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夢の技術! 自動運転の世界 第34回

自動運転の基礎 その28

遠隔操作でのドライバー不在の自動運転車(レベル3)が走り出した

2021年05月01日 10時00分更新

文● 鈴木ケンイチ 編集●ASCII

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国内初! 遠隔操作型の自動運転レベル3が稼働

 3月25日、福井県永平寺において、国内初となる遠隔操作型の自動運転システム(レベル3)の運用サービスが開始された。

 自動運転レベル3とは、特定の条件下においてシステムが運転を実施。その間、人間のドライバーは運転だけでなく、周囲の監視からも解放される。ただし、突発的な状況の変化などでシステムが運転を継続できないときは、速やかにドライバーが運転を交代することが求められるものだ。量産型の乗用車としては、3月5日にホンダのレジェンドが国内初のレベル3の自動運転システム搭載車として発売されている。

3月25日の運行開始に合わせて実施された永平寺町自動運転出発式(「社会受容性シンポジウム内」)でのテープカットセレモニーの様子

3月25日の運行開始に合わせて実施された永平寺町自動運転出発式(「社会受容性シンポジウム内」)でのオンラインで報告された現地の様子

 一方、今回の永平寺のケースは、オーナーが運転する乗用車ではなく、移動サービスにおけるレベル3の自動運転の実現となる。しかも、監視・操作をするドライバーが車中ではなく、遠隔地にいるというのが特徴だ。

 実のところ、永平寺では昨年12月より自動運転レベル2での移動サービス試験運行がスタートしていた。この場合、レベル2なので、車両が走行している最中は常時、人がドライバーとして遠隔監視していた。ただし、一人の遠隔監視・操作に対して、自動運転車両は3台。また、車両の後部座席には運転ではなく、車内の安全対策などを行なう保安要員が乗車していた。

 そして、今回の自動運転のレベル3の実現により、システム運行中の遠隔操作者による監視が不要となる。人が介入するのは、問題が発生したときのみ。常時の監視がなくなり、遠隔監視・操作のドライバー役のスタッフの負担が軽減されることになったのだ。また、あわせて保安要員も乗車しない形での運用となっている。

自動運転レベルの定義

レベル3を実現した理由のひとつは車両の進化

 今回の自動運転レベル3の認可と運用スタートの背景には車両の進化がある。まず、車両のベースは、ヤマハ製の電動カートだ。これに路面に埋め込まれた電磁誘導線を読み込むセンサーを搭載し、電磁誘導線が導くルートを走行するのが基本となる。さらに前方の障害物を検知するステレオカメラを加えて、万一の衝突事故を回避するようにもなっている。この電動カートをベースにしたヤマハの自動運転移動サービス用の車両は、すでに全国5ヵ所での自動運転実証実験に利用されている。その多くは、運転席にドライバーを搭乗させた自動運転レベル2での運行だ。

福井県永平寺町においてレベル3の自動運転を実現する車両の技術的ポイント

福井県永平寺町にて運行される自動運転移動サービスに使用される車両。ヤマハ製電動カートを産総研が改造し、自動運転機能を追加している

 それに対して、永平寺のケースでは車両にさらなる改良をプラスした。前方の障害物を検知するための3Dライダー、周囲を監視する前方/側方/後方/車内カメラ、路面に設置した磁気マーカーを察知するRFIDセンサー、GPSアンテナと遠隔監視・操作用のアンテナなどを追加。さらにレベル3の自動運行装置に必要なドライバー(遠隔監視・操作者)の状態検知機能、作動状態記憶装置、サイバーセキュリティ、外向けに自動運転車であることを示す車両へのステッカーなども用意された。

 こうした改良により、永平寺の車両は自動運転レベル3の認可を得ることができ、サービスをスタートすることが可能となったのだ。ちなみに、この永平寺のシステムには「ZEN drive Pilot」の名称が付けられている。

 具体的に提供される永平寺のサービスは、福井県吉田郡永平寺町にある「永平寺参(まい)ロード(京福電気鉄道永平寺線の廃線跡の自転車歩行者専用道)」の約2㎞で行われる。運行スピードは12㎞/h以下で、利用は1回大人100円、子供50円となる。もちろん強い雨や降雪、濃霧、夜間は走行できない。つまり、他車両のいない、ほぼ専用道においての低速運行だ。自動運転の実施としては、恵まれた状況と言えるだろう。

自動運転中の車両を遠隔地にて監視・操作を行うための遠隔監視・操作室

全国各地の自動運転移動サービスの実証実験に利用されるヤマハ製の電動カート。写真は「SIP第2期 自動運転 中間成果発表会」に展示されていたもの

 とはいえ、人の監視がない状況での運行は、やはり不安が拭いきれないもの。だが、今回スタートしたレベル3での運行がトラブルなく継続できるようであれば、状況は一変するのではないだろうか。なんといっても、1人のオペレーターで3台の移動サービス車両を運行できるのは、コスト的なメリットが大きい。疲弊した地方での運用は、採算性が非常に重要になるからだ。安全への不安がなくなれば、全国への拡大も大きく期待できる。

 今回の永平寺のレベル3の移動サービスは、わずか3台という小さなものだが、レベル2から3へのレベルアップの意義は大きい。地方における自動運転による移動サービスが、1歩、確実な進歩を見せることになるからだ。その行方に注目したい。

福井県永平寺町においての自動運転移動サービスは3台の車両を使って実施される

筆者紹介:鈴木ケンイチ

 

 1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。

 最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。


 

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