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真に必要なことを捉えてデジタルで解決する NTTデータのスマートコネクティッドソサエティ

NTT DATA Innovation Conference 2021 デジタルで創る新しい社会「つながりがスマート化する社会を実現するソーシャルデザイン」

 NTTデータは2021年1月28日、29日の2日間、オンラインイベント「NTT DATA Innovation Conference 2021 デジタルで創る新しい社会」を開催し、NTTデータの山口重樹副社長が「つながりがスマート化する社会を実現するソーシャルデザイン」と題して講演した。デジタル化で個人と個人、個人と企業、個人と行政、企業と行政のつながりが賢くなっていく「スマートコネクティッドソサエティ」の社会システムのあり方と、ソーシャルデザインが果たす役割を提言した。

デジタルは「つながり」をどのように変えるのか

 ソーシャルデザインを「社会システムのビジョンを描く」と捉えると、その先駆者は「日本資本主義の父」の渋沢栄一氏で「道徳経済合一説」を説いている。これを山口氏は「安心して快適に充実した暮らしができる社会を、経済活動を通じて実現すること」と解釈。互いが信頼できる「トラスト」、多様な考え方が共存できる「オープン」、絶えず学び続け発展する「イノベーティブ」の3つがそろった社会だ。デジタルで「個人、企業、行政のつながりがスマート化」する社会を「スマートコネクティッドソサエティ」と呼ぶ。

デジタルが個人と個人のつながりを変える

 SNSの普及もあって、『通信白書(令和2年版)』によれば、毎日126分ほどインターネットを使って関心のある人との濃密に交流している。これが進みすぎると閉鎖的な仲間でコミュニケーションを繰り返し、特定の信念が増幅する「エコーチェンバー効果」が発生する。

 SNSで個人の判断が他人の意見に大きく左右されるようになったメカニズムを、山口氏はあるモデルで説明した。イベント開催には反対だが「みんなが賛成ならみんなに合わせて意見を変える」のはよくある。60人が賛成なら賛成に変更する人が10人、70人が賛成なら変更する人が8人いる。これを繰り返すと賛成が60人、70人、78人と増え100人になる。

デジタルが消費者と企業のつながりを変える

 消費者と企業のつながりもデジタル化で変化する。企業の事業目的は顧客の課題を低コストで解決することで、店舗に行かないと買い物できない課題をECで、レジ待ちはキャッシュレスで解決できる。山口氏は「これは顧客の課題の一部でしかない」という。

 例えば、働く女性は家族の食事の献立を考え、いつ買い物に行って何を買いどう持ち帰るかが課題だ。しかし真の課題を「家族で夕食を楽しむこと」とすれば、先週作った料理から今週の料理を提案し、必要な食材をレコメンドしてECで注文を受けて宅配できる。米小売最大手のウォルマートが実践して2020年に米国でEC売り上げシェア2位になった。流通業はフィジカルとデジタルを融合した「OMO(Online Merges with Offline)」、交通業はリアルとデジタルを融合した「MaaS(Mobility as a Service)」が期待されている。

デジタルが市民と行政のつながりを変える

 市民と行政のつながりでは、安心・安全な暮らしを低コストで解決するため「行政ポータル」や「オンライン申請」で手続きを効率化した。出産と育児では出産育児一時金、予防接種、児童手当の申請があるが、パーソナライズして保育園サーチや検診通知、予防接種のレコメンドもできるだろう。手続きの効率化だけではなく、何のためにその手続きをしているのかまで踏み込んで考える必要がある。

 山口氏はデジタルガバメントの先進事例でデンマークを紹介した。スマートフォンからあらゆる手続きが完結し、マイナンバーで転居手続きがワンストップだ。デジタル免許証をスマホで使用し、パスポートはWeb申請して郵送で受け取る。ヘルスケアデータをすべて一元的に行政が管理して、病院探索から診療予約や履歴の参照までできる。

