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「調査に1カ月、開発に2カ月」スピーディなサービス開発を実現した舞台裏も紹介

テレワークで失われた“立ち話感覚”を、NTT Comが「NeWork」披露

2020年09月07日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 NTTコミュニケーションズ(NTT Com)では2020年9月4日、8月末から無料提供を開始したオンラインワークスペースサービス「NeWork(ニュワーク)」のプレス向け体験会を開催した。開発プロジェクトメンバーも出席し、同サービスのコンセプトや狙い、さらにリリーススピードを優先して「調査に1カ月、開発に2カ月」という短期間で進められたサービス開発の裏側も語られた。

「NeWork」のワークスペース画面(デモビデオより)。

NTTコミュニケーションズ 取締役/アプリケーションサービス部 部長の工藤潤一氏

NTTコミュニケーションズ アプリケーションサービス部 担当課長の大野智史氏、同社 イノベーションセンター デザイン部門「KOEL(コエル)」の武田透摩氏

オフィスでの“立ち話感覚”をオンラインで、NeWorkが補うもの

 NeWorkは、リモートワーク環境下における企業/チーム内のコミュニケーション活性化を図り、「コミュニケーション不足」を補うことを目的としたサービスだ。現在は無料版(1ワークスペースに最大50人が参加可能)サービスとして提供しており、今後は有料版の提供も検討していく。

 会社や部署、プロジェクトチームなどの単位で作るワークスペースに招待された参加者がログインすると、画面上には会話の話題やプロジェクトごとに作られた「バブル」が表示される。参加者はこのバブルに入ることで、他の参加者と音声やビデオで会話できるようになる。またバブルに入らず、特定の個人に話しかけて個人間で会話をすることも可能だ。忙しい業務中向けに、マイクをオフにして“会話を聞くだけ”で参加したり、話しかけないように表示したりする参加モードも用意されている。

NeWorkの主要コンセプト。一般的な「Web会議サービス」とは異なり、オンラインでの気軽なコミュニケーションを促す

 NTT Com 取締役/アプリケーションサービス部 部長の工藤潤一氏は、同社では「企業や個人のコミュニケーションを促進する」という企業ビジョンを掲げており、現在は特に、急速な時代変化に対応した「新しいコミュニケーションを提供する」使命があると語る。今回のNeWorkも、そうした使命感に基づいて開発/提供していると説明した。

 NeWorkのプロダクトマネージャーを務めるNTT Com アプリケーションサービス部 担当課長の大野智史氏は、NeWorkのサービスコンセプトを決めるにあたっては、オフィスに集まらず分散して働く「ニューノーマル時代の働き方」において、どのようなコミュニケーションが必要になるのかをあらためて考えたという。

 「『リモートワークで何に困っているか』という調査結果を見ると、これまで上司や部下、同僚と当たり前のようにコミュニケーションできていたものが、リモートワークで会えなくなったことでそれができない、しづらい状況になってしまっている」(大野氏)

 こうした“コミュニケーション不足”の課題を解決するために、リモートワークを実践する企業ではWeb会議ツールを使った“朝会”を開催したり、チャットツールを導入したりとさまざまな工夫をしている。しかし、こうした形式では「ちょっとした雑談や相談」「他のチームメイトが取り組んでいる業務や課題の把握」といったものは実現しづらい。「あらかじめテーマ設定されたミーティング以外のコミュニケーションが希薄化しているのではないか」と、大野氏は指摘する。

リモートワークにおける課題(2020年4月「パンデミックと働き方に関する調査」より)

 サービス開発にあたり、大野氏らはまず、先進的ユーザーへのインタビューや幅広い業種へのアンケートを実施し、そこから課題とニーズを抽出していった。そこからは、「リモートワークではコミュニケーションの絶対量が不足している」「会議中しか話す機会がなく“ながら会話”ができない」「すきま時間で軽く相談したいが、わざわざWeb会議を設定するのは手間がかかる」という、3つの大きな課題が見えてきたと語る。

