メルマガはこちらから

PAGE
TOP

1日でも早く取り組みたいスタートアップの知財戦略

特許庁×信州スタートアップステーションコラボ企画「地域企業における知財戦略の重要性」

特集
STARTUP×知財戦略

1 2

 2022年1月20日、特許庁は信州スタートアップステーション(SSS)とのコラボ企画として、知財セミナー「地域企業における知財戦略の重要性」をZoomで開催。香坂特許事務所所長弁理士の香坂 薫氏と特許庁総務部企画調査課ベンチャー支援係長の今井 悠太氏が講師となり、知財の重要性について講演を実施した。

 信州スタートアップステーション(SSS)は長野県が運営する創業拠点。長野市、松本市の2ヵ所に起業・創業の相談窓口を設置している。セミナーは「地域企業における知財戦略の重要性」をテーマに、弁理士の香坂 薫氏による知財戦略の進め方についての講演と、特許庁総務部企画調査課ベンチャー支援係長の今井 悠太氏による特許庁のスタートアップ支援施策についての紹介が行われた。

会社の強みを活かし、失敗を防ぐには知財戦略が重要

 香坂氏の講演では、中小企業が知財を持つメリットと知財の落とし穴、知財戦略の進め方を解説した。

 最初に、特許権、商標権、実用新案権、意匠権とは何かを説明。物や方法、製造方法の発明を保護するのが「特許権」、ブランド名やマークなどを保護するのが「商標権」、商品の物品の構造や形状にかかる考案を保護するのが「実用新案権」、特徴的なデザインを保護するのが「意匠権」である。これらの4つは「産業財産権」と呼ばれ、他社の模倣を排除できる独占排他権という強い権利になっている。これらに著作権を加えたものが「知的財産権」、さらにノウハウやブランド、営業秘密を加えたのが「知的財産」、人的資産、経営理念、技能を含めて「知的資産」といい、最近では知的資産を可視化して収益につなげる経営「知的資産経営」が活発化している。

 知的財産権を保有する3大メリットは「独占」「連携」「信用」。競合他社の参入障壁となり、オープンイノベーションや資金調達の場面で有利に進められる。特許などは登録されるまで時間がかかるが、出願中の段階であっても商品資料などに「特許出願中」と表示することで宣伝効果があり、登録後と同様に、競合他社へのけん制、交渉力や信用力のアップ、社員のモチベーション向上といった効果が期待できる。こうしたメリットは経営戦略上の強みになり、また会社の「強み」をより活かしてくれるものだ。

 知的財産権を活用した成功事例として、ベステラ株式会社のプラントの解体工法「リンゴ皮むき工法」(特許・商標権を取得)、ハードロック工業株式会社の特許権をライセンス収入につなげている事例、足立石灰工業株式会社のデザイナー・大学と連携し、意匠権などを活用して自社ブランドを確立した例、不二越機械工業株式会社の特許を押さえて世界トップクラスのシェアへと躍進した事例などを紹介した。

 知財戦略を疎かにすることでビジネスに大きなダメージを受ける可能性がある。

 商品のリリース直後など初期段階は知財の問題に気付きにくく、収益が上がり、認知度が広がってから初めて知財の問題が表面化するパターンが多い。他社が商標を登録していることが発覚してビジネスがストップした、販売好調な製品が実は他社の特許権や意匠権を侵害しており、製造販売停止・損害賠償を請求された、といったケースは実際によくある。トラブルの解決には時間もお金もかかり、築きあげてきた信用にも響いてしまう。知財は基本的に早い者勝ちなので、知財戦略は一日でも早く取り組むことが重要だ。

 知財戦略の進め方のポイントとして、1)会社の強みの確認、2)強みを活用するための知的財産の検討、3)社名、商品名、サービス名についての登録商標を特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」で確認し、誰も取っていなければ速やかに商標登録する、4)競合他社の技術、デザインについて、特許権、意匠権の確認、5)自社の強みである技術、デザインについて、特許権、意匠権の取得を検討――の5つを挙げた。弁理士や弁護士などの専門家やINPITの知財総合支援窓口も活用するといいだろう。

1 2

バックナンバー