グローバル化を目指す日本農業が優勝 ボクシング形式のピッチ大会
2020年2月開催の「GET IN THE RING OSAKA 2020」レポート
ミドル級ピッチバトル決勝
ミドル級ビッチバトルの決勝戦は、2社が順番に1分間のFreeStyleピッチをする。伝えるべきことは「なぜこの企業がミドル級優勝者になるべきなのか」。すでに事業内容や実績などについては話が終わっていることと、時間も短いため、どちらの企業も今最も欲しているものを端的に語っていた。
日本農業:
「すでに言ったとおり、グローバルの競争に勝ち抜きたいと思っている。そのためにここでふたつのものを得たいと思っている。ひとつはできる限り多くのパートナーを獲得したい。農業ビジネスは簡単なものではない。中国企業など多くの企業が農業ビジネスに投資している。製品の品質もどんどん向上してきている。だから我々の会社やビジョンに興味がある人なら、誰とでも話をしたい。」
「もうひとつはグローバルな認知度だ。グローバル展開するためには、まずグローバルでの認知度を上げなくてはならない。カナダの本選に出られれば、より多くの認知度を獲得できるだろう。」
EAGLYS:
「我々はセキュアコンピューティング社会の入口にいる。そこでの影響力を獲得するために、今すぐにグローバル展開しなくてはならない。社会でデータをシェアするためには、個々のデータの詳細にまでアクセスすることなく利用可能にする必要がある。暗号化技術を使って、『AIがあなたのことを知りすぎないようすること』が我々の目指すゴールだ。」
質疑応答で注目されたのは「あなたの事業がうまくいかなくなるとしたら、その理由は何か」だった。
日本農業は「現時点では中国企業や米国企業は効率重視だが、彼らが高品質な農作物を作り始めたら負けるかもしれない」と述べた。
EAGLYSは「早くリソースを獲得して海外のユーザーをサポートしなくてはいけない。今の成長速度では競合の出現までに十分なマーケットシェアを獲得できないかもしれない」という点を挙げた。
ミドル級決勝の勝者は日本農業となった。日本農業のサービスの方がより多くの助けを求めている人を助けることができると考えたことが挙げられていたことが理由にある。
ミドル級の審査に続いて、ライト級とミドル級の表彰式、および各賞の表彰が行われた。各賞は「GET IN THE RING OSAKA 2020」のスポンサー各社が予選に残った13社から注目企業を表彰するもので、必ずしも本選に出場した企業から選ばれるわけではない。
各賞の表彰がすべて終わった後で全員の集合写真が撮られた。本選に進んだ企業はいずれも満足そうな表情であるが、来年は満員の観客の前で表彰式が行なわれることを期待したい。
観客を「熱意」に巻き込むことが勝利の鍵
最後に、「GET IN THE RING OSAKA 2020」の本選で勝つ鍵は、なにより経営者の情熱であったと感じたことを申し添えたい。確かに事業計画や収益見通しは重要な判断材料ではあるが、これはピッチイベントであって書類審査の会場ではない。ましてや本来は満員の観客の前でピッチをするのである。観客を熱意に巻き込めれば、手強い審査員とて味方につけることができるだろう。
「なぜその事業をあなた自身がやろうと思ったのか」「その事業をやる社会的意味は何か」これらは質疑応答で(直接的ではなくとも)常に問われていた。これから生まれる若いスタートアップ企業がこれらの問いに正面から向き合い、その情熱が「GET IN THE RING OSAKA」に現れることを楽しみにしたい。