 NeWorkはこうした、既存のWeb会議サービスでは充足できない潜在ニーズを満たす新サービスと位置づけられている。「『チームとしての一体感』を醸成していく部分にエッジを(特徴を)設けたサービスとして、開発に取り組んできた」(大野氏)。

 各ユーザーがオンラインのワークスペースに常駐しつつ、必要や都合に応じて自由に会話に参加したり外れたりできる仕組みを備えることで、「オフィスにいるかのように他のメンバーに話しかけられる」「“立ち話”感覚で気軽に雑談や相談ができる」といった点を特徴としている。

NeWorkの機能的特徴。ワークスペースへ入り、簡単に会話参加できる仕組みを心がけている

リモートワーク下で進んだ開発プロジェクトの裏側

 続いて、NTT Com イノベーションセンター デザイン部門「KOEL(コエル)」の武田透摩氏が、サービス開発の舞台裏について話した。プロジェクトは今年6月にスタートし、調査に1カ月、開発に2カ月という短いスケジュールのなかで、デザイン面ではKOELとクリエイティブファームのKESIKI、開発やDevOps、ビジネス戦略に関してはNTT ComやNTTレゾナントが協調しながら開発を進めた。

 今回のNeWork開発にあたっては、「すべてリモートワーク」「デザイン思考と継続的改善の導入」という2点が大きなポイントになったと、武田氏は説明する。

 オフィスに集まることができず全員がリモートワーク環境下、なおかつ「異なる組織のメンバーが集まって新たに組成されたプロジェクトチームだったので、顔を会わせたこともなく、オンラインで『初めまして』というメンバーもいた」(武田氏)。

 そんな状況下で迅速に開発を進めるために、チームではまず「ローカルルール」を話し合って決めた。具体的には「すべての議論、情報をメモし、共有する」「チャットやホワイトボードなどのオンラインツールを活用する」といったルールだ。当初はぎこちない部分もあったが、お互いにコミュニケーションのプロトコルや粒度を会わせることを意識し始めてからは、話がうまくかみ合うようになっていったという。

全員がリモートワークという環境で開発を進めるにあたり「ローカルルール」を策定した。「楽しく仕事をしよう」というルールも

サービスコンセプト策定時のオンラインホワイトボード「miro」。「かなり高密度な議論をボード上で行えた。もしかしたらリアルでは、ここまで高密度な情報を可視化しながら議論するのは難しかったかもしれない」(武田氏)

 ユーザー視点でサービスを検討していくデザイン思考や、継続的改善(イテレーション)の考えも取り入れた。取締役の工藤氏は、「従来のNTT Comでは、非常に“堅い”開発プロセスを経てプロダクトが出来上がっていた。今回はそれをガラリと変えて、まずはスピーディにサービスを提供して、顧客や市場の反応を見ながらアジャイルに改善していく方法をとった」と説明する。

 同様に、武田氏も「現状ではプロダクトとしてまだまだ粗い部分もあると思うが、ユーザーの声を聞きながら改善していく」方針だと述べた。現在は毎日、細かなバージョンアップを重ねているという。

 スピーディな開発を行うために、現場への権限委譲も行ったという。工藤氏は「コンセプトを決め、社内のコンセンサスをとったあとは、すべて開発チームにお任せした。週次の進捗報告は受けたが、経営層からは一切口出しをしなかった」と語る。武田氏も、チームが自主的に意思決定をしながらプロジェクトを進められたため「非常にやりやすかった」と振り返る。

 プロジェクトチーム内では、デザイン、開発、運用のメンバーが一体となって「ワンチーム」で議論と開発を進めたという。サービスコンセプトを固めながら開発を始め、開発を進めながら細かい部分の検討を続けたと、武田氏は説明する。

 プロジェクト参画したNTTレゾナントがサービスの内製開発から運用までを手がける会社であるため、開発段階からサービス運用の負荷軽減も意識されていたという。たとえば、サーバーレスやマネージドサービスを徹底的に活用し、またキャパシティプランニングも省けるように、サービスの成長に合わせてオートスケールする仕組みを意識的に採用しているという。

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