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スタートアップで起こりやすい知財トラブルを防ぐには?

2022年2月22日開催「起業前から知っておきたい知財基礎知識by IP BASE in 神奈川」レポート

特集
STARTUP×知財戦略

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起業前から知っておきたい知財の基礎知識

 第2部は、オリーブ国際特許事務所の川上氏の講演「起業前から知っておきたい知財基礎知識」は、1 知的財産権、2 特許制度、3 商標制度について概要を解説した。

1 知的財産権の概要
 知的財産権には、特許法、実用新案法、意匠法、商標法の4つがあり、それぞれ保護対象が違う。特許法は発明(アイデア)の保護、実用新案法は物品の形状等の保護、意匠法はデザインの保護、商標法は会社名や製品/サービス名の保護、と覚えておこう。

2 特許制度の概要
 特許を取得すると一定期間の独占権が与えられる。ただし、その代償として出願内容等が公開され、第三者は公開された発明を利用する機会が得られる。これにより、技術の進歩や産業の発展に寄与するのが特許制度の目的だ。

 特許は、出願したからといって、すべての発明が特許を受けられるとは限らない。特許は出願してから3年以内に審査請求をし、実体審査で特許要件を満たしていると判断された場合に、特許査定が発行される。特許要件を満たさなければ、拒絶理由通知が発行される。その場合、意見書・補正書を提出して拒絶理由が解消すれば、特許査定が発行される。

 特許要件としては、新規性、進歩性、記載要件を満たしているかどうか、産業上利用できる発明であるかどうか等が特許法で定められている。

 事例として、小学生が発明したハンガーを紹介。ハンガーの根元と左右の3カ所にマグネットの吸着バンドに取り付けることでハンガーの絡まりを防ぐというもの。出願では拒絶理由通知が発行されたが、審査で挙げられた公知文献のハンガーは左右の2カ所にのみ磁石を埋め込まれたもので安定的に保持できないものであった。本願発明は根元にも吸着バンドがあることで新規性があり、安定的に保持できることから技術的な意味があるとして進歩性が認められ、結果的に特許が付与されている。難しいアイデアでなくても、新しく、なるほどと思えるものであれば特許になり得るので、アイデアを思い付いたら気軽に弁理士に相談してみるといいだろう。

3 商標権の概要
 商標権とは、商品やサービス(役務)に使用するマークを保護する権利のこと。マークと、そのマークを使用する商品・サービスとの組み合わせで1つの権利になるのがポイントだ。

 商標は指定商品・指定役務によって権利の範囲が決まる。指定商品・指定役務には第1類から第45類までの区分があり、願書に記載する区分数によって出願等の費用が変わることを知っておこう。

 商標権の効力には「専用権」と「禁止権」がある。専用権は、登録商標を指定商品・指定役務に独占的に使用する権利。禁止権は、指定商品・役務の類似範囲で他人が登録商標を使用することを禁止する権利で、商標権は類似の範囲まで及ぶ点に注意したい。

 また商標には登録要件があり、商品・サービスとの関係で識別力がないものやアルファベットの1文字または2文字からなる商標などのありふれた名前は、商標として登録できない。会社やサービス名を付けるときは、これらの要件を満たするように気を付けよう。

先輩スタートアップの事例から学ぶ知財戦略

 第3部は、株式会社CSイノベーションの筒井氏が「CSイノベーションの知財戦略」と題し、実際に起こった特許トラブルの事例から、知財の重要性と他社との連携時に方法を紹介。

 CSイノベーションは、宇宙開発技術を応用し、製品開発の支援や技術調査・研究、センシングソリューションなどを提供しており、大手企業やベンチャーからの受託開発が多い。

 まず知財の取り組みの注意点として、1)特許申請は早くすること、2)機密保持契約書だけで安心しない、3)契約書は妥協しない――の3つを挙げた。

 創業間もない時期は、資金不足から特許費用が捻出できず、特許を取らずに他社と機密保持契約を交わして大切な情報を開示してしまうことがある。同社が体験した例では、大手企業からの受託契約で開発した技術について、相手企業が勝手に特許を申請されたケースや、ベンチャーの依頼で開発した製品が独自技術として発表して資金調達に活用、海外特許も申請されていたことが発覚したケースなどを紹介。弁護士や知財総合相談窓口に相談して、解決するまでに相当の費用と時間がかかったという。

 いずれも機密保持契約を結んでいたが、情報が漏れても証明が難しい。技術のコアとなる情報は簡単に公開しないように情報を精査して管理する必要がある。技術を確実に守るには、早期に知財化することが大事。予算がなければ、行政の助成金などを活用して進めていくといい、とアドバイスした。

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