SUBARUのスポーツDNAの集大成「WRX STI EJ20 Final Edition」の加速に衝撃
2020年09月23日 12時00分更新
EJ20エンジン最後のモデル
SUBARU「WRX STI」に試乗!
いきなりですが、シェークスピアが残した格言のひとつに「人生とは選択の連続である」というのがあります。筆者は惚れっぽい性格ゆえ、いつも取材後は「このクルマ、いいなぁ」と思ってしまうのですが、今回の試乗後ほど「このクルマを頭金ナシでも全額ローンで注文すればよかった」と悔やむことはなかったことを文頭に申し上げます。
そのクルマの名は「WRX STI EJ20 Final Edition」。「WRX STIの最終モデル」であり「最後のEJ20搭載車」である本機は、555台限定生産で販売はおろか、既にデリバリー終了。つまり新車で手に入れることができないクルマです。なぜ、今更紹介する記事を執筆したのかというと、理由はただ一つ「もう一度スポーツセダンを作って欲しいから」「WRX STIを復活して欲しいから」。これは素晴らしいクルマを作り上げたSUBARUへの期待とエールです。
モータースポーツの遺伝子を受け継ぐWRX STI
まずWRX STIについて。WRX STIは、1993年から2008年にかけて世界ラリー選手権(WRC)で活躍した「インプレッサWRX」の後釜として、2014年に誕生したスポーツセダンです。プラットフォームは、初代レヴォーグと共通の4代目インプレッサをベースとしたもの。そこにWRCで鍛えぬいたSUBARU至宝の水平対向エンジンEJ20型を搭載。ミッションは6MTのみという潔さで、ATを求める方にはFA20型エンジン+マニュアルモード付きCVTのWRX S4を用意。なお、WRX S4は現在も販売しています。
この2台は四輪駆動システムのセンターデフが異なっていまして、STIはDCCD(ドライバーズコントロールセンターデフ)にフロントヘリカルLSD、リアトルセンLSDの組み合わせ。対してS4はVTD-AWD(不等&可変トルク配分電子制御AWD)と呼ぶ、前45:後55の基準のトルク配分を走行状況に合わせて連続可変制御するシステムとなっています。さらにS4は電動パワーステアリング、STIは現代では珍しい油圧パワーステアリングという違いも。WRX STIを一言でいえば「もっとも硬派なSUBARUらしいクルマ」と言えるでしょう。
続いて型名にあるEJ20について。EJ20型エンジンが初めて世に出たのは、1989年の初代レガシィRSから。その年、19日間連続で昼夜問わず最高速度240km/hで10万キロを走りきる世界記録に挑み、平均速度223.345km/hで見事達成すると、翌90年のWRC第四戦サファリラリーからレガシィRSでWRCに本格参戦。93年のWRC第8戦ラリーニュージーランドでSUBARUに初勝利をもたらしました。
翌9戦からインプレッサWRXにチェンジ。94年には年間10戦中3勝、95年には年8戦中5勝しWRCマニュファクチャラーズチャンピオンとドライバーズチャンピオンを獲得。その後、98年まで3年連続でマニュファクチャラーズタイトル3連覇という偉業を成し遂げました。
その後も2001年にリチャード・バーンズ、03年にペタ―・ソルベルグがドライバーズチャンピオン獲得に貢献。08年からは舞台をニュルブルクリンク24時間レースにシフト。2019年まで6度のSP3Tクラス優勝をはたしました。
また国内屈指の人気レース「SUPER GT」のGT300クラスにも、長年にわたりEJ20型搭載のBRZで参戦していることは、ご存じかもしれません。
このようにレーシングエンジンとしても30年にわたり、速さと耐久性を世に知らしめたEJ20型ですが、2008年頃から採用車種が減少。気づけばSUBARU車で搭載するのはWRX STIのみとなりました。そして今回のWRX STIの生産完了に伴い、EJ20型も30年の歴史に幕を閉じることになったのです。
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