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「ANOBAKA Conference」でレジェンド起業家が後人にエール

「胆力」「夢」「チーム力」令和に成功する起業家魂とは――KVPが独立し「ANOBAKA」誕生

2021年02月19日 06時00分更新

文● 文●小島昇 編集●ASCII STARTUP編集部

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 ベンチャーキャピタル(VC)のKPVは、親会社でスマートフォンゲーム開発のKLabからMBO(経営陣による買収)で独立し、新社名「ANOBAKA(アノバカ)」で2020年12月1日にスタートを切った。

 長野泰和社長・パートナーがKLabからKPVの発行済み株式の7割を買い取った(買収額は非公表)。事業会社のVCであるCVCがMBOで独立するのは珍しく、渋谷ストリームホールで12月4日に開催した「ANOBAKA Conference」で長野社長は「半年前には夢にも思わなかった激動の展開。新しいチャレンジを(KLabが)応援してくれることになり、世にも珍しいCVCのMBOになった」と説明した。

ANOBAKA 長野泰和社長・パートナ

 「社名がちょっと変」と長野社長と言うANOBAKAは、2000年発売の『ネット起業!あのバカにやらせてみよう』(岡本呻也著、文藝春秋刊)の書名に由来する。ネットベンチャーに夢をかけた起業家たちが描かれており、長野社長は「成功するのは優秀なやつではなく勇気のあるやつだ、とあるこの本を大学のときに読んで深い影響を受けたのでこの名前にした。社名のイントネーションは(動物の)アルパカのイメージで」と話した。MBOはゲーム会社のVCの枠を離れ、投資先企業のように自身もチャレンジし続けるためという。

 同社がこれまで投資した企業は80社以上になり、2016年組成の「1号ファンド」(シード・イノベーション1号投資事業有限責任組合)では6社が上場シナリオに載っている。長野社長は「これからの5年間で200社以上に出資し、25社以上のIPO(新規株式公開)が目標」と抱負を語った。新会社のビジョン「Empowering Mad Dreams」には「常識はずれ」や「ありえない」と言われる夢やアイディアを信じて起業するスタートアップを応援し続ける決意が込められている。

新社名の由来は書籍『ネット起業!あのバカにやらせてみよう』から。「この本を読んで深い影響を受けた」という

レジェンドが語る起業で成功する人

 ANOBAKA Conferenceでは、KLabから創業者の真田哲哉会長と五十嵐洋介副会長、起業家コミュニティ・投資ファンドの千葉道場の千葉功太郎・代表パートナーの3人を迎え、長野社長をモデレーターに「ビットバレーの熱狂から令和のスタートアップシーンまで。最前線にいた3人の語る起業家魂」と題したパネルディスカッションが催された。

「ANOBAKA Conference」のパネルディスカッションの様子

 新社名ANOBAKAにちなんで、「ただのバカ」と起業で伸びていく「アノバカ」の違いについて真田氏は「成功する起業家の人は地頭がよく、一つのこと入りきって寝食を忘れる。没入してやり続けるキャラクターが圧倒的に多く『没入してしまうバカ』だ」と口火を切った。「僕らの世代は(大学)中退でその後成功していく。最近は東大とか見た目も賢い人が出てきた」と語った。

 「地頭と学歴とはリンクしていない。10年前は野武士だった」と話す千葉氏に、五十嵐氏は、地頭のいい野武士をどうやって見抜くかについて「胆力と勇気。成功している人は、できない理由を探さず、どうやったらできるかしか考えてない」と応じた。

 真田氏は、関西学院大学在学中に学生ベンチャーとしてリョーマなど多彩な会社を設立してきた。五十嵐氏は「真田さんと同じ勇気は後天的には身につかない。本に出てくるレジェンドはネジが抜けている」と評した上で「エリート感が増えて胆力を感じない人が多くなり細心に物事を進めている。そうした起業家の背中を押して理詰めで支えたい」と話した。

