自治体職員向けDX支援ソリューションを紹介、横浜市や東広島市の導入事例も
ServiceNow「自治体には“最初から最後までデジタルでつなぐ”統合基盤が必要」
2022年05月20日 07時00分更新
ServiceNow Japanは2022年5月19日、自治体職員向けDX支援ソリューションの取り組みに関する記者説明会を開催した。2022年3月末にServiceNowがISMAPへの登録を完了したことや、横浜市や東広島市への導入事例などを紹介しながら、さまざまな業務に特化したSaaSを統合基盤上で提供するServiceNowが、自治体業務のデジタル化に最適であるとアピールした。
システム間を「職員の努力」でつなぐ非効率な自治体業務の現状
ServiceNow Japanで公共営業本部の営業本部長を務める野澤さゆり氏は、「自治体業務におけるDXのポイントは『住民や職員を最初から最後までデジタルでつなぐこと』」だと説明した。既存の(レガシーな)システムありきの構成では、システムとシステムの間をメールや電話、Excelなどを使った「職員の努力」でつなぐことになり、無駄な労力がかかる。統合基盤(プラットフォーム)がベースにあれば、そうした必要がなくなる。
「“デジタルで入り、デジタルで終わる”プラットフォームを整備すべきだ。それによって、高いユーザー体験と業務の効率化が一気に加速する。Now Platformによる統合基盤上でサービスを提供できるServiceNowが、自治体向けには適している」(野澤氏)
Now Platform上で稼働する各種アプリケーションはLGWANに対応しており、2022年3月末にはISMAPへの登録も完了している。これにより、自治体が機密性の高いデータを扱う庁内システムとしての活用に適していると語る。
ServiceNow Japanでは、国内約70社のパートナーによるエコシステムを通じて、自治体向けの販売体制を強化しているという。さまざまな自治体ソリューションや業務アプリケーションと連携することも可能で、自治体が導入済みの既存リソースも活用できる。これによって、行政サービスや庁内業務のDXに貢献できるとした。
「ServiceNowのプラットフォームやソリューションを活用することで、行政業務環境や行政サービス、IT管理業務のデジタル改革を推進できる。さらにローコード/ノーコード開発によって、迅速にサービス展開を進めることができる点も、自治体のDX推進につながる」(野澤氏)
文書管理、予算管理、住民向けサービスにおける具体的改善例
公共SC本部 アドバイザリーソリューションコンサルタントの山田一也氏は、自治体における文書管理、予算管理、住民向けサービスといった業務を取り上げ、ServiceNowの統合プラットフォームによる改善効果を紹介した。
文書管理では、ServiceNow上に職員用ポータルを配置して、庁内の申請業務をすべてデジタル化することを支援する。ServiceNowの統合基盤である「Now Platform」では、起票、承認依頼、追記、承認といったプロセスを一本化し、職員の業務を効率化することができるという。またデータの保存先は、REST APIに対応したストレージであれば既存のものが利用できる。
ワークフロー処理だけでなく、過去の申請書類に対する検索性を高められるほか、ダッシュボードで状況を可視化することで、申請にかかる時間の管理や滞留しやすい場所の特定を行い、業務フローの改善につなげることも可能だ。
予算管理業務については、横浜市の事例を紹介した。横浜市では、ServiceNowのプロジェクトポートフォリオ管理支援ソリューション「Strategic Portfolio Management」を採用している。
従来の予算申請プロセスはメールとExcelによるやり取りで行われていたため、差し戻しなどの作業が繁雑化していたが、ServiceNowの採用によって、予算申請に関わる工数を大幅に削減。ステータスの管理、集計を自動管理し、申請業務を自動的に次のステップに移行させることができるため、業務処理の迅速化にも貢献しているという。また、各予算のレビュー結果をダッシュボードで確認したり、シミュレーションしたりできるようにすることで、管理者の意思決定を支援する。加えて、プロジェクトの実行状況は、ServiceNow上で記録、報告することもできる。
「横浜市では、行政評価の精度を高め、中期経営計画を見直し、最適な予算編成につなげる狙いがあった。ServiceNowによって、従来は手動で行っていた予算管理やプロジェクト管理を、エンド・トゥ・エンドでデジタル化できる」(山田氏)
ServiceNowを活用した横浜市の予算・財務情報管理システムは、2023年夏以降に段階的に稼働し、2024年3月に全面稼働予定だという。
続く住民向けサービスでは、東広島市の事例を紹介した。
東広島市では、2021年4月から運用を開始した市民ポータルサイトにおいてNow Platformを採用。このほど新たにマイナンバーカード受取予約をWeb化し、その結果として手続き窓口(市民課)への電話問い合わせが大幅に減少した。そこで得られた余剰時間で、デジタル化に対応できない業務や市民へのサポートができるようになったという。
「これまでのデジタル化は住民サービスの向上にフォーカスが当たっていたが、『誰一人取り残さない』デジタル化を進めるためには、職員体験の向上が必要。職員の業務が効率化されることで、空いた時間に、人にしかできないサービスが提供できる」(野澤氏)
さらに、NowPlatformによるシステム標準化や再利用によって、IT管理の面でもメリットがあることを説明した。「“野良システム”のようなものが無くなり、ガバナンスを効かせることもできる」(山田氏)。
パートナーソリューションも紹介した。アスコエパートナーズが提供する住民向けポータル「手続きナビ」「申請サポートプラス」は、オンライン手続きのデータをAPI経由でServiceNowに連携。これにより、庁内のデジタル化部分をServiceNowが担う仕組みが構築できる。
「ServiceNow単体ではすべてのデジタル化をカバーできない。(パートナーが提供する)連携ソリューションを活用することで、エンド・トゥ・エンドのワークフローが実現できる。パートナーが持つ、差別化できるサービスやソリューションを活用していきたい。また、すでに自治体が活用しているソリューションとの連携も、ServiceNowの差別化になる」(野澤氏)