「みらい体験」でウェルビーイングにつながる街づくり
第三部のトークセッションでは、「街ぐるみのみらい体験」について具体的なアクションを深く掘り下げるべく、「横浜発、街と一体となったイノベーション創出へ」をテーマにクロストークが行われた。ファシリテーターは横浜未来機構事務局 事務局次長の大橋直之氏。
PST株式会社 大塚寛氏は、自動搬送ロボットなどのプラットフォームを利用し、横浜の公園で見られるような「マルシェ」を自動搬送したいと想いを巡らせる。「コトを生み出すだけでなく、社会の中でどれだけのインパクトを与えられるかが大事」と同氏は話す。
大塚氏の「マルシェ」という言葉にインスピレーションを刺激されたのは、株式会社マクニカの佐藤篤志氏だ。同社は完全自立走行のシャトルバスを既に社会実装しており、「ぜひ、ここ横浜でもやりたい」と意欲を示している。「自動運転は単なる移動手段ではなく総合的なプラットフォーム。地域活性化のモビリティだ」と話し、同氏はバスだけでなくセグウェイや公共交通機関をはじめとするさまざまなモビリティとの連携を希望した。
佐藤氏の完全自立走行のシャトルバスの話を受け、株式会社アペルザの石原誠氏は「会議室のかわりにバスを使用するのも面白い。バスからは横浜の景色が一望でき、魅力を伝える街づくりにつながる」と新たなアイディアを閃めく。第一部でも話があった、領域を越えたクロスオーバーによって新たなイノベーションの可能性が生まれた瞬間である。
株式会社アペルザは横浜で誕生したスタートアップベンチャー企業だ。同機構にはまだスタートアップ企業が少ない事を指摘し、「トップランナーの端くれとして今後も実績を残し、結果として横浜にスタートアップが増え、機構にも名を連ねる様になってほしい」と今後の活動にやる気を見せた。
株式会社資生堂の中西裕子氏は「人が動く場所でコトがつながっていく」と話す。日本の中で最も利用者が多いとされている横浜駅で画像・音声解析技術を応用して体調やメンタルの状態を見える化し「通るだけで健康になれたり、美しくなれたりする場所にできたら。場所としての価値も創っていきたい」と横浜在住者ならではの想いを語った。
短い時間の中で具体的なコラボレーションの芽が息吹く、非常に白熱したトークセッションとなった。 今回の登壇者4名に共通していたのは、「ユーザーが笑顔になるものを」という価値観である。製品やサービスを作って終わり、提供して終わりではなく、その先にいるユーザーを見つめることこそ、「ヒト中心のイノベーション」といえるのではないだろうか。
現在、機構の活動はどちらかというと企業寄りに見え、一般社会で暮らす人々にとっては馴染みが薄いものかもしれない。だからこそ「常にユーザーの視点に立ちたい」と大橋氏は話した。