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日立製作所が取り組むCMOSアニーリングマシン&量子ゲート型のシリコン量子コンピューター

連載
大河原克行の「2020年代の次世代コンピューティング最前線」

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CMOSアニーリングマシンの事業化

 たとえば、損保ジャパン日本興亜では、10万件の契約対象に対して、保険を組み合わせ提案する最適化問題に活用。古典コンピュータでは2.6年を要するような計算を、5.5日で完了させた。これをもとに新たな保険商品の開発につなげることができるという。

 また、三井住友フィナンシャルグループのコールセンターでは、数百人規模の勤務シフトを作成する最適化ソリューションとして活用。余剰配置の発生を80%削減し、要員配置の適正化で高い有効性が発揮できたという。

 日立では、「日立のCMOSアニーリングマシンは、解ける問題の規模に相当するスピン数を高くし、様々な目的に応じて使い分けることができるようにしたのが特徴である。各種業務への適用を通じて、知見を蓄えており、それによって、成果を実証している」とする。

 2021年10月には、高速での金融商品取引に適用するための技術を開発。多数の金融商品と複雑な売買ルールを考慮した取引をリアルタイムで処理可能になったという。

 CMOSアニーリングの実用化において大きな一歩となるのが、2022年10月から新たに提供を開始したCMOS アニーリングのクラウドサービスである。

 CMOSアニーリングの計算性能だけでなく、アプリケーションまでを一括で提供し、幅広い業種や業態の実業務において、手軽で、迅速に適用を進め、コスト削減や収益向上などを実現。企業のDXに貢献できるとしている。

 「業務にすぐに適用できるアプリケーション群を組み合わせて、手軽に使えるクラウドサービスとして提供するため、導入までのリードタイムを短縮することができる。高度な専門知識を必要とせず、導入する業務部門で操作できる」という。

 従来は、日立側でCMOS アニーリングを活用し、計算結果をレポート形式で提供していたが、CMOS アニーリングクラウドサービスでは、大規模最適化計算を行うシステム環境とアプリケーション機能を組み合わせたSaaSとして提供すること、さらには、必要に応じて、各企業特有の項目を個別カスタマイズして開発することができるという特徴も持つ。

 また、必要に応じて、企業の業務に熟知したSEと、CMOSアニーリングに精通した日立の専門チームによるコンサルティングサービスを提供するため、業務への迅速な適用が可能だ。

 今後は、在庫管理や渋滞解消など、提供するアプリケーションを順次拡充していくことになるという。

 CMOS アニーリングの幅広い利用が一気に増えることになりそうだ。

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