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NDAで失敗しない 知財契約で知っておくべきこと

「テック系ベンチャーが創業期に知っておくべき落とし穴~知財契約を中心に~」レポート

特集
STARTUP×知財戦略

 2020年1月31日、特許庁とつくばスタートアップパークは、ASCII STARTUPの協力のもと、テック系ベンチャーのための知財戦略・知財契約をテーマにした勉強会イベント「テック系ベンチャーが創業期に知っておくべき落とし穴~知財契約を中心に~」をつくば市のインキュベーション、コワーキング施設「つくばスタートアップパーク」にて開催した。イベントでは、特許庁の進士千尋氏による知財戦略に関するセミナーと、高田龍弥氏によるNDAの結び方セミナーとワークショップが実施された。

テック系ベンチャーによくある知財の落とし穴とその対策

 セミナー「テック系ベンチャーが陥りがちな知財の落とし穴」では、特許庁総務部企画調査課のスタートアップ支援チームの進士千尋氏がスタートアップにおける知的財産の重要性について講義した。スタートアップにとって、知的財産は企業価値そのもの。特に、VCからの出資や大企業とのM&A時には知財が重視される。また、IPO時にも必要な知財の取得や特許等の係争事件をチェックされるため、不十分な知財戦略は、資金調達やイグジットでマイナスになる。

 講義では、テック系ベンチャーが陥りがちな落とし穴として、以下4つのケースを挙げ、それぞれの対策について紹介された。いずれも知財コミュニティーサイト「IP BASE」の支援メニューにて公開されているので、関心のある方は参照してほしい。

1.特許出願前に技術を公開
2.事業をピボットしたため知財がビジネスモデルと合わなくなった
3.共同研究開発のパートナーの知財にロックインされて事業化が困難
4.IPO直前に侵害警告・訴訟を受ける

(関連サイト) 「ベンチャー投資家のための知的財産に対する評価・支援の手引き」

特許庁総務部企画調査課 課長補佐 進士千尋氏

NDAで失敗しない8つのチェックポイント

 続いて、特許庁総務部オープンイノベーション推進プロジェクトチームの高田龍弥氏によるセミナー&ワークショップ「失敗しないNDAの結び方」では、NDA書類レビューする際のチェックポイントを解説する講義と、参加者によるワークショップを実施した。

特許庁総務部オープンイノベーション推進プロジェクトチーム 高田龍弥氏

 高田氏は、企業連携時の契約リスクをケーススタディで解説したパンフレット『知財を使った企業連携4つのポイント』を作成。現在は「オープンイノベーションに関する契約ガイドライン策定事業」を担当し、研究開発型ベンチャーや大企業との契約取引をメインターゲットに、円滑なオープンイノベーションを可能にする技術契約ガイドラインの策定に取り組んでいる。オープンイノベーションのモデル契約書は今後、公開予定。大学×研究開発型ベンチャーのモデル契約書の策定も検討されている。

(関連サイト) METIニュースリリース「オープンイノベーションと知財の管理・契約リスクに関する啓発パンフレットを公表しました」

 セミナーでは、NDAでよくある失敗をいくつか紹介し、防ぐためのNDAレビューのチェックポイントを解説した。NDAを交わしていても、秘密情報の範囲を明確に定義して管理方法を決めておかないと、徹底した情報管理がなされず情報漏洩は起きてしまう。

 NDAの主たる目的は、秘密情報の秘密を保持してもらう、秘密情報の目的外使用を禁止する、の2つだ。この目的を達成するためにNDAレビューでは、以下の8点を例示してチェックポイントとして解説した。

1.契約の目的
2.秘密情報の範囲の設定
3.目的外使用の禁止
4.第三者への開示の禁止
5.第三者に開示する場合に負う責任
6.秘密情報の返還・破棄
7.損害賠償
8.秘密保持義務の期間

 セミナーの後半には、高田氏の解説したチェックポイントに基づき、参加者の視点から、実際にNDAレビューを体験するワークショップを実施。大学発ベンチャーと大手企業の共同研究を想定したモデル契約書を用いて、各チームでベンチャー側の視点で契約内容をチェックし、気になる箇所を発表した。

 目指しているビジネスモデルや取引先との関係性、技術の内容によって、NDAとはいえ既存のひな形ではそぐわない場合が通常であり、細部までよくチェックすべきだが、慣れないうちは見落としやすい。十分に知見を得るまでは、弁護士など専門家にチェックを依頼することも検討してほしい、と締めくくった。

架空の契約書をもとに添削し、発表するワークショップを実施

■関連サイト

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