルデータの帰属先(権利保持者)を証明することができます。デジタルであればどんなファイルでもNFT化できます。」と回答。一方で、今の技術ではJPEGデータとNFTの差別化は難しい面もあるが、今後10年〜15年経った際にはNFTなしでは実現できない技術があるだろうと見解を示した。
また、NFTはアート作品にしか応用できないと思っている人がいいのでは?という質問には、「芸術分野での活用は一つの素晴らしいユースケースである」と示された。これまでの技術革新においてアート作品に適用されたケースはなかったが、NFTは芸術の市場で初めて技術が活用された例だと説明がなされ、今ではゲーム業界でも活用されたり、リーガル分野で契約事項に使わたりと採用例を紹介。さまざまな活用がある中でもアート作品における事例がわかりやすいのでそういう印象なのだろうと解説があった。
それ以外の活用事例としてメタバースが挙げられた。今まではゲーム内通貨など仮想空間での価値は、現実世界の価値とリンクしなかったが、NFTによって価値が関連づけられるようになると、メタバースがNFTの未来の扉を開くことになるのでは?と期待を寄せた。一方でそれが実現されるには7年〜10年はかかるだろうとも示された。
最後に、テクノロジーに詳しくない人にNFTをどのように説明するか?という質問にテリー氏は、ダイヤモンドの取引に例えて説明。ダイヤモンドは、カット、カラー、クラリティの3つのランクで価値を決める。NFTで言えばメタデータや固有の所有物などがそれに相当する。ダイヤはその石そのものの価値と、それを指輪にしたりネックレスにしたりすることで価値を高めます。NFTもやっていることは同じで、リアルの世界でやってきたことをデジタル化したに過ぎないと締め括られた。
会場からは、音楽業界とNFTは親和性が高いと思われているが、アートやゲームよりも浸透していない気がするのは、なぜか?と質問があった。
それに対してテリー氏は「ジャスティン・ビーバーを知っている人はどれくらいいるでしょうか?」と問い返す。彼がYouTubeで有名になり当時では数少ないSNSネイティブミュージシャンとなったことに触れ、彼のように全ての音楽活動をNFT上で行うアーティストが登場することを予言した。例えば全ての契約をブロックチェーンで行うとか、権利が分散化されているなどの例を挙げ、現在はそこまで至っていないがNFTを活用することで中間業者が不要となる楽曲販売やストリーミングサービスが出てくる可能性が示唆された。
NFTの初期の波が終わった次に来るのは何か?という質問には、5年後くらいにDynamic NFTsに関するものが実現するのではないかと考えが示された。また、それとは反対のSBT(Soul Bound Token:ソールバウンドトークン)も将来性が高いとして、Dynamic NFTsが時とともに変化するのに対してSBTは学位などのように譲渡不可能なものに適用できるので、個人のIDとして使うようになる可能性にも言及された。一方でテクノロジーの使い分けや理解にはまだ10年以上の時間が必要になるだろうとも説明された。
最後に、クリエイターが作品を発表する際、NFTを活用したいと思わせるために必要な戦略はなにか?という質問が寄せられた。
それに対しては、まず、今ここにいる私たちが未来を切り開いてゆく、今後行われるなんらかの前例になるということが示された。その上で、クリエイターや購買者のとるべき行動のヒントはDAO(分散型自律組織)にあるのではないかと指摘する。自分が属するコミュニティの価値観や信頼がベースになってDAO同士が結びつき、異なるコミュニティとの交流が可能になる。例えば、NFT TokyoでもDAOが作成できるので、今日ここにいる皆さんが参加した証拠を作り、将来素晴らしいアイディアや基準ができた時に利用するといったことも可能になると、締め括られた。