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159機関の地銀や信用金庫とリコージャパンが協定締結

中小企業DXは“地方金融機関”から 全都道府県に広がる三方よしのビジネスマッチング

2025年03月31日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 福澤/TECH.ASCII.jp

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 現在、全国の中堅中小企業は、電帳法やインボイス制度、働き方改革、介護報酬改定などへの対応に追われ、DXの推進が避けられない状況にある。

 リコージャパンは、全国の地方銀行や信用金庫などの地域金融機関と連携し、地域の中堅中小企業のDX化を支援する取り組みを2019年5月から開始。約6年の期間を経た2025年3月25日、47都道府県のすべてにおいて、各金融機関との協定締結が完了したことを発表した。

 これまでに159の地方銀行、信用金庫と協定を締結。地域金融機関と、リコージャパンが全国に展開している48支社(東京だけ2支社体制)および358か所の営業所が連携することで、地域の中堅中小企業のDX化を支援し、地域経済の活性化や、持続可能な社会づくりにつなげていくという。

 リコージャパンの常務執行役員 エンタープライズ事業本部 事業本部長の石田貴彦氏は、「国全体の経済成長を実現するには、地域経済の活性化が必要であり、そのためには地域の企業が元気でなくてはいけない。そこに関わるのが地域金融機関であり、リコージャパンが一緒になって中堅中小企業のDX化を推進する。我々のビジネスコンセプトは、『Customer's Customer Success(CCS)』であり、お客様のその先のお客様にまで届く価値を創出することを目指している。『地域金融機関の先にある、地域中堅中小企業』に価値を提供する」と説明する。

リコージャパン 常務執行役員 エンタープライズ事業本部 事業本部長 石田貴彦氏

地域金融機関・中堅中小企業・リコージャパン“三方よし”のビジネスマッチング

 リコージャパンでは、2019年5月の協定を皮切りに、2020年までに28都道府県で、51の地域金融機関との協定を締結。さらに2022年には、金融機関との連携を行うための専門組織である「金融共創ビジネス営業部」を新設。47都道府県をカバーするための取り組みを加速してきた経緯がある。

 現在、地方銀行・36行、信用金庫・123金庫と協定を締結。これは地方銀行では全体の37.1%、信用金庫では全体の48.4%にあたる。一方、石田氏は、「数を増やすことは目指していない。金融機関を通じて、それぞれの企業が持つ課題を聞き、提案の機会を得て、しっかりと寄り添った営業活動を行う。地域に根ざした企業へのお役立ち件数を増やしていくことに力を注ぐ。また、金融機関のスキルアップにも貢献していきたい」と語る。

金融機関との契約状況

 各地域金融機関との協定内容は、「デジタル化や資金、本業の支援などによる経営課題解決や生産性向上のための顧客マッチング」、「IT導入補助金活用セミナーや、DXやGX、AIソリューションの体験会など、顧客に応じた課題解決につながる情報提供」、「リコージャパンの提案による金融機関自身のDXに向けたペーパーレス会議システム、契約書管理、ワークフローなどの導入支援」からなる。地域密着で、地方の中堅中小企業の経営課題、業務課題を解決するための様々なソリューションをワンストップで提供。リコージャパンがオフィス領域で培った課題解決力をもとに、同社が持つ技術力や環境対応へのノウハウを活用して、DXおよびGXの観点から支援する。

 具体的には、業種ごとに共通した課題や困りごとを把握できる、土木や建築、設備、福祉介護、観光・宿泊、不動産、卸売、製造、医療、運送の10業種にわけた業種別アプローチツールを地域金融機関に提供。リコージャパンの支社や営業所と連携した取引先への同行訪問の実施や、課題解決のためのIT導入の提案やサポート、IT導入補助金申請支援、補助金にかかる報告書の作成サポートなどを行っている。

業種別アプローチツール

 地域金融機関のメリットは、中堅中小企業に対する資金支援だけでなく、DX促進による経営支援や業務課題解決の提案によって、業績の向上や倒産および廃業リスクの低減などを見込めることだ。中堅中小企業にとっては、デジタル化による業務効率化、コスト削減、補助金の活用によるIT化の促進を、金融機関とリコージャパンの伴走支援によって得られる。

 実際、中堅中小企業を取り巻く環境は、電帳法やインボイス制度、働き方改革、介護報酬改定といった法改正への対応などが求められ、IT活用が避けられない状況にある。また、2025年10月に迎えるWindows 10のサポート終了に伴い懸念されるセキュリティリスクへの対応を、取引先である大手企業から要請されるといった動きもある他、中小企業においても脱炭素化が求められ始めており、DXおよびGXの要望に対する提案活動を加速させる必要があるという。

 リコージャパンのエンタープライズ事業本部 金融共創ビジネス営業部 部長である須山哲男氏は、「DXという観点では、販売、財務、給与、人事に関する提案が多い。また、法令対応に関する案件も多くみられている。また、製造業では製造管理、建設業では原価管理への関心が高い。地域性もあるため、金融機関と話を進めながら、地域ごとに最適な提案を進めている」と説明する。

リコージャパン エンタープライズ事業本部 金融共創ビジネス営業部 部長 須山哲男氏

 また、リコージャパンにとっても、地域金融機関を介することから、中堅中小企業が安心できる関係をすぐに構築でき、経営層との関係強化も図れる。すでに、課題が手のひらに乗っているような形で把握ができ、提案の質も向上している。「新たなチャネル開拓や営業効率の向上という点でもメリットがある」という。

ビジネスマッチングによる効果

 地域金融機関を通じた紹介企業数は、これまでに全国で6000社以上となり、成約数は2000件超に達しているという。このうち、リコージャパンとの取引がなかった新規顧客は7割強を占めており、地域における新たな顧客獲得に大きく貢献している点も見逃せない。同社は、2025年度の金融機関からの紹介企業数を、2024年度から倍増させる目標を掲げる。

 また、地域金融機関に対するスキルアップでは、渉外担当者を対象にしたDX勉強会をそれぞれに実施。個別テーマでの勉強会や、DX体験会、金融機関主催のイベントの支援、自治体や商工会議所、関連団体との連携による各種活動までを展開する。

 他にも、中小企業応援サイトでは、業種別事例を紹介するとともに、補助金や助成金を検索できるメニューも用意。地域金融機関の担当者が、実際に提案ツールとして活用している例も出ているという。

中小企業応援サイト

埼玉縣信用金庫や山形県の荘内銀行など成果も続々

 最後に連携協定の成果についても紹介された。

 地方銀行との協業では、地域信用金庫の本店移転に伴うインフラ更改において、PCやプリンタの更新、ネットワーク構築などをリコージャパンが担当。また、地元企業のDX化を進める際に、金融機関がRICOH kintone plusが最適であると評価した地域においては、リコージャパンが中心となって中堅中小企業に展開するケースもあるという。

 埼玉県の埼玉縣信用金庫では、県内においてDX体験会を開催、業種や業務に応じた最適なソリューションを提供するとともに、協業の事例を紹介する動画を制作して、伴走型で中堅中小企業のIT化を支援している。山形県の荘内銀行とは、SDGsに関する連携協定を締結する。ものづくり補助金を活用して、作業分析ソフトウェアやPC、IWB(インタラクティブホワイトボード)などの導入を支援。GX領域連携強化プランの検討など、山形県内の顧客に提案するソリューションの協業を推進している。

連携協定により生まれた事例

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