アニメとゲームで学んでもいい。ちょまどさんと聞くエンジニア英語学習のポイント
「エンジニアのための英語講座 AI翻訳時代に必要な英語学習とは」レポート
ブロークンイングリッシュでもとにかく話しかけて度胸を身につけた
もともと大学では英文科を専攻しており、英語の読み書きはある程度できたが、会話は得意ではなかったというちょまど氏。英語ペラペラの帰国子女や留学経験者だらけの環境で、周りと比較してしまい自信がなかった。その状態で、2016年に大手外資系日本法人に入社したところ、上司がアメリカ人になり、業務上の会話が英語になった。
最初は英会話の自信のなさから、ちょまど氏は「なるべく会話イベントが発生しないように」と、エンカウントを避けるなど業務上必要最低限の会話しか起こらないようにしていたという。
だがそんなある日、そのアメリカ人上司と楽しそうに話している日本人を見かけた。聞き耳を立ててみると、その人の英語は、文法も語彙もめちゃくちゃで、発音も完全に日本語の、身振り手振りでなんとかなっている、勢いだけのブロークンイングリッシュだった。
それでも二人はとても楽しそうだったし、事実、そのアメリカ人の上司はこう言っていた。「ぼくは彼が好きだ。楽しそうにたくさん話しかけてくれる。日本人は真面目な人が多いから、まるで『"完璧な英語" でなければ話してはいけない』みたいに思っている人が多いみたいだけど、ぼくはね、彼みたいに、生き生きとコミュニケーションをはかってくれる人がとても重要だと思う。少なくとも『完璧な英語でないから』と避けられるより256倍いい」
ちょまど氏はこの言葉に衝撃を受けたという。自身の「英語」に対する向き合い方を根本から覆すことになった。
「それまでの私にとって英語は、ちょっとでも間違えたらバツがつく、国語や社会と同じ受験科目の一つのような感覚でしたが、コミュニケーションのツールだということを強く意識しました。それからは、間違えてもとにかく話しかけていたら、次第に度胸がついてきました」と、自身の英会話のターニングポイントを話した。
ITエンジニアの世界で仕事をするなかで、英語の中で最も重要なスキルは(技術ドキュメントを読む)リーディングで、次がリスニングを含む会話能力だと話すちょまど氏。
海外へ行くと普段利用しているプロダクトの開発者と話すこともあるそうだが、そのときに英会話ができると、細かいニュアンスや要望が伝えやすく、より深い話ができることを実感したという。
そんなちょまど氏は、自分の好きなアニメやゲーム、漫画などで英語を勉強しているとのこと。日本語で見て内容を理解しているアニメを英語版で見返すそうだ。また、ゲームであれば英語の音声と一緒に字幕も表示されるので、学習ははかどると話す。ちょまど氏の海外の知人も、アニメやゲームで日本語を覚えた人は多いそうだ。
ちょまど氏の話を聞いたスタディーハッカーの田畑氏は、「ちょまどさんが英語が受験科目だと感じていたとおっしゃったように、日本人の英語学習者は読み書きに重点を置きがちだが、英語の会議などでリスニングに苦手意識を持っている人は多い。特に、2006年以降はセンター試験(現在の大学入学共通テスト)にリスニングも取り入れられているが、それ以前に勉強をしていた今の社会人は困っている人が多いのではないか」と日本人の英語に対する苦手意識について分析した。
また、ちょまど氏の英語学習についても「ビジネスの現場で使える英語を身につけるには、そのための英語表現をある程度身につける必要はあるが、英語の学習は習慣化することが大切なので、好きなことを通じて学習を日常に組み込めるのはちょまどさんの強みだと思う」と話した。
エンジニアに必要な英語学習を整理
続いては「エンジニアに必要な英語学習とは」をテーマに、スタディーハッカーの田畑氏が解説。スタディーハッカーは「STUDY SMART」を理念に掲げ、3ヶ月や6ヶ月の短期間で効率的にビジネスに必要な英語力を底上げする「ENGLISH COMPANY」などのサービスを提供している教育系企業だ。
スタディーハッカーが英語学習において重要視しているのが、エビデンスに基づいた効率的な言語の学習方法を研究する「第二言語習得研究」に則ったカリキュラムの提供だ。その第二言語習得研究でわかっていることとして、田畑氏は次の観点を挙げる。
●インプットなくして言語習得はおこらない
当たり前に聞こえるかもしれないが、社会人の英語学習においては、この点が軽視されがちだと田畑氏。社会人になると、ちょまど氏も苦労した英会話の必要性に迫られることが多く、解決策として英会話スクールに通い、アウトプットである会話をひたすら行うという人が多い。しかし、単語や文法の知識の学習、リーディング活動といった地道なインプットもバランス良く行わないと効率的な上達に結びつかないと田畑氏は話す。
●大人と子供の言語習得のメカニズムは同じではない
当たり前に聞こえるかもしれないが、社会人の英語学習においては、この点が軽視されがちだと田畑氏。社会人になると、ちょまど氏も苦労した英会話の必要性に迫られることが多く、解決策として英会話スクールに通い、アウトプットである会話をひたすら行うという人が多い。しかし、単語や文法の習得といった地道なインプットもバランス良く行わないと効率的な上達に結びつかないと田畑氏は話す。
また、巷では「赤ちゃんのように自然に言語を習得するのが理想だ」とも言われるが、日本にいる社会人だとこれはなかなか難しい。すでに母語を身につけている点も大人と子供の違いだ。母語が一旦身についた人が、二つ目の言語を習得するときは、違う学習メカニズムが働くという。母語習得時の知識も活かされながら第二言語の学習は進むため、うまく活用できると大人の学習はより効率が良くなると田畑氏は話す。
母語が身についている大人は、最初に体系的な語彙文法の知識を重点的に固めたうえで、「読む」「聞く」といったスキルを身につけることが重要だという。その後「話す」「書く」といった産出スキルの学習に取り組むと、効率的に身につくわけだ。ただし、一方通行で学習するのではなく、受容スキルを身につける段階でも並行して少量のアウトプットの練習は必要だと田畑氏は話す。
その上で、個人に合った最適な英語学習を行うために考えるべきこととして、田畑氏は「現状の英語の知識・スキルのレベル」をチェックすることが重要だと話す。外部テストなどの指標を利用して、現在地をしっかり把握した上で、学習方法を考えることが効率的な学習につながる。また、「どのように英語を使いたいのか」を考えることも必要だ。「仕様書を読めればOK」なのか「プレゼンをリアルタイムで理解したい」のかなど、それぞれの目標に合わせて、どこまで学習を進めるべきか考えることも重要だと田畑氏はアドバイスした。