最新パーツ性能チェック 第252回
CPU占有率を下げてゲームプレイも配信もPC1台でこなす
GeForce RTX&新NVENC、OBSで高画質ゲーム配信できるって本当?
2019年03月14日 13時45分更新
新しいNVENCが輝くのはCPU次第
これまでの検証で、40Mbps設定での高画質録画では新しいNVENCでないと録画したデータがコマ落ちすることが観測されたが、8Mbps設定だとx264も新しいNVENCと大差ない画質だということがわかった。しかし、x264はCPUパワーを使う。今回は検証に8コア/16スレッドのCore i9-9900Kを使ったが、それよりコア数が少ない場合はどうなるのだろうか?
今回は第9世代Coreプロセッサーの下位モデルが手元になかったため、BIOS設定を利用して下位のCore i5-9600K及びCore i7-9700K相当のスペック(ターボブースト時の倍率も実際の製品に準拠)に合わせた“仮想Core i5/i7”でもテストしてみたい。
さらに、コア6基+HT有効の6コア/12スレッド、すなわち“並列度だけRyzen 5相当”の環境も用意した(クロックはCore i5-9600Kと同じに設定)。現実のGPUよりもL3キャッシュなどの点で有利になっているが、仮にこの状態でコマ落ちが発生すれば、それは本文のCPUを持ってきてもコマ落ちするだろうということは想像に難くない。
テストは前述の検証と同じくFar Cry New DawnとForza Horizon 4を利用し、OBS側はCBR 8Mbps&Look-aheadなしの設定とした。以下、単純に録画された動画にコマ落ちが見られたか否かを記す。V-Syncは両ゲームともに無効化している。
前述した通り、GPU占有率の関係で新しいNVENCはForza Horizon 4でコマ落ちが確認できたものの、非常に軽微でじっくり見ないとわからないレベルだが、x264でエンコードする場合は論理コア数が減るほどにコマ落ちの激しさが増していく。
CPU負荷の軽いFar Cry New Dawnのほうがコマ落ちはやや軽減されたものの、6コア/6スレッド(Core i5-9600K相当+α)程度の並列度では、ほぼ紙芝居状態となった。
さらに、CPU負荷の高いForza Horizon 4では、6コア/12スレッドであっても常時コマ落ちが目につく状態だ。とても視聴できる状態ではない。結局、x264 fast設定でまともに録画できたのは8コア/16スレッド時のみだった。つまり、現行のメインストリームなら、Core i9-9900KかRyzen 7 2700X及び2700以外のCPUでは、Turing+新しいNVENCの組み合わせが安定して高画質な結果を得られると言える。
まとめ:少し遅かった感はあるが、多くの配信者にとって非常に有益
以上で検証は終了だ。実際に動画でお見せできない部分が多々あるため、いつものGPUレビューのような歯切れの良い結論は出しづらいが、OBS v23.0.xで追加された新しいNVENCは非常に高性能で、x264のfast設定でエンコードした時と同等の画質が得られる。そして、そのx264 fastで満足なエンコード結果を得るためには、メインストリームCPUなら8コア/16スレッドは必要になる。
つまり、この新しいNVENCが一番“刺さる”のは、GPUはTuringでも、CPUがCore i7以下(もしくはRyzen 5)であるというユーザーだ。CPUの並列度が足らないため、x264では画質を犠牲にしなければまともにエンコードできないが、新しいNVENCを使えばCPUの並列度が少々低くても高画質でエンコードできる。GPU負荷に気を払う必要はあるが、そこさえクリアーできれば配信専用のPCは不要になる。
もちろん、配信専用PCを用意するということのメリットを否定するわけではない。環境を分けて、ゲームは配信ソフトの、配信ソフトはゲームの不具合に巻き込まれないのはメリットだろう。むしろメニーコアCPUを搭載した配信専用PCにもTuringベースのGeForceを載せれば、CPUでエンコードしてもGPUでエンコードしても良しの最強配信PCとして運用するのもアリだ。
ライバルが価格勝負に出たこと、さらにマイニング崩れの中古カードが自作PCパーツ市場に流入しているため、RTX 20シリーズやGTX 1660 TiといったTuringベースのGeForceは順風満帆とは言い難い状態である。しかし、DXRやDLSSに続き、配信者向けの実用的な機能を組み込んできたNVIDIAの挑戦姿勢については、素直に賛辞を送りたい。あとは製品の値段がもう少し落ち着けば、話はとてもラクなのだが……。
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