 真田氏は「根拠のない自信ももう一つのキーワード」だと指摘した。五十嵐氏が「KLabは、今はゲームだが元はモバイルシステム開発会社のSI(システムインテグレーター)だった。真田さんが突然『これからはソーシャルゲームの時代だ』と決断してSIからエンターテインメントに行った。10年に1度の波に誰よりも早く乗る決断をして先行者利益を得た」と振り返った。

KLab創業者の真田哲哉会長

今は起業の仕組みがある

 1990年代後半からIT系ベンチャー企業が次々と渋谷で開業し、ITバブルの2000年に相次いで株式公開を果たした「ビットバレーの時代」があった。長野氏が「ビットバレーの時代から(今も)活躍している人は少ない。過去と今のベンチャーシーンとの違いは」と尋ねると、千葉氏が「仕組みがあるかどうか」と応じた。

 1998年に真田氏がモバイルコンテンツ事業のサイバードを設立したが、千葉氏は「VCも何にもないのが20年前。今は護送船団ができあがって投資家もサポーターも、飛び込んでくる社員もいる。層が厚くなり組織化された」と劇的な変化を説明した。さらに知識が共有化、フォーマット化した。「プロダクトマーケットフィット(PMF)という言葉もなかった。(今は)PMFに乗っかれば一定の成功がある」と千葉氏。PMFは市場で支持される商品やサービスを作ることを指し、スタートアップの生死を分けるとされている。

KLab創業者の五十嵐洋介副会長

 千葉氏の言う知識の共有化について、五十嵐氏は「(今は)noteで商売成功の秘訣の記事がたくさん流通している」とうなずく。真田氏は「僕らの時代は失敗しながら覚えた。社内の仕組み作りを教えてくれる人はいなくて経営会議を何時間もやっていた。今はSaaS(サービスとしてのソフトウェア)でサッとできて社内がまわる」と話した。

 また、かつては自分たちでハードを購入してデータセンターと契約して仕組みを作ったが、今はクラウドのAWS(アマゾンウェブサービス)があるのでイニシャルコストも劇的に下がっている。資金調達も「不動産担保がないと銀行借り入れができずVCもない。まず担保を提供してくれる人を探す人垂らしで事業が始まった。資本金を出すのではなく億単位で担保を出す人を見つけてくる」と時代の変化を語った。

起業家コミュニティ・投資ファンドの千葉道場の千葉功太郎・代表パートナー

胆力だけでなく経営ではチーム力も

 「起業の情報も仕組みも整ってきた現状を受けて、起業家にメッセージを」との長野氏の提起に対し、千葉氏は「胆力、バカ、集中して絶対逃げないこと。流行りでこれを作ったら売れると思うような人に興味はない。人生懸けた夢をやりたい人は続く」と語った。

 五十嵐氏は「成功するバカは愛されるバカでもある。チャーミングで迷惑を散々かけているけど笑顔で人を引きつけ、巻き込んで仲間を作って成長する。(経営の)ボードメンバーではなくても情報提供してくれる人を集める能力があれば強い。これは後天的にも伸ばせる」と述べた。

 真田氏は「いいビジネスプランでも同じことを考えている人が日本や世界にたくさんいる。勝ち残るにはチーム全体で総合力を出せないと難しい」と強調した。千葉氏も「自分ができないことをできる人を周り配置する。同じ(タイプの)メンバーを集めてもダメ。自分と気が合うかも大事で、経営は10年、20年単位で長く付き合うから」と続けた。

 最後に五十嵐氏が会場の起業家に「新しい何かを起こしてビットバレーの次のレジェンドを作って」と呼びかけ、真田氏はMBOで独立した長野氏に「投資家と一緒に成長して日本を代表するVCになってほしい」とエールを送った。さらリョーマ時代から真田氏と交流が続くシンガポール在住の事業家でToGEARの加藤順彦CEOが会場に駆けつけ、絶版状態で手に入らない『ネット起業!あのバカにやらせてみよう』を長野氏に贈ってANOBAKAの門出を祝った

ToGEARの加藤順彦CEO(右)

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