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学生のやる気が高まる3D都市モデル。テンションを保つ工夫とは?

~アカデミア研究開発事例~【後編】

特集
Project PLATEAU by MLIT

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メタバースから環境音の保全まで、PLATEAUを活用していきたい

――PLATEAUを今後どのような場面で活用していきたいかを教えてください。

川合:環境省さんからのお話で、景観保存の一環として、自然の音を保存するプロジェクトがあります。一時期、音の風景を選定しようという事業がありました。自然の音や人工的な音、複合的な音、お祭りの音のようにある時期でないと聞こえない音もあれば、年中聞こえるせせらぎの音、鳥の声、そういったものを選定してから20年ぐらい経ちました。

 いまでは、こういう文化的な音風景がなくなりつつあります。そこで、こうした音を保存しようという話がありまして、その地理データとしてPLATEAUが使えないか。逆に言えば、地理情報に対して、音という違うレイヤーの情報を重ねていくことによって、保存や記録ができる。あるいは、可視化ができるのではないかということで取り組んでいます。

 CesiumJSというWeb GISでは、録音データが比較的扱いやすいことがわかっています。ゲームエンジンとは、また違う方法なのですが、いま、こうした環境で、何ができるのかを考えているところです。横浜全域のLOD1のデータを入れたところ、それなりに動いているので、これは使えそうだなというところまで来ています。

[補足] CesiumJSは、ブラウザでGISを扱えるソフト。PLATEAU VIEWも、このCesiumJSをベースに作られている。

PLATEAUの継続を強く望む

――PLATEAUに今後、期待すること、こうなるとうれしいことを教えてください。

川合:ぜひ、このサービスは閉じないで続けてください。ある日、突然使えなくなってしまうと困ります。

 要望としては、地域の拡大をお願いしたいです。東京23区や横浜市はありますが、藤沢や茅ケ崎がなかったり、熊本市はあっても阿蘇がなかったりと、やはりないところがまだ多いので。

 また今後、LOD3のデータが出てくると、さらに面白くなってくると思います。地図データのほうは点群も公開されていて、試験的にいろいろと中を見ているのですが、これはやはり自分の地域がほしいし、ないならないで作らなければだめだろうとも思いました。

 国土交通省さんのほうでしっかり精度のあるデータをアーカイブしてもらうとともに、一方でOpenStreetMapのように、ユーザーが投稿できるようなサイトやサービスが並列してあってもよいのではないでしょうか。

 OpenStreetMapのデータは、怪しいものもありますが、自分たちで作ったものがどんどんオープンデータになっていく側面があります。今は、スマートフォンにLiDARが付いていて、ある程度点群も取れるので、全部公開するのにふさわしくないデータもあるのかもしれませんが、ユーザージェネレートな情報とPLATEAUのデータがうまく組み合わされていくと、いろいろ使えるのではないかなと思います。

[補足] PLATEAUを使った「みんなで地図を作ろう」という主旨のサービスとしては、株式会社アナザープレインと株式会社ホロラボが運営する「みんキャプ」(https://mincap.tomap.app/)がある。

――PLATEAUを使っているときに、難しい部分があれば教えてください。

川合:さきほどの話と重複しますが、ひとつは、データが提供されている範囲です。活用する我々もがんばらなければならないのですが、範囲をどんどん広げていって、いろいろな自治体や、いろいろなデータが使えるようになってほしいです。

 もう一つは、データの重さです。データの詳細度をLOD3、LOD4と上げたものを作っていただきたい一方で、そのデータはものすごく重いでしょう。いろいろなメッシュの大きさを用途に応じて使い分けるなど、詳細度とそのデータの重さのバランスみたいなところを我々のほうも工夫していく必要があるし、そういったうまい使い方ができればいいと思います。

PLATEAUのLOD3データ(沼津市)

 あとは、PLATEAUのWebサイトの取り組みは、新しいですね。普通、国土地理院の場合、「オープンデータを公開しています。使ってね」で終わりになるのに、PLATEAUの場合、ユースケースとか、こういう使い方しているとかを出していますよね。

 ハッカソンで去年優勝した、ゴジラが国交省を壊しに行くという、あれはインパクトがありました。それをツイッターなどSNSでうまく展開していくから、これまでの国のデータセット、オープンデータとは、違う角度から見せているなと感じています。

 学生もそういうものを見せるといい反応をします。やはり、地理院の基盤地図情報だと、あのページを見てみんな逃げ出してしまうので。

 PLATEAUは、ファーストページがすごく学生の心をぎゅっとつかむんですよ。新作のゲームみたいな感じで。結局、中身は同じところに行くんですけれども、これまでにない見せ方をされているので、ぜひ、途中でサービス終了ということがないように、継続して使えるようになっていただけると、うれしいと思います。ぜひ、よろしくお願いします。

川合 康央(YASUO KAWAI) 文教大学 情報学部 情報システム学科 教授,学科長

1972年三重県生まれ。京都工芸繊維大学大学院で都市計画を学び、2002年博士課程修了。同年より文教大学情報学部に着任。研究室では、オープンデータとゲームエンジンを組み合わせ、様々な社会課題を解決することをテーマにした研究を行っている。

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