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「YOXO BOX」イベントレポート 第28回

「第16回 横浜ベンチャーピッチ」レポート

医療データ分析や在宅オンライン薬剤師 医療現場を支える新たなソリューション

2021年11月02日 11時00分更新

文● アイデアスケッチ 編集●ASCII STARTUP

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 2020年12月8日、横浜市・関内のスタートアップ成長支援拠点「YOXO BOX」にてピッチイベント「第16回 横浜ベンチャーピッチ」がオンライン開催された。横浜ベンチャーピッチとは、スタートアップ企業がベンチャーキャピタルや金融機関、事業会社などに対して、自社の事業計画やビジネスモデルをプレゼンする機会を提供し、資金調達や事業マッチングを促進させ、更なる成長・発展につなげることを目的としたもの。通算16回目を迎える今回は、「ライフサイエンス・ヘルスケア」をテーマに、5社のスタートアップが登壇した。

 横浜市は、2019年1月に「イノベーション都市・横浜」を宣言。オープンイノベーションやスタートアップ支援に注力しており、横浜から健康医療分野においてイノベーションを創出していくため、企業・大学・研究機関・医療機関・金融機関など327の団体が参加するプラットフォーム「LIP.横浜」を運営している。2020年7月には、国の「グローバル拠点都市」にも選定され、横浜独自のスタートアップ・エコシステムの構築を目指す。成長・発展を目指すベンチャー企業への、さらなる事業の拡大の機会提供を目的としている。

 今回は、「ライフサイエンス・ヘルスケア」をテーマに、アルケリス株式会社、株式会社CROSS SYNC、シルタス株式会社、株式会社HealthCareGate、リスク計測テクノロジーズ株式会社の5社が各7分のプレゼンテーションを実施。

「アシストスーツ」で立ち仕事に携わるすべての人を救う

 世界から立ち仕事のつらさをなくすアシストスーツの開発・販売を行なう、アルケリスからピッチはスタート。同社が着目したのは、医療分野における内視鏡外科手術。患者への傷の負担を減少させているものの、立ったまま長時間手術を行なう医師の身体的負担は増加しているという現状がある。こうした課題をふまえ、同社は自治医科大学メディカルシミュレーションセンターセンター長 川平洋教授と共同で、世界から立ち仕事のつらさをなくす「archelis(アルケリス)」を開発。体重をスネとモモで支えるため、足腰の負担が少なく、長時間の手術をな行なうことができるという。「装着したままでの移動が可能」「電源不要」「装着が簡単」という特長があり、ものづくり日本大賞やグッドデザイン賞など、さまざまな評価を得ている。

 今後は医療現場だけでなく、工場での作業、美容師、調理師、警備員、コンビニエンスストアのレジスタッフなど、1日中立って仕事をする多くの人を救うことが期待される。販売価格は、工場向け販売プランは450,000円、レンタルプラン3年契約で月額19,000円~(2020年12月当時)。すでに医療施設や大和ハウス工業、海外トヨタなどへの導入実績がある。WEBへは450件もの問い合わせが届いており、半数が海外からのものだという。今後は、海外への事業展開も視野に入れ、すでにアメリカ・シリコンバレーに事務所を設立。同社で企画・開発・販売を行い、試作や製造は同社の前身であるNITTO日東電工株式会社が担当。これまでともに開発に関わってきた企業や大学、公的機関と事業展開を行なっていく。

アルケリス 代表取締役CEO 藤澤秀行氏

医療データ統合分析アプリケーション「iBSEN」で 防ぎ得た患者の死亡例をゼロに

 横浜市立大学発ベンチャーのCROSS SYNC(クロスシンク)では、あらゆる病床にICU並みの医療環境を提供する、医療データ統合分析アプリケーション「iBSEN(イプセン)」の開発・販売を行なっている。欧米では、防ぐことができたであろう患者の死亡例は年間で902,250例あり、それをゼロにしていくことが同社のビジョンだ。現状は、紙ベースでの非同期な情報共有により、医療事故が多発し、61%の医療事故が患者の監視不足や情報共有不足に起因しているという。また、コロナ禍により、感染予防のゾーニングなどで医療従事者のコミュニケーションが不足し、医療の質が低下。これらの課題を、重症化予測AI搭載の患者管理システム「iBSEN」を導入することにより、容体や現場の運用状況などの情報共有を自動化、スマホでの確認を可能とし、医療事故の削減と救命率の向上を目指す。

 同社のソリューションは、低価格で高品質な重症度判定と、重症化予測AIが強み。モバイル端末との連携や、専門員による常時監視が不要なことなど、競合との優位性も高い。ビジネスモデルとしては、病院に対しシステムを販売し、ライセンスフィーでビジネスを回していくことを想定している。

CROSS SYNC 代表取締役・医師 髙木俊介氏

食ヘルスケア領域のプラットフォーム「SIRU+」

 シルタスでは、買い物から健康を目指すスマホアプリ「SIRU+(シルタス)」の開発・運営を行なっている。「あなたのライフに、つづけられるヘルスケアを」をミッションとし、ライフログの記録を自動化しデータを活用することにより、手間がかからない、今までのライフスタイルを尊重した健康を提案。

