第24回 チームワークマネジメント実践者に聞く

もっとも難しい課題「リーダーシップ」をチームに実装する仕組み作り

やらされ型のプロジェクトではDXは進まない リーダーシップが全員に必要な理由

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

提供: ヌーラボ

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 チームワークマネジメントとは? 多様なメンバーが共通の目的達成のために助け合い、自律的に動けるチームを設計・運営する概念。チームの構造を見える化し、コミュニケーションを設計することで、チームメンバーが個々の能力を発揮しやすくし、全体の生産性向上と目標達成を目指す。

 最終回となる今回は製造業のDXプロジェクトを追う。マネージャーだけではなく、プロジェクトメンバー全員が持つべき「リーダーシップ」の重要性について失敗事例を見ながら学んでいきたい。まずはリーダーの私の気持ちになって、次の事例を読んでほしい。

【事例】半年経っても成果の出ない!製造業のDXプロジェクト

社長の鶴の一声で、製造業であるうちの会社のDXプロジェクトがスタートした。経営管理部の一社員である私は、「若いから」という理由でリーダーに抜擢され、DXプロジェクトを推進することになった。

まずはプロジェクトのメンバーをアサインすることになったが、各部門から参加したのは、部門の都合で集められたメンバー。兼任なので、現場業務も忙しい。そのため、ミーティングを開催しても、率先して意見を言う人はいない。

残業に残業を重ね、リーダーの私が目的とタスクをようやく形にしたものの、タスクを率先してやる人間がいない。話を聞くと、「現課の業務もおろそかにしないように」と各部の部長から釘を刺されているという。タスクの内容を毎回説明するのも大変で、「リーダーはなにがやりたいのかわからない」と言われることもあった。

結果、半年経っても成果が上がらず、上席から叱責を受ける羽目に。「各部が協力的ではない」「タスクを率先してやってくれない」など状況を説明したが、「キミのリーダーシップが足りないのでは?」と言われてしまった。確かに私のリーダーシップも必要だと思うが、もっと主体的に動いてくれるチームはどのように作ればよいのだろうか?


【課題】リーダーシップはマネージャーや経営者だけのもの?

 全社DXプロジェクトを任されてしまったリーダーの独白に共感していただけただろうか? 今回はチームワークマネジメントの中でもっとも難しい課題とも言える「リーダーシップの発揮」がテーマだ。

 リーダーシップと聞くと、マネージャーや経営者が対象という印象が強い。しかし、ここで意味するリーダーシップとは、「メンバー全員の自主性」である。「正解」や「型」のないDXプロジェクトでは、リーダーとメンバーが協調し、目的やタスクを洗い出さなければ、進捗がおぼつかなくなるのだ。

 しかし、メンバー全員に自主性を求めるのは簡単ではない。特に、今回のように「兼任」でプロジェクトに参加する場合、メンバーは現課の業務を優先せざるを得ない。こうした状況でメンバーにリーダーシップを持ってもらうには、組織のバックアップが不可欠になる。経営のイニシアティブや現課の部門長の理解はもちろんのこと、メンバーに対する評価やインセンティブなども含めた広範な施策も重要になる。その土台があって初めて、誰もが自主性を発揮しやすい仕組み作りが効果を発揮するのだ。

リーダーシップの発揮

役職に関係なく、すべてのメンバーがチームワークマネジメントの重要性を理解し、自ら業務をリードする意識を持つことが大切です。ここではリーダーシップとは役割ではなく、周囲にポジティブな影響を与える姿勢そのものを意味します。



【分析】自主性の欠如は環境作りに原因あり

・各部門から参加したのは、部門の都合で集められたメンバー。

今回の事例における本質的な課題は、単に「誰を集めるか」という人選の問題ではない 。むしろ、トップダウンの風土が強すぎるあまり、現場に潜んでいるはずの改善意欲やデジタル化への関心が表に出てこない「空気感」にこそ原因がある。

こうした埋もれている主体性を引き出すためには、日頃から意見を言い合える「心理的安全性」を確保しなければならない。誰もがリーダーシップを発揮できる環境を整えることが、プロジェクトを始動させる際の最優先事項といえる。

