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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第648回

VIA C3を開発したCentaurをインテルが買収、もとはMIPSだったArchiTekのRISC-Vコア

2022年01月03日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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買収の目的はエンジニアの獲得
Centaurが開発したIPはそのままVIAに残る

 今回の買収は公告にもあるようにエンジニアの獲得がメインであって、従来Centaurが開発してきたIPの類はそのままVIA Technologiesが保有する模様で、CHA+NCoreもまだVIAの手元にあることになるが、現実問題としてこれをVIA Technologiesが製品化する可能性は限りなく薄いだろう。もちろんこのIPをZhaoxinにライセンスし、Zhaoxinが製品化する可能性はゼロではないとは思うのだが、こちらも望みは薄そうだ。

 ところでなぜインテルが? という話であるが、同社もエンジニアが足りていないのは周知のことである。昨今はGAFAを始めとする大手事業者が、自前でプロセッサーを含むシリコンを開発して使う傾向が加速しており、こうしたことができるエンジニアが引っ張りだこになっている。

 ただ、もともとそうしたエンジニアが山ほど余っているわけではないうえ、この連載でも何度か触れているように、できるエンジニアが突如退職して自分でAIベンチャーを起業、というケースも非常に多いため、慢性的に人手不足になるわけだ。そうなると、エンジニアを大量に抱えているメーカー、つまりインテルやAMDから引き抜く形にならざるを得ず、それもあってインテルやAMDも常にエンジニアを募集している。

 Centaurは昨年の時点で70人ほどのエンジニアがいたと記憶しており、おそらく100人にはいかない程度だろうが、まとまった数のエンジニアを一気に確保できるとあれば、この金額は高くなかったのかもしれない。それにしてもエンジニア1人あたり1億円超えてるというのはすごいことであるが、それだけ即戦力になるエンジニアの募集が難しい、ということであろう。

 一方のVIA Technologiesにしても、すでにx86ベースの新製品投入は途絶えて久しく、ただし組み込み向けに製品を販売してきたことを考えると、いきなり製造中止というわけにもいかない。その意味では、製品ライン(製品を製造・販売する権利)は維持しておく必要があるが、すでにCentaur Technologyを傘下に収めておく理由はない。

 インテルに売却することで、これまでのCentaur Technologyへの投資をいくらかでも回収できるのであれば、悪い取引ではないと判断したのであろう(今回の取引では、既存のC3/C7/Nanoを引き続き製造・販売する権利はVIA Technologiesに残される)。

 もちろんVIA Technologiesは一番厳しい時期にCentaur Technologyを入手したことで乗り切っているから、単純に総投資額で判断できる話ではないのだが、現時点では持て余していたのは事実だろう。連載560回で説明したように、すでにHenry氏はCentaur TechnologyのCEOでもなんでもない。その意味でもVIA TechnologiesはHenry氏への義理は果たしたと言えるだろうからだ。

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