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次世代D2Cはエンタメがカギ FABRIC TOKYO×Spartyが語る最先端パーソナライズの現在

躍進するライフスタイルブランドのスタートアップが語るD2C市場で勝ち残る術

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既存大手も参入するD2C市場で勝ち残るには

――D2Cが注目されるようになって5年以上になります。市場そのものは変わってきましたか?

納富:D2Cがバズワードになって、今は単なる通販のようなものまで含まれていたりしますよね。本来D2Cは、データを使って何ができるのかが重要です。データをどのように集め、それをどうやって商品やブランドとして適用させていくのかを2人にお聞きしたいです。

森:D2Cが伸びたのは、タッチポイントがデジタルになったこと。今はブランドに触れる機会自体がデジタルになっています。そのデジタルの向こう側にいるお客さんがさまざまなニーズを持つ時代になっており、ニッチで多様なニーズをデータでつかみやすく、マッチングさせやすく、届けやすくなりました。広告も商材も、顧客のニーズにパーソナライズしたものを届けやすくなったのが、ここ2、3年の変化です。

 弊社の女性社員に聞くと、以前は、化粧品は同じブランドで揃えていたのに、今は化粧水、乳液、美容液と違うブランドを使っているそうです。ニーズが多様化してきただけでなくて、個々のプロダクトの質も上がってきている。ここでクロスセルするのは難しいですね。

納富:大手の化粧品メーカーもD2Cに力を入れていますが、Spatyからは、どのように見えていますか?

深山:大手はブランドをチャネル起点で戦略を立てています。ドラッグストア用、自社店舗用、EC用と、チャネルごとに商品が分かれていて、それに合わせた体験を作らないといけない。顧客中心ではなく、チャネル理論に陥っているのが、化粧品業界の一番の課題です。パーソナライズを起点にファンをコントロールできるので、どのチャネルにも商品を同じように提供でき、それぞれのチャネルに最適な体験を考えられるのが強み。そのコアとなるデータとソフトウェアの価値を上げていくことが今の課題ですね。

ソフトウェア価値を高め続けることでブランドは構築される

森:ソフトウェアの価値をあげるためにはそれなりにリソースが必要ですよね。MEDULLAは少数精鋭のイメージがありますが、今は何人くらいの体制?

深山:正社員は16人で、そのうちエンジニアは4人。カートシステムとロジック、管理画面など、基幹の部分は自社で開発しています。エンジニアはもっと増やしたいですね。あとは、コーポレート3人、サロン1人、店舗3人、ウェブマーケティング1人。デザイナーは業務委託でほぼ専属でお願いしています。

森:うちは正社員120人で、半分は店舗ですね。全部スクラッチ開発なので、エンジニアとデザイナーのチームが20人ほど。アルゴリズム、カート、サプライチェーンのシステム、工場で使うシステムなど、SaaSの会社っぽくなっています。マーケティングが6、7人、サプライチェーンマネジメントの部門が5人、カスタマーサポートが10人、バックオフィスは4、5人で、どの部門もギリギリです。

深山:ソフトウェア価値を拡げるには、日々の美容をサポートするためにゲーミフィケーションの要素や、ヘルスヘアアプリを提供する方法もあります。しかし、それを作り込むには、エンジニアチームが別にもうひとつ必要。将来的には踏み込まないといけないけれど、どのタイミングで投下するかは、悩ましいところです。

森:ブランドは、お客さんに使い続けてもらって歴史を育てていくものだと考えています。同じことを続けているだけでは、半年後にはお客さんは離れていってしまう。じゃあ、何をすれば5年・10年使ってもらえるかというと、エンターテインメントの要素が必要なのかもしれません。何回行ってもテーマパークが楽しいのは、行くたびにお土産やアトラクションが進化しているから。同じように、お客さんが使っていて楽しいサービス、お客さんと一緒に進化しながら歩んでいくことがブランドには求められると思います。

 僕らがやっているブランド構築の本質は、お客さんをずっと楽しませ続けること。それがソフトウェア価値であり、パーソナライズのための質問や、選ぶ楽しさがどんどん進化していくことで、プロダクトの価値に反映させていくものですね。

深山:従来の通販はチャネルハックで、効率化が重要だった。次の世代のD2Cは、エンターテインメントのようなものをやっていかないと。通販会社などは、最初は勢いがあっても、3年後に新たな価値が提供できず落ちていくパターンが多かった。そうではなく、エンターテインメントをつくりだせれば、未来も成長していけるはずです。

リアル店舗がブランド構築に果たす役割

納富:FABRIC TOKYOとSpartyも実店舗がありますよね。やはりブランド構築には店舗があったほうがいいのでしょうか。

森:うちの場合、最初はウェブからスタートして、あとから店舗を出したのですが、今は店舗に力を入れています。というのも、ウェブだけで買ってくれるお客さんと、来店してうちのブランドの世界観に触れた方とでは、ぜんぜんリピート率が違うのです。

 もちろん、プロに採寸してもらうほうが自分で測るよりも正確、というのも理由のひとつですが、お客さんにとっては、店員に測ってもらったり、会話しながら買う商品を選んだり、といったコミュニケーション自体が楽しい。店舗の接客では、体型診断も実施していて、筋肉の付き方などによって似合う洋服の種類をアドバイスもしています。こうしたサービスはウェブだけでは実現できないのでリアル店舗は大事ですね。人の力でレコメンドすることは、まだまだ有効だと思います。

深山:とはいえ、店舗運営はやってみたらマジで大変。生半可な気持ちではできない。ウェブに比べて費用対効果が見えないから、どれだけ投資するかは経営判断になりますよね。そこをやり切る秘訣ってあります?

森:MEDULLAやHOTARUが本当の意味でお客さんを感動させた瞬間って、たくさんあると思うんです。うちの場合は、あるお客さんから「新卒で初めてスーツを買ったときに『体格がいいから似合いませんね』と言われてずっとスーツを着るのが苦痛だったけど、FABRIC TOKYOで注文してから自信がつきました」と言われたことがあって。こういう話を聞くと感動しますよね。こういうストーリーは、リアル店舗から聞こえてくる発生する気がします。

納富:店舗があるから、お客さんが伝えにきてくれるわけで、明らかにLTVが高い。これが積み重なってブランドが築かれるってことだよね。

森:一見無駄なこと、少し狂って見えることをやると、ものすごくお客さんの記憶に深く刺さる。ウェブマーケティングやECのチャネルハックは、タッチポイントは高まるけれど、深度は高まらない。深度を高めるにはリアル店舗が重要だと思います。

納富:さっき、FABRIC TOKYOで体型診断が喜ばれているのは、みんな自分のことがよくわからない、ってことだと思うんですよ。髪や肌も同じで、MEDULLAであれば、髪質や肌の診断を店舗で相談できるのがうれしい。

深山:確かにMEDULLAでは、美容室経由はウェブに比べてLTVが圧倒的に高いです。プロの美容師さんが髪をみて、信頼関係をつくったうえで販売しているから。スキンケアのHOTARUに関しては、いまはオンラインだけでもきちんと診断できるように力を入れています。まだ店舗投資ができていませんが、今後は、スキンケアも元美容部員さんと提携するなどの販路を考えていきたいですね。

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