・残業に残業を重ね、リーダーの私が目的とタスクをようやく形にしたものの

DXのような型のないプロジェクトでは、ゴールやタスクの洗い出しが難しい。しかし、焦ったリーダーが一人でタスクを作ってしまうと、メンバーの自主性は生まれにくい。

指示を待つだけの「やらされ仕事」では、メンバーの創意工夫を活かしにくくなる。リーダーは、メンバーが積極的に動ける土台づくりをサポートに徹し、積極的に意見を発信できるようなミーティングやツールを整えることが、自走するチームへの近道となるだろう。

・「キミのリーダーシップが足りないのでは?」と言われてしまった。

リーダーだけが、リーダーシップにこだわっているというのは、もはや昭和的な価値観と言えるかもしれない。主人公が不幸だったのは、上席がこういった「旧来のリーダー像」を求めた結果、リーダーだけが空回りする事態に陥ってしまった点だ。

これからのチームに必要なのは、すべてのメンバーがリーダーシップを持ってタスクに当たることであり、リーダーの役割は自主性を発揮しやすく、コミュニケーションを生み出す土壌作りにあると言える。そのためにはタスクをなるべく明確にし、各メンバーに権限と責任を持ってもらう環境が必要になる。

【解決提案】チームで議論し、Backlogで課題化

 リーダーシップ自体は本人から生まれるものだが、Backlogで生まれやすい環境は作れる。チームワークマネジメントとプロジェクト管理について事前に学び、メンバーとともにミーティングでまずはゴールを設定しよう。意思決定のプロセスに疎外感を感じると、メンバーはやる気を失う。一方、第1回で述べたとおり、ゴールを設定することで、各部門のメンバーの集まりは、初めてチームになる。

 特にDXのような型のないプロジェクトの場合、プロジェクト全体のゴールや達成手段についてブレストで行うとよい。このときには、オンラインでのブレストは同時にアイデアを出し合えるため、オンラインホワイトボードツール「Cacoo」などを活用するのがおすすめだ。ここでコミュニケーションが活性化できれば、意見を言いやすい心理的安全性が確保されることになる。

 ゴールが決まったら、Backlogのドキュメント機能にプロジェクトのゴールや決定事項、ルールなどを記述しておく。その上で、同じくミーティング等でタスクを洗い出して、課題として登録する。半年後になにを達成するのか、そのためにどんなタスクが必要で、どのようにスケジュールを引けば良いかを逆算しながら、メンバー全員で議論を深めておこう。

 このときの注意は、担当とスケジュールに加え、数値目標や完了条件を明確にすること。課題を登録し、担当を割り当てることで、メンバーは初めてリーダーシップを意識するようになる。達成がわかりやすいように完了条件を明確にし、課題はできる範囲の細かい粒度で設定するとよいだろう。

 一方で、メンバーのやり方にはある程度担当に裁量を持たせる。前述した通り、リーダーは指図や命令を下すのではなく、あくまで相談相手となり、サポートに徹することが重要だ。あとはBacklogで定期的に進捗管理を行う。Backlogがあれば、リーダーも随時フィードバックすることが可能になるので、小さな成功が重なることで、メンバーのモチベーションにつながる。

【まとめ】やらされ型のプロジェクトをBacklogで脱却

 ここまで見たとおり、Backlogも特殊な使い方をしているわけではない。チームワークマネジメントの5つのポイントに従って、ゴールと課題を共有し、担当をアサインし、進捗を管理していけば、メンバーのリーダーシップは自ずと醸成される。リーダーは、進捗を管理するのみならず、コミュニケーションと心理的安全性を意識する。コメントを行ったり、スターやスタンプなどで「きちんと確認していること」をアピールしたりしていく。これにより、メンバーからリーダーシップが生まれるだろう。

 やらされ型のプロジェクトから、自主性を重んじつつ、達成率や成果が見えやすい次世代のプロジェクトへ。Backlogによる見える化によって、メンバーが自らのリーダーシップでタスクをこなせる活き活きとしたプロジェクトを構築しよう。

チームワークマネジメントとは?

多様なメンバーが共通の目的達成のために助け合い、自律的に動けるチームを設計・運営する概念。チームの構造を見える化し、コミュニケーションを設計することで、チームメンバーが個々の能力を発揮しやすくし、全体の生産性向上と目標達成を目指す。

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