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スポーツ×トークンエコノミーの可能性とは?

JAPAN INNOVATION DAY 2019セッション「トークンエコノミーはスポーツ業界に新しい価値を想像できるか」

連載
JAPAN INNOVATION DAY 2019

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スポーツ×トークンエコノミーの可能性と未来価値

清古 トークンの特徴は、デットを積んでいないこと。それゆえに、トークンは信用が付きづらい部分があるが、いったん信用が付くと、通貨発行益ができ、参加者はメリットを享受できます。スポーツのクラブチームがトークンを運営することで、この通貨発行益を使った経済活動ができるようになります。設備の向上、選手の給与のアップ、今まではボランティアベースで活動していた方にも公平に対価が支払わられることが期待されます。

岡部 財源が不要、という性質をうまく使うことで、初期に貢献したファン、スポンサーに報いることができるのがトークンエコノミーの大きな特徴ですね。投資家であれば、キャピタルゲインが得られるが、ファンの場合、初期から応援していても対価が得られない。トークンであれば、初期に応援してくれた方にも、将来、キャピタルゲインのようなものが得られる可能性があるのは大きな魅力です。

上野 国内では、ventusの電子トレカやエンゲートの投げ銭などが出てきています。こういった動きを西野さんはどう捉えられていますか?

西野 これまで応援したい気持ちの大きさは、言葉でしか表現できなかったが、投げ銭など数量で表せるのは、お互いにとっていいことだと思う。今まで目に見えなかったものを形にすることで、新たなコミュニケーションが生まれる。一方で、あまりにも科学や数値化されることに対する危惧があります。スポーツ界としては、目に見えないものの価値も大事にしたい。すべてを否定するのではなく、両方のバランスを取りながら、新しいテクノロジーを取り入れていければ。

清古 これからはCtoCに向かうと予想しています。今でも個人間の送金が普及しつつありますが、プライスレスなお礼やプレゼントとして、トークンは使いやすいのではないでしょうか。

岡部 今、国策としてもスポーツ人口を増やそうとしている。スポーツの実施率を上げようとするとき、インセンティブがないと難しい。スポーツを実行したことに対してコインを配布することで、スポーツの参加者を増やせる可能性がある。例えば、マラソン大会の参加者へ走るコインの配布、水泳で泳ぐ距離に応じたコインがもらえるなど、競技のコミュニティーごとに流通するコインがあっていい。コインの使い道も、有名選手から指導が受けられる、施設が使えるなど、それぞれに価値が付けられるように思います。

西野 “地域”と“コミュニティー”のキーワードは、使い分けないといけないなと思ってきています。Jリーグクラブの多くは、地域を重視していますが、大きなクラブは、アジアや世界を視野に入れている。その際、トークンエコノミーを使ったコミュニティーを形成し、経済的な価値の交換が行なわれ、参加するファン、選手、クラブのみんながメリットを得られるのであれば、素晴らしい可能性が生まれるのではないかと期待しています。

上野 地域経済×トークンという切り口では、清古さんは、電子通貨との差別化をどのようにお考えですか?

清古 さるぼぼコイン(飛騨高山の電子地域通貨)は、デッドを積んでおり、有効期限が設定されているのがトークンエコノミーとの大きな違いです。飛騨地方の2割の店舗が加盟し、税金の支払いにも充てられるなどのインパクトが大きく、進歩性のある、いい取り組みだと考えています。さらに、デッド性のないものでチャレンジしていただければ、トークンエコノミーの完成形になっていくのではないでしょうか。

岡部 トークンエコノミーは、価値が変動するため、どうしてもお買い物の決済には使いづらい。実社会で使うには、コミュニティーの中で、ファンサービスが受けられる、チケットを早く予約できる、といった使われ方が先行するでしょう。ただ、チケットが早く予約できる権利などにトークンを活用することよって、トークンの価値の裏付けになる。今までお金にできていなかった部分が価値になり、チームやスタジアムの収入になる可能性は十分にあると考えています。

西野 地域の人口が減っていくなか、スポーツの存在感を増していくのか、限られたファンとどう結びつきを強めていくのかを考えたとき、新しいテクノロジーを取り入れていかないとダメだと思っています。その視野を持っているクラブもちらほら出てきているので、数年後には大きな差がついているのでは、と感じているところです。

 最後に、会場からの質問で、「トークンエコノミーは、インセンティブにもなるが、純粋に応援したいファンの気持ちを踏みにじることになるのではないか」という意見が出た。

 それに対して清古氏は、「インセンティブが強すぎるとよくないとは感じています。必ずしも全員がコインを利用する必要はなく、純粋な応援はそのまま続けていただきつつ、今までは興味がなかった方の参入障壁を下げるためのインセンティブとして使っていただければ」と答える。

 西野氏も、「スポーツクラブの経営体として成長していくには、いろいろな人とお金を巻き込まなくてはいけないと考えています。無償で応援してくれるファンだけでなく、リターンを求めている人にも関わってもらい、満足できるスキームを作ることも大事。結果、クラブが成長していけばいい。一方で、ファンは自分の時間のお金を投入して応援してくれている。それに対して、お金以外の形で返せる関わり方もつくっていかなくてはならない。トークンエコノミーのシステムであれば、容易に実現できるのではないか」と期待を込めていた。

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