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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第517回

第3世代RyzenとNAVIで追加された新機能 AMD CPU/GPUロードマップ

2019年07月01日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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NAVIはDisplay Stream Compresssion 1.2aに対応

 次はGPU側であるが、こちらはSKUと内部構造については一通り説明が終わっているので、周辺の話をいくつかしよう。

 まずはディスプレーエンジンについて。大きな特徴として、HDMI 2.0bとDisplayPort 1.4 HDRの対応に加え、Display Stream Compresssion 1.2aに対応したことが挙げられている。

HDMI 2.0bは規格としては2016年に定まっているが、主要な特徴がHLGやDolbyVisionなどの動的HDR対応(静的HDR対応はHDMI 2.0aで済んでいる)ということもあり、ソースとディスプレーの対応もなされないと意味がないところで、やっとここに来てそれらがそろい始めたともいえる

 HDMI 2.0bやDisplay Port 1.4 HDRはいいとして、説明しておく必要があるのはDisplay Stream Compression(DSC)だ。これはVESAの規格である。

 日本語ではこのDSCを「UHDディスプレーに対応した視覚的に品質劣化のない圧縮技術」などと呼ぶが、「視覚的に品質が劣化しない」というのは、「圧縮をかけてデータは劣化しているが、それを視覚的に認知できない(から問題ない)」という意味である。

 要するにDSCはLossy(元データを完全に復元できない)圧縮方式である。なぜこれが必要かというと、従来では大画面・高ビットレート・HDRの3拍子がそろうと1本のディスプレーケーブルでは帯域的に不足するからだ。そのため2本のディスプレーケーブルを利用して画面出力が必須になっていた。

 この方式そのものは、古くはDVIのDual Linkとして広く使われていたわけだが、DisplayPortやHDMIでは「電気的にはともかく見かけ上」1本のケーブルでDual Linkにするという規格が存在せず、複数本のケーブルが必要になってしまい、あまり美しい解決法とは言えなかった。

 そこで、出力画像に非可逆圧縮をかけて、1本のケーブルで送れる程度まで帯域を減らそう、というのがDSCである。理屈はともかくとして、なかなか製品には実装されなかったのだが、ここにきてNAVIではDSCをDisplay Engineに内蔵したため、今後登場するDSC対応モニターが利用できる、という話である。

E3ではASUSがDSCに対応した43インチディスプレーを発表している。もっとも発売開始時期や価格などは現時点でもまだ未公表である

 次がRadeon Media Engineで、これは動画のエンコーダー/デコーダーであるが、VP9/H.264/H.265のエンコード/デコード(VP9はデコードのみ)に対応、また8K動画のサポートも(HEVCのみだが)追加された。

このHEVCのエンコード性能改善は期待が持てそうな気がする(この部分ではこれまでNVIDIAのNVENCに水をあけられていたからだ)

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