信用度状況 - 第1章
鎌倉コーポレーション
鎌倉企業倒産予測インデックスは8.17%上昇し31.96%に、信用度は4番目のパーセンタイルに下落
2020年4月1日(ニューヨーク):今回のリリースは、新型コロナウイルス感染拡大が導き入れた新たな世界情勢下における最初の信用度状況月次レポートです。四半期末を迎え、CFOの皆さんは、自社の資産の公正な時価評価額について情報提供しなければなりません。この先、数週間後にいよいよ第2章、「会計モンスターの攻撃」に入ります。つまり、企業は、この先数日中に自社のバランスシートの時価評価を行わなければならず、「会計モンスターの攻撃」を受けることになります。 今回のリリースでは、過去を振り返りながら、同時に将来も見据えてみたいと思います。
鎌倉企業倒産予測インデックス(R) (http://www.kamakuraco.com/Solutions/KamakuraRiskInformationSvcs/TroubledCompanyIndex.aspx) は、先月、8.17%跳ね上がり31.96%まで上昇、三カ月連続でデフォルト・リスクの悪化が継続されました。その結果、信用度が14番目のパーセンタイルから4番目のパーセンタイルに下落しました。更に、先月のインデックスは、ボラティリティが1カ月間に23.54%~35.3%の間で推移し、大幅に上昇したことも示しています。このインデックスは、上場企業40,500社中で1%超のデフォルト確率を有する企業の割合を示したものです。インデックスの上昇は信用度の低下、インデックスの下落は信用度の改善を意味します。
3月末時点で、デフォルト確率1%~5%の企業の割合は22.6%と、前月比5.16%上昇しています。デフォルト確率5%~10%の企業の割合は5.15%と、前月比1.53%の上昇。デフォルト確率10%~20%の企業の割合は0.91%上昇して2.8%となっています。また、デフォルト確率20%超の企業の割合は前月比0.57%上昇し1.41%となっています。全ての確率区分において、デフォルト確率が上昇していますが、最も上昇幅が大きい確率区分は、デフォルト確率1%~5%の企業のカテゴリーです。このことは、初期段階のストレスを抱えている企業の数が増大していることを示しています。
企業倒産予測インデックスの3月の数値は、31.96%と、1990年以来計測されてきた過去の企業信用度において, 4番目のパーセンタイルにまで下落しています。
3月時点で最もリスクの高い企業リストに含まれる10社のうち、8社が米国企業、残りが各々、英国企業およびルクセンブルグ企業でした。鎌倉コーポレーションの調査対象企業の中で最もリスクの高い企業として、Laredo Petroleum (ラレド・ペトロリアム), Inc. (NYSE: LPI) が浮上し、同社の1年以内のKDP (鎌倉デフォルト確率) は一カ月間で31.67%上昇、62.32%となりました。最もリスクの高い企業10社のうち、7社がエネルギー関連企業です。3月には調査対象企業の中で7社が債務不履行に陥り、そのうち4社が米国企業、残りがそれぞれドイツ企業、インド企業と英国企業でした。
現在の環境の下においては、セクター別に相対リスクを検証することが有益です。1ヵ月以内のKDPの中央値を検証したところ、現在の環境下では銀行が最もリスクの大きいセクターとなりました。ただし、90番目のパーセンタイルという事実を解析し、あるいは各セクター別の最もリスクの大きい企業と比較してみると、1.6%の数値では、リスク要因は相対的に抑制されていると言えます。その意味では、ポートフォリオ上のリスクとして、メディア・セクターとエネルギー・セクターの方が明らかな危険信号を発しています。詳細については、ご要請があれば鎌倉は喜んで読者の皆様に提供致します。
世界中で格付けされている全ての企業に対する鎌倉累積期待デフォルト曲線は、1年以内の期待デフォルト確率が1.89%上昇して4.09%に悪化し、10年以内の期待デフォルト確率も7.33%上昇し22.15%に悪化したため、大幅に拡大しました。
解 説
解説者:鎌倉コーポレーション 社長 兼 最高執行責任者 マーチン・ゾーン(Martin Zorn)
長期にわたって気を緩めた後には、往々にして単一の出来事が、市場の大きな変化を惹き起こすものですが、これが、現在まさに起こっていることなのです。多くの専門家が後講釈の手柄話としてその出来事を予想できたと言いますが、引き金となる出来事を事前に認識することは、通常、極めて難しいことです。
新型コロナウイルス感染という引き金は、我々も決して予期はしませんでしたが、何か非常におかしい状況にあることは感じていました。過去数年間にわたり、鎌倉累積期待デフォルト曲線をツールとして使用してきましたが、このツールは今後の見通しについて危険信号を発し続けてきました。暫く前から、借り換えリスク、レバレッジドローン、緩和し続ける融資条件、年金基金の積立不足等に対して懸念を抱いてきました。更には、マイナス金利の予期せぬ影響に対しても懸念を持ち、中央銀行当局が次にやって来る景気後退に対応するのに十分なる手段をまだ持ち合わせているのか、あるいは財政政策が景気下降局面において金融政策を補完できるのか等の疑問を投げかけてきました。
これら全ての潜在的リスクを一気に検証することが可能となってしまいました。今日の世界は、二カ月前と比較して、あるいは先月や先週と比べても様変わりです。これまで提示してきた疑問は、もはや仮説の質問ではなく、現実となり、日々毎日、解答を学んでいます。新たな四半期に突入しましたが、新型コロナウイルスのパンデミックと戦う為に、世界は今や、意図的にグローバル経済を閉鎖してしまいました。この状態がいつまで続くのか、各国や各セクターが如何に速やかに立ち直ることができるのかは誰も知ることが出来ません。
監査役からポートフォリオの時価評価を要請されるCFOにとって、全て都合の悪い話ばかりです。近々、企業は、最善のツールと入手できる情報を使って決算報告を作成しなければなりません。
リスク管理を行う上で、時価評価レポートに組み込むべき「既知のリスク」がありますが、更に「未知のリスク」もあります。これら「未知の」リスクの評価の為に、更にはこの難局を乗り切るのに十分な資本を保有していることを保証するために、適切な定量ツールを採用されていることを望みます。今後数カ月には、どの企業が、現在の市場の混乱を堪え忍ぶのに必要な強固なツールをどの企業が採用したのか、採用していないのかが分かることになります。
米国政府は、異例の緊急対策を講じて、急に解雇に見舞われた家庭に現金給付を行い、昨日まで十分な数の従業員の確保に苦労していたが、今日は事業の閉鎖を余儀なくされる中小企業に対して支援を差し伸べています。政府援助を受けたとしても、多くの家庭や会社は、来月のローンの支払いや賃貸料の支払いが不可能になることでしょう。
政府が、次にどのような財政措置や金融措置を講じるのかは分かりませんが、膨大な金融危機の伝播と悪影響が起こることだけは分かります。我々が今出来ることは、未知の領域でも我々を導いてくれる最善のモデルとデータを手に入れることです。最も切れ味鋭いツールを使って、敵がドアから侵入する前に撃破すべく共に戦うことです。