前回のインテルに続き、今回はAMDのCPUロードマップを更新しよう。AMDのCPUの話題そのものは頻繁に更新しているが、ロードマップそのものは前回いつだろう? と思ったら2019年11月の連載536回とずいぶん前だったので、久しぶりにロードマップそのものの更新となる。
前回はPicassoベースのRyzen 3000Gシリーズがリリースされた直後だったので、今回はその後から。といっても大きなイベントは以下の2つしかない。
- 2020年3月にRenoirベースのRyzen 4000Gシリーズを発表
- 2020年10月にVermeerベースのRyzen 5000シリーズを発表
まず前者について。昨年のCESでRenoirが発表されたという話は連載548回で紹介した通りで、これは3月にまずモバイル向けが投入された。
製品としてはTDP 15WのRyzen 3 4300U、Ryzen 5 4500U/4600U、Ryzen 7 4700U/4800Uの5製品の他、TDPが35W/35WのRyzen 5 4600H/4600HS、Ryzen 7 4800H/4800HS、Ryzen 9 4900H/4900HSの6製品も用意され、合計11製品という計算になる。
ただ、直近でモデルを確認すると、Ryzen 7 4800HSとRyzen 5 4600HSが抜けて9製品のみになっている。やはりTDP45WでRyzen 5やRyzen 7のニーズはなかったのかもしれない。
一方デスクトップへの投入はだいぶ遅れて7月になった。しかも倍率アンロックの通常版はOEMのみでリテールマーケットには一切流れず、その代わりにAMD Proを搭載して倍率ロックのRyzen Pro版が流れるという謎の状況である。
どうもAMDとしては、このPro版にかなりの期待をして製品を製造したものの、予想したほどにはOEMマーケットを開拓できず、結構ダブついた模様だ。それもあって、Pro版をリテールマーケットに流すというかなり変則的な動きになったようだ。
ハイエンドのRyzen 7 4750G Proであっても5万円切りというわりとお手頃価格で提供されるとあってそれなりに人気を博した結果、市場では早いタイミングで品薄状況に陥った。もっとも、そもそも流した量がそれほど多くなかった、という話もある。
これに続くのが2020年10月に発表され、11月に発売が開始されたRyzen 5000シリーズである。まずRyzen 7 5800XとRyzen 9 5900Xのみのレビュー、次いで完全版レビューがKTU氏により掲載されているので御覧になった方も多いだろう。
こちらは現在も絶賛発売中であって、昨年中は結構品薄感が強かったが、年があけて若干改善した感がある。とはいえ、まだ潤沢に供給されているという状況からは遠い。次のRyzen 6000シリーズ(?)はおそらく今年第4四半期になると思われるが、間もなく発表されるであろうRocket Lakeとはいい勝負になるだろう。

この連載の記事
- 第711回 Teslaの自動運転に欠かせない車載AI「FSD」 AIプロセッサーの昨今
- 第710回 Rialto BridgeとLancaster Soundが開発中止へ インテル CPUロードマップ
- 第709回 電気自動車のTeslaが手掛ける自動運転用システムDojo AIプロセッサーの昨今
- 第708回 Doomの自動プレイが可能になったNDP200 AIプロセッサーの昨今
- 第707回 Xeon W-3400/W-2400シリーズはワークステーション市場を奪い返せるか? インテル CPUロードマップ
- 第706回 なぜかRISC-Vに傾倒するTenstorrent AIプロセッサーの昨今
- 第705回 メモリーに演算ユニットを内蔵した新興企業のEnCharge AI AIプロセッサーの昨今
- 第704回 自動運転に必要な車載チップを開発するフランスのVSORA AIプロセッサーの昨今
- 第703回 音声にターゲットを絞ったSyntiant AIプロセッサーの昨今
- 第702回 計52製品を発表したSapphire Rapidsの内部構造に新情報 インテル CPUロードマップ
- 第701回 性能が8倍に向上したデータセンター向けAPU「Instinct MI300」 AMD CPUロードマップ
- この連載の一覧へ