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3年間でユーザー数“15倍”を目標に国内本格参入

“根回し文化”の日本で急成長中 AIアシスタント「tl;dv」は会議を機会に変えられるか

2025年04月21日 09時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 あらゆる企業のミーティング(会議)がブラックボックス化しており、参加できないと重要な情報を逃してしまう――。「tl;dv(ティーエルディーヴィー)」は、こうした課題を解決するために生まれたAIミーティングアシスタントだ。

 2020年に創業したドイツのtldx Solutionsが提供するサービスで、グローバルで200万ユーザーを有し、ここまで順調に成長を重ねてきた。単に議事録を取るだけではなく、他ツールとの連携やAI分析によって、会議の内容を個人やチームの力として活用できることが特徴だ。

 今回、世界で最も高い成長率を誇るという日本市場に本格参入する。

 同社の共同創業者 兼 最高経営責任者であるRaphael Allstadt(ラファエル・アルトシュタット)氏は、高い成長率の理由について、「日本には“根回し文化”があり、ミーティングがビジネスの重要なツールである」一方で、「まだまだ手作業で議事録が取られている。だからこそ、tl;dvが日本のビジネスの効率化に寄与するツールとして成長している」と説明する。

tldx Solutions 共同創業者 兼 最高経営責任者 Raphael Allstadt(ラファエル・アルトシュタット)氏

レコーディングボットが参加してない会議も自動記録

 tl;dvは、アルトシュタット氏がバーガーキングなどの大手企業で働いていた頃に痛感した“会議がブラックボックス化している”問題を、AIで解決できないかという想いで誕生した。同社は、「知識がすべての組織の中をスムーズに流れる世界を作る」というビジョンを掲げている。

 tl;dvは、ZoomやMicrosoft Teams、Google Meetといった主要なビデオ会議ツールにレコーディングボットが参加して、録画や文字起こし、要約をしてくれるサービスだ。カレンダーサービスと接続することで、ユーザー自身が忙しくて参加できなかった会議も自動で記録してくれる。

 文字起こしや要約は、日本語を含む30以上の言語に対応。社内用語などを学習させて、精度を高めることも可能だ。

レコーディングボットが会議に参加、有料プランでアバターや名前を変更できる

会議が自動で録画され、文字起こしされる

 AIジェネレーターによる要約を、会議の種類や用途に応じて最適化するテンプレートも用意されている。独自のテンプレートで、出力する言語や内容を自由にカスタマイズすることも可能だ。「複数のミーティングの中で、特定のプロジェクトやチーム、顧客に関わることだけを要約することもできる。一度設定すると、同じトピックで会議が開かれた際に、どう進展があったかも追いかけられる」(アルトシュタット氏)。

会議内容をシームレスに他サービスに登録、AIアシスタントで分析・効率化

 さらに、こうして蓄積した会議の内容を、業務プロセスにシームレスに組み込んだり、分析したり、AIの業務支援につなげられるのが、tl;dvの強みとなっている。

 例えば、会議の要約内にやるべきタスクが含まれていた場合、サービスを移動することなくNotionやAsana、Jira、Trelloなどのタスク管理ツールに登録できる。HubSpotなどの営業ツールを含め、5000以上のサービスとデータ連携でき、使い慣れたツールに会議の知見をつなげることが可能だ。

要約から直接、タスク管理ツールに登録

 会議の分析では、参加者が会議で話した割合や質問の数、会話の長さ、つなぎ言葉の頻度などを数値化してくれる。AIジェネレーターに対して、複数の会議をまたいで情報を質問したり、顧客との会議の内容を参照しながらお礼のメールを生成してもらうようなこともできる。

会議の内容が数値化される

AIジェネレーターが会議内容を基にメール生成

 営業組織に最適化な分析機能も充実している。「AIコーチングハブ」機能では、顧客との会議をトラッキングして、予め設定しておいた質問や議論をしているかといったことを可視化してくれる。

AIコーチングハブで会議のパフォーマンスを分析できる

 ドイツの企業ということで、コンプライアンスやセキュリティも万全だ。GDPRやSOC2などの国際基準に準拠しており、今後は、日本の規制にも順次対応していく。Oktaを通じてシングルサインオン(SSO)も実装予定だ。

 

 直近では、AIと外部ツールをつなぐための標準規格である「Model Context Protocol(MCP)」に対応しており、AIエージェントなどでtl;dvの会議データをデータソースとして扱えるようになっている。対面会議を記録できるモバイルアプリケーションも開発中だという。

2025年の製品ロードマップ

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