ロードスター30周年ミーティング

ロードスター30周年の次の話を開発主査に聞いた

文●鈴木ケンイチ 編集●ASCII

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そろそろ次のロードスターについて
話そうじゃないか

 2019年10月13日、広島の三次自動車試験場において「ロードスター30周年ミーティング」が実施された(2100台のマツダ ロードスターが10年に一度の里帰り!)。

 そこで、マツダの2代目(NB)と3代目(NC)ロードスターの開発主査である貴島孝雄氏と、今年の5月よりロードスターの主査となった齋藤茂樹氏に話を聞くことができた。ロードスターの遺伝子はどのように受け継がれるのか?

──次世代ロードスターに関して、かつて開発をしてきた貴島さんから現在の開発陣に対する継承というのは、どのようになっているのでしょうか?

貴島孝雄氏(以下、敬称略) 気を付けなくてはいけないのは本質なんですね。ロードスターの本質を示す言葉として“アフォーダブルスポーツ”という言葉があります。アフォーダブルには2つの意味があって。要は、ハイパワーのクルマはアクセルを加減して乗らなくてはいけない。しかし、そんなレーシングドライバーのような腕がなくても誰もが乗れるような性能で、かつ、買いやすい価格。その2つがロードスターの原点です。そういったことを引き継いでもらえないかなあと。

 また、乗って楽しいというのは、実は簡単にできているものではないのです。物理的に慣性、重心、ドライバーの位置がちゃんとしているからできる。それは、理論を知らなくても乗る人はわかる。そこが原点なんですよ。そこを初代(NA)ロードスターの主査である平井さんがきっちりとやられたわけですね。

左から貴島孝雄氏(2代目、3代目主査)、山本修弘氏(4代目主査)、中山 雅氏(4代目デザイナーと主査)、齋藤茂樹氏(現主査)

──ちなみに、現在の主査である齋藤さんは平井さんのことはご存知ですか?

齋藤茂樹氏(以下、敬称略) 僕は1989年の入社で、ちょうどロードスターが出たときで。ですから、あまり知らないんですね。でも、僕は2代目のNBから貴島さんとロードスターの仕事をさせてもらいましたし、次の主査である山本さんとも一緒に仕事をやってきました。そこで主査の背中を見たんですね。主査がいかに熱く語って、実験設計を動かして、良いモノを作ろうというのを。僕が主査を引き継いでも、それが財産として生きています。継承って、そんなに難しいことじゃないって思いますよ。何か、モノに書いたものを見せて、学ばせるじゃなくて、やってきたものすべてなので。

貴島孝雄氏

貴島 マツダの開発の仕方は、最近も変わってないと思いますね。前のモデルを凌駕していない次のクルマは出さないと。私の場合は、幸いにも前に平井さんのクルマ(NA)があった。でも、平井さんは何もない、ゼロからだったんです。

──無から有を生み出すのは大変なことですよね。その初代のNAがあるから、第2世代のNBもできたということですね。

貴島 そうです。NAと比較して、NAより劣ったものは作らないと。それも、いろんな制約の中で作らないといけません。たとえば、排ガス規制のために、いろいろなシステムをつけなくてはいけない。衝突安全のためにサイドエアバッグもいる。でも、それらは仕方ない。レギュレーションですからね。それを入れながら、凌駕するということをやってきた。そういう意味では彼(斎藤氏)には、NDを凌駕するNEを作るという目標があるということだね。

齋藤茂樹氏

──その現行型のNDロードスターもデビューから4年たってしまいました。そろそろ次の話があるのでしょうか。

齋藤 まだ、4年です。まだまだ。

貴島 8年。スポーツカーは8年ですよ。

──これからのクルマは、環境性能や安全性など、求められるものが、さらに増えます。

貴島 それはもう、モーターやら電池やら、電気を使わないといけない。でも、そういう要件は、実のところコンセプトの“楽しい”とは別。手段の話なんです。それを使って、楽しいクルマを作らなくてはいけない。目標はハッキリしているわけです。世の中が許さないものを出すわけにはいかない。

──電動化や自動化と“楽しい”というのは別の話であると? 

齋藤 それを外したらロードスターじゃないですから。

──ハイブリッドになろうとEVになろうと、関係ないと。

齋藤 そうそう。まったく関係ないです。

──人を中心にした楽しいクルマ、というコンセプトは継承する。アフォーダブルなスポーツカーで楽しいというのは変わらないんですね?

齋藤 そこは、まったく変わらないですね。それは、ロードスターの憲法として残っているので。ロードスター作りって、そんなに難しくないんですよ。“NEはどうなるんですか?”といっても、皆さん、答えはわかっているじゃないですか。

──確かに、楽しくないロードスターって、ありえないですよね。ちなみにロードスターの憲法というのは、どういうものになるのですか?

齋藤 たとえば前後重量配分が50:50であるとか、アフォーダブルであるとか。いくつかあるじゃないですか。それはもう変えられません。コンセプトなんて、もうずっと一緒ですから。今さらコンセプトは、どんなクルマ作ろうか? という議論はないんです。今のコンセプトを元に、もっともっと楽しく、人間中心で、社会に優しくて、安全でというのを考えながら進化させていかないと。楽しさだけを追い求めて、危ないクルマじゃダメだと思うんで。それでは、たぶん40周年へと続かないと思うんですよ。

貴島 残念ながら他メーカーには、ロードスターのようなクルマはないんですよ。自らを超えなければいけないクルマという存在が。ロードスターは、自分たちの歴史を見ていけば、次も読める。他メーカーから、持ってくるものはない。よそがどうしようが、自分たちの路線で行けるというところもある。

齋藤 他のクルマは、周りを見ながら作らなければいけないんですけど。ロードスターは過去の歴史を見ながら作るという。ある意味、開発としては、変わった作り方なんです。

──歴史という意味では“NCが重い”という声があって、その反省でNDが軽くなったと言えますよね。ユーザーの声は重要ですよね。

齋藤 今、聞こえてくるのは、やはり変えないでほしいという声ですね。NDは、特にNAやNBを好きだった方に受け入れられています。やはり小さい排気量で、1.5リッターというのはロードスターの王道じゃないかと言う声があります。次に向けても、絶対にクルマを大きくしないでねと。この軽さ、楽しさを残してくださいという声は大きいと思います。

──NC型は会社が厳しいときに出たモデル。よくぞ残してくれたという見方もあります。そういう意味で、この先、マツダの経営が苦しくなったときに、もう続けるのは無理ということはあるのでしょうか?

貴島 ロードスターを作らないということですか? それはないと思いますね。

齋藤 マツダのブランドアイコンとして、ロードスターがありますし。このクルマをやめて、他のクルマは作れないということですね。

──会社のブランドアイコンってことは責任重大ですね。

齋藤 そうですね。

──ありがとうございました。

 話の中でも出てきたように、自動車を取り巻く環境は大きな変化に直面している。環境対策による燃費向上へのプレッシャーは強烈であるし、交通事故防止のための先進運転支援システムへの要望も高まっている。また、CASEと呼ばれるように、コネクティッド機能や自動運転機能、電動化などの動きも勢いづいている。

 そうした中で、ロードスターはどのように変化するのか。もしくは消えてなくなってしまうのか。

 ファンとしては、その将来に対する不安はぬぐい切れないものがあった。しかし、マツダの開発陣は、そうした心配は杞憂であるという姿勢を見せてくれたのだ。次のロードスターも、その次のロードスターも、現在と同じコンセプトのまま登場する。そんな未来を予感させるうれしいインタビューとなった。

筆者紹介:鈴木ケンイチ


 1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。

 最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。



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