従業員と企業のつながりを変える

 コロナ禍で従業員と企業のつながりも変わり、健康管理やウェルビーイングの提供が求められている。バイタルデータを活用した健康状態の把握や、従業員にあったメンタルヘルケアのコーチングやカウンセリングでよりよいパフォーマンスを出してもらう。

 NTTデータは企業、団体向け健康管理サービス「Health Data Bank」にイスラエルのベンチャー企業のbinah.aiの技術を加えた。スマホから心拍数などのバイタルデータを取得してストレスレベルを判定し、リモートワーク下のメンタルヘルスに活用している。

 生活者は市民、消費者、従業員とバラバラにサービスを受けるのではなく、一元的にパーソナライズされたサービスとして受ければベネフィットが上がる。「そのためにライフジャーニーの課題を解決する視点でサービスを考える必要がある」と山口氏は述べた。さらに「既存の業界や企業単位ではなく業界の垣根を越えて連携するトランスボーダーでサービスを提供すべき」と強調した。

つながりがスマート化する社会 実現における課題

 こうした企業間や企業行政間の連携拡大では、フェイクニュースやプライバシー、フィルターバブルのような新たなリスクへの対応も必要だ。それには「データの権利」、「データの管理」、「取引相手の信頼」、「データの信頼」のシステムが必要になる。

 データの権利保護で「情報銀行」は、個人を代行して個人情報を管理するスキームだ、NTTデータは複数の情報銀行が使えるサービスを提供する。「My Information Tracer」は情報銀行が情報をデータ活用事業者に提供したり、本人同意を取ったりするサービスだ。

 データの信頼を担保する技術にブロックチェーンがある。分散型自立社会の実現に不可欠で、現在は事業者を限定したコンソーシアム型が主流だ。NTTデータは500人以上が24の国と地域で取り組む。複数の調査会社レポートで世界トップ5のひとつと評価されている。

社会課題の解決に向けたNTTデータの取り組み

 最後には山口氏は、NTTデータの取り組み事例を紹介した。

 1 キャッシュレス

 決済総合プラットフォームの「CAFIS」によるペイメントで、キャッシュレスインフラと加盟店向けサービスを提供。ポイントや電子レシートなどプロモーションを支援する。

 2 ベトナムのキャッシュレス

 電気、ガス料金のコンビニ支払いやバイク、携帯電話の分割払いのビルペイント、カード決済、QR決済を推進。ビルペイメントはベトナム最大シェア6割(月800万件)を占める。

 3 エネルギー分野

 電力会社とグリッドデータバンク・ラボ有限責任事業組合を設立。統計化した30分ごとの電力消費データで地区の生活スタイルを把握し、出店計画に活かしている。

 4 貿易業務

 貿易関連企業を集めたコンソーシアムを設立し、ブロックチェーンで貿易業務効の率化や参加者相互でデータの正当性を確保する貿易プラットフォーム「TradeWalts」を構築。

 5 ヘルスケア分野

 次世代医療基盤法で第1号の認定医療情報等取扱受託事業者になりライフデータイニシアチブを設立。米製薬大手のファイザーとがん患者の臨床アウトカム評価方法論を研究。

 6 パーソナル医療保険

 米国で患者の医療情報をもとにAI(人工知能)で疾病リスクを予想して、個人ごとに重症化しない治療法を含めた最適な医療をアドバイスするサービスを提供。

 7 政府向けコミュニティクラウドサービス

 「OpenCanvas for Government」は、変化に強いSoE(つながりのシステム)領域と、信頼性や可用性重視のSoR(記録のシステム)領域のクラウドを用途で組み合わせて提供する。

 山口氏はセッションの締めに「スマートコネクティッドソサエティを実現するソーシャルデザインとは、生活者の真の課題を解決するサービスデザインで、新たな制度や業務設計、運用支援と社会システムの構築すること」と述べた。その上で「今まで養ってきたノウハウと今後の新しい技術を掛け合わせて社会全体の仕組みをトータルでデザインし、着実に実現して継続的に改善していく」と講演を締めくくった。

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