Ryzen 4000Gシリーズと
Athlon 3000Gシリーズを発表
既報の通り、AMDは米国時間の7月21日に突如としてデスクトップ向けのRyzen 4000Gシリーズを発表した。
それどころか、ビジネス向けのRyzen Proまで同時発表であり、しかもそのRyzen Proのバルク版が、コンシューマー向けのパッケージ版に先立ち市場投入されるという、ややわけのわからない事態になっている。
すでにRyzen Pro 4000Gシリーズを搭載したBTO製品が各社から発表されている(例えばツクモ)ということで、おそらくこうしたBTOモデルも遠からず発送開始されることになるだろう。
まずは発表の内容を正確に説明したい。今回は合計で18製品が発表された。コンシューマー向けでは、Ryzen 4000Gシリーズが6製品とAthlon 3000Gシリーズが3製品となる。
いずれもTDPが65W(G)もしくは35W(GE)となっている。ちなみにコンシューマー向けのRyzen 4000GシリーズとAthlon 3000Gシリーズの合計9製品は、すべて倍率アンロックとなっている。
Renoir(ルノアール)コアそのものの説明は連載555回で行なっており、少なくとも今回の製品にもコアそのものに手を入れた形跡は(今のところ)ない。
このRenoirのCCX(Core Complex)は、4コアあたり2MB L2+4MB L3という構成になっており、8コアのRyzen 7 4700G/4700GEは4MB L2+8MB L3で12MBキャッシュ、6コアのRyzen 5 4600G/4600GEは3MB L2+8MB L3で11MBキャッシュ、4コアのRyzen 3 4300Gは2MB L2+4MB L3で6MBキャッシュということになる。
特筆すべきはAthlonの方で、L3のサイズそのものは4MBのまま一切削減せず、コアに連携したL2だけが減る形になっている。なので、Celeronとするとかなり性能面での上乗せがあると考えて良い。TDP 65W品を出さなくても十分勝負できると考えて間違いではなさそうだ。
さて問題はその性能である。現状まだ評価できる機材がない(今回の発表は筆者も寝耳に水であった。もちろん現時点では一切機材が届いておらず、ベンチマークをしていない)のでAMDの発表に頼ることになるのだが、まずRyzen 5 3400Gと今回のRyzen 5 4600G/Ryzen 7 4700Gの比較が下の画像だ。
CPU性能もさることながら、GPU性能(3DMark TimeSpy)が伸びている、というのは大きなポイントでもある。実際、Ryzen 5 3400GとRyzen 7 4700GをCU数×動作周波数という比でみてみると以下のようになる。
11CU×1400MHz:8CU×2000MHz=15400:16000≒1:1.039
理論上は4%程度の性能向上しか期待できないにも関わらず、実際は19%もの性能アップに成功しているのは、1つにはメモリー帯域の増加(DDR4-2933→DDR4-3200)もあるだろうが、むしろRyzen 5 3400Gの11CUはメモリー帯域不足でその性能を十分に発揮できていなかった、というあたりが正確なところだろう。
おそらくDDR4-3200×2ch程度のメモリー帯域ではCU数は8程度で十分であり、これを超えるには昔のインテルのIris Graphicsのようにローカルに大容量キャッシュ(eDRAM)を搭載するか、もしくはメモリーをさらに高速化するしかない。
ただモバイル向けにはLPDDR4x-4266が使えるが、デスクトップ向けとなると通常のDDR4なので、当面はオーバークロック動作させるか、DDR5を待つかといった感じになる。その意味では、このRyzen 7 4700GはDDR4ベースで使える統合GPUとしてはピークに近い性能なのかもしれない。

この連載の記事
- 第721回 性能ではなく効率を上げる方向に舵を切ったTensilica AI Platform AIプロセッサーの昨今
- 第720回 Meteor Lakeには4次キャッシュが存在する インテル CPUロードマップ
- 第719回 EUV露光で堀った溝を削って広げる新技法Sculpta EUVによる露光プロセスの推移
- 第718回 引火性危険物で冷却しないといけない露光機 EUVによる露光プロセスの推移
- 第717回 要求にあわせて構成を変更できるSynopsysのARCシリーズ AIプロセッサーの昨今
- 第716回 Radeon Pro W7900/W7800が異様に安い価格で投入される理由 AMD GPUロードマップ
- 第715回 Emerald Rapidsは2023年第4四半期に量産開始 インテル CPUロードマップ
- 第714回 AMDのメディアアクセラレーター「Alveo MA35D」はナニがすごいのか?
- 第713回 Tenstorrentが日本支社を設立、自動運転の市場開拓が狙い AIプロセッサーの昨今
- 第712回 推論をわずか20mWで実行するエッジAIチップ「ERGO」 AIプロセッサーの昨今
- 第711回 Teslaの自動運転に欠かせない車載AI「FSD」 AIプロセッサーの昨今
- この連載の一覧へ