STARTUP×知財戦略 第19回
一般社団法人TXアントレプレナーパートナーズ主催「第3回 J-TECH STARTUP SUMMIT」開催
Deep Techスタートアップのエコシステム創成へ J-TECH STARTUP認定の7社が表彰
2019年04月16日 06時00分更新
2月8日に、技術系ベンチャー企業支援組織である一般社団法人TXアントレプレナーパートナーズ(TEP)が主催するイベント「第3回 J-TECH STARTUP SUMMIT」を開催。J-TECH STARTUP 2018に認定された企業7社が表彰された。今回認定されたのは、エンジェル出資やクラウドファンディングからの資金調達を受けている企業や起業予定者の5社(シード期)と、ベンチャーキャピタルなどから出資を受けて、資本金1億円未満でかつ従業員数50名以下の未公開企業の2社(アーリー期)。
【シード枠】
●Assist Motion株式会社(エレクトロニクス・ロボット)
●株式会社Aster(マテリアル)
●株式会社ASTINA(エレクトロニクス・ロボット)
●株式会社セルファイバ(医療・ヘルスケア)
●株式会社メディアラボRFP( 医療・ヘルスケア)
【アーリー枠】
●株式会社Atomis(ナノテクノロジー・マテリアル)
●株式会社VRC(IT・ソフトウェア・ネットワーク・AI)
※50音順
J-TECH STARTUPを起ち上げたTEPの代表理事である國土晋吾氏は、冒頭の挨拶で「インターネットのサービス系やアプリ系の会社は、事業を一度イグジットして新しい事業をする人や、エンジェル側にまわって新しいシーズを育てるような1つの循環ができつつあります。また、手本となる会社がでてきて、それに続けという形になってきています。しかし、Deep Techと呼ばれる分野、たとえばロボットや医療系、材料系、エネルギー系などといったジャンルは、まだそういった循環系ができていません。この分野でもうまく循環を作りたく、まずは創業まもない企業に対して資金を調達するお手伝いをしようと、このような認定制度を作りました」と語り、こうした企業への協力を訴えた。
認定式の前に、まずは選ばれた7社によるプレゼンが行なわれた。プレゼンした順に紹介していこう。
株式会社ASTINA(エレクトロニクス・ロボット)
ASTINAは「ふだん使いのロボティクスを」というコンセプトのもと、ロボット掃除機に代表される実務系ロボットのように明確なユーザーメリットを提示するような製品なら十分な出荷台数が見込めると判断。代表取締役の儀間匠氏は、「家電業家に革新をもたらす世界初の家庭向けロボットメーカーを作ることを目指している」と語る。
まず、開発したのが洗濯物をかごに入れるだけで、全自動で畳んで衣類によって分別して収納するタンス「INDONE」だ。独自の機構とAIによる画像認識を組み合わせて実現するもので、日常よく利用される下着やTシャツといった衣類に対応。夫婦が協力して家事ができる環境を目指し、30万円から50万円程度の価格設定で販売を予定している。
競合としてはセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズの「laundroid」や家事代行業などでだが、価格が安いというのが強みである。2020年の販売を目指して出資を募っている。
株式会社メディアラボRFP(医療・ヘルスケア)
メディアラボRFPは、2018年8月に創立したばかりの企業で、アルツハイマー病(AD)をはじめとする認知症の発症を予防する薬を開発している。認知症の薬は大手製薬会社が取り組んできているがことごとく失敗している。
これまでは、認知症を発症してからAβワクチンやAβ抗体などを投与してきたが、すでに死んでしまった神経細胞を回復できず、失敗を繰り返してきた。むしろAβ病理やtau病理が脳にたまり始めた未発症の方に薬を投与することで、症状を予防するという流れになってきた。また、Aβ病理だけでなくtau病理も取り除く必要があること、そして、脳へ直接届く投与を行なうことで効果を上げられることがわかってきた。
メディアラボRFPでは、すでに世の中に出回っている薬でAβやtauを抑制するものを見つけ、投薬方法として点鼻薬にすることで、脳内へ直接到達するようにした。現在ほかの企業が開発しているBASE阻害薬や抗Aβ抗体に比べても、メディアラボRFPが開発したML1808は安全性も利便性も高く、価格も安くできるという優位性がある。
ただ、販売までの道のりは長い。2020年までに非臨床試験を終了し治験届を提出、その後試験を続け2031年に承認申請し2032年にようやく販売できる。承認申請するまでにかなりの資金が必要なため、投資してくれる企業を募集している。

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