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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第560回

Centaurの新製品はAIコプロセッサー内蔵のx86互換CPU VIAのCPUロードマップ

2020年04月27日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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VIAの子会社Centaurが
x86互換プロセッサーを開発

 この連載でVIAのCPUロードマップを最後に取り上げたのがいつだったかと思ったら、なんと2009年7月だった。

 長らく新製品を「コンシューマー市場には」投入しなかったVIA Technologies、というか同社のCPUデザイン子会社であるCentaur Technologyであるが、同社はいまだに健在である。

 一部では中国Zhaoxinに買収されたかのような報道もあったが、実際にはそんなこともなく、引き続き新製品のデザインを継続している。買収騒ぎは、単にVIA Technologies経由でCentaurからZhaoxinにIPを提供したというのが事実だそうだ。またその際にVIA Technologiesの物理設計チームがZhaoxinに協力したとのこと。

 ただ、VIA Technologiesそのものは、もうx86というよりもArmのSoC(それも昨今ではQualcommのSnapdragonシリーズがかなり多い)をベースにした組み込み向けソリューションに半ば専念している。

 昨年のCOMPUTEXではスマートフォンベースの自動運転ソリューションのデモを行なったり、最近では監視カメラソリューションなどを相次いで発表。この4月にはISO-26262(自動車分野で必須となる機能安全に関する認証)を取得したりと、かつてのx86互換ソリューションをPC向けに広く提供していた面影はまったくない。

 ただ、それはそれとして引き続きCentaur Technologyはx86ベースのプロセッサーを開発し続けている。これはCentaur Technology CEOであるGrenn Henry氏の情熱でもあり、VIAの側も「彼に言うことを聞かせられる奴なんていないよ(笑)」(*1)ということで、Centaurが現在もCPU設計チームを維持して新製品を開発していることは間違いない。

 ところがその方向性は、昨今の状況を反映して多少変わってきた。VIA Technologiesは前述の通り、ここ数年はAIベースのビデオ解析を利用したソリューション(自動運転だったり監視システムだったり)に注力しており、結果としてより高いInference(AIの推論処理)性能を持つプロセッサーやコプロセッサーが求められている。

 こうしたニーズが届いた(*2)のだろうか? Centaur Technologyは2019年11月に新製品のプレスリリースを出すとともに、同月ニューヨークで開催されたISC(International Security Conference & Exposition) EAST-2019において、新しいx86 SoCベースの監視カメラソリューションを展示している。

新しいx86 SoCベースの監視カメラソリューション。ただしVIA Technologiesもここにブースを出してVIAの監視カメラソリューションを展示しており、その一角にこれが置かれたという感じに見える

 ポイントはこのデモが、新SoCの実シリコンで動作していることであり、単なるペーパーローンチではなく、実際に稼働する製品を見せていたことだろう。

 このSoCであるが、もともとCentaurはCHAという名称のx86 SoCを開発しており、このCHAに新たにNcoreと呼ばれる機械学習用のアクセラレーターを追加したのが、昨年11月のデモである。

 Centaurはいまだにこの製品全体の名称を明らかにしてないので、とりあえずCHA+Ncore(仮称)とする。Ncoreはあくまでも機械学習用アクセラレーターの名称である。

 このCHA+Ncore、2019年12月にLinley Microprocessor Reportで最初に情報が公開されたのだが、今年4月6日から9日まで開催されたLinley Spring Processor Conference 2020で、CentaurのParviz Palangpour博士(Senior Engineer, AI Software)とGlenn Henry氏(こちらは質疑応答のみ)により、CHA+Ncoreの紹介が行なわれた。前置きが長くなったが、今回はこのCHA+Ncoreを解説しよう。

(*1) 以前Richard Brown氏(VP Marketing, VIA Technologies)が来日した際の雑談で出てきた発言。たしかにGrenn Henry氏に物事を指図できる人間はそういないだろう、とは思う。余談ながらGrenn Henry氏は2019年2月に社長職を降りて、現在は元社長兼Chief AI Architectというポジションに就き、社長職にはSenior EngineerだったAl Loper氏が就いている。

(*2) メテオフォール型開発における「祈り」みたいなものかもしれない。

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