 事業は、キャッシュレス決済と連動した栄養管理のアプリ「SIRU+」と、アプリから得られたデータをマーケティングに活用する「SIRU+Biz」というサービスの2つ。現在利用しているクレジットカードやポイントカードをアプリに登録すると翌日には買い物の内容が同期されて、栄養素に変換される。次にどのような買い物をすれば栄養バランスが整うかをレコメンドしてくれる。法人に対しては、買い物に健康という付加価値を付けることを提案。どういった栄養素が足りないお客様が多く、どのような提案を受けているのかが分かることから、顧客の健康ニーズを見える化できる。

 ユーザーは無料でアプリを利用可能。スーパー・ドラッグストア・食品ECなどへは、月額の費用をもらうことにより、実際にどんなお客が来ているのか情報を提供、メーカーは、データと栄養素に即したターゲティング広告を提供し、収益を得る。ターゲットは、健康を気にしているけれど、何もできていないという健康ライト層。健康行動を人のモチベーションに委ねるのではなく、日常の習慣を健康行動化させる仕組みづくりを目指す。

シルタス 代表取締役社長 小原一樹氏

「在宅オンライン薬剤師」で医療領域のSDGs実現を目指す

 HealthCareGate(ヘルスケアゲート)は、在宅オンライン薬剤師による在宅医療クリニックの課題解決事業に取り組んでいる。同社は、高齢化がピークを迎える2040年に向けた「高齢化時代の在宅医療体制」でデータを獲得しながら、次の時代へのソリューション開発を目指す。

 クリニックで診察を受け、薬局から薬を処方してもらうときに提出する処方箋。処方箋には26のルールがあり、手戻りが多く残業が多数発生しているという。在宅オンライン薬剤師が、クリニックや薬局、介護施設の間に入ることにより、「疑義照会による治療がストップしてしまう」「処方箋の作業負担」「医薬品の最善の選択ができているかの不安」といったロスを防ぎ、クリニックが抱える課題を解決する。

 同社の優位性としては、「医療機関を経営していないので競合ではなく競創で顧客を獲得できる」「完全オンライン医療サポート体制でのノウハウの蓄積」「大手コンサルタント経験由来の業務改革知見」「医師が一番ほしい薬物治療ノウハウ」などが強みとなっている。当初のターゲットは国内医療機関、最終的には世界市場も視野に入れているという。

HealthCareGate 代表取締役 保田浩文氏

メンタルヘルスの不調を声だけ5秒で計測、企業の生産性改善を実現する

 リスク計測テクノロジーズでは、声だけで心の状態をデータ化し、独自に収集したデータを基礎にメンタルヘルスの不調とそれに起因するリスクを早期に予測する「マインドヘルス計測システム」を開発している。

 声から計測される指標としては、モチベーション(活動意欲)、バイタリティ(元気)、リラクゼーション(くつろぎ)、プレジャー(喜び)がある。3カ月の実績データの紹介があり、グラフに表示されたモチベーションの推移で、インシデント発生の抑制を目指すことが紹介された。マーケットは、安心と安全を求められる医療・福祉、運輸交通、建設、電気・ガス・水道といった分野のエッセンシャルワーカーを想定。簡単・早い・誰でもできるというのが、同社モデルの特長で、言語フリーのため、小さな子供から高齢者まで誰でも利用できる。応用領域としては、オンラインカウンセリングの効果測定やアスリートの体調管理、研修や教育の効果測定、言語コミュニケーションが困難な場合での利用などが考えられ、多くの問い合わせが寄せられている。エッセンシャルワーカーが安心して働ける環境を作ることに注力している企業とつながってデータ収集を進めて、有益なソリューションの開発を目指す。

リスク計測テクノロジーズ 代表取締役 岡崎貫治氏

着用不要でプライバシー侵害のない高齢者介護ホームサーバーシステム「ECHOCARE」

横浜市経済局国際ビジネス課から紹介のあった「EchoCare Technologies」。2019年に経済産業省が主催した「Quality Digital Health 部門ピッチコンテスト」でグランプリを受賞

 最後に、横浜市経済局国際ビジネス課から紹介されたのが、横浜への進出を目指し、準備を進めているイスラエルのベンチャー企業EchoCare Technologies(エコケア テクノロジーズ)。同社は高齢者介護用ホームサーバーシステム「ECHOCARE(エコケア)」を開発し、グローバル展開を目指している。

 世界中で独居高齢者が増加している昨今。徐々に悪化する自身の健康状態に気が付かないケースが多いという。さらにコロナ禍においては、訪問者が少なく隔離される傾向にあり、そこで事故が発生するというケースが増えている。非装着型の「ECHOCARE」は、急性の転倒といった事故や健康パターンの変化を検出し、介護や医療提供者に迅速に警告するというもので、カメラのようなプライバシーの侵害もない。位置や姿勢、動き、呼吸といった4つの身体指標を継続的にモニタリングし、クラウドシステム側に通知する。具体的には、転倒や風呂場での溺れ、呼吸障害などの緊急事態や、寝室やトイレなどでの長時間の滞在、徘徊といった異常事態を検出、日常生活をモニタリングすることで、健康状態の悪化や認知症の兆候を把握することもできるという。この技術をコロナ禍の遠隔医療に使いたいというニーズも高まっており、イスラエルでは入院患者や隔離患者の遠隔監視の実証実験が行われている。国内では、見守りサービスの会社や住宅メーカー、介護施設などでも検証を行なっている状況だ。

 以上でベンチャーピッチは終了。今回登壇とつながりたい、情報交換をしたいと思った方は、YOXO BOX事務局へ問い合わせを。

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