ROMPは華々しい(?)失敗を遂げたわけだが、それで諦めないのもIBM流であろうか? 当時のIBMの中の人々の考え方は、UNIXは限定的な普及に留まるだろうというものだったが、そのIBMでもヨークタウン(Thomas J. Watson Research Centerの所在地がNYのYorktownにあったことにちなむ)の中の人々にとっては必ずしもそうではなかったらしい。
とりあえず完成したRT PC Workstationと、AIX(AIX Version 1)であるが、これが完成する前からわざわざニューヨークからオースティンまで移動し、新しくIBUとして形成されたAdvanced Engineering System(AES)に、少なからぬメンバーがヨークタウンから参加したらしい。
1987年のIBM System JournalにAIX Version 2の概要が掲載されているが、この記事の著者であるL.K.Loucks氏とC.H.Sauer氏は、いずれもヨークタウンからの転籍組である(厳密にはSauer氏はYorktown→Communication Products Division Laboratory経由であるが)。
こうした、IBMの中でもUNIXに理解のある、そしてIBMの中央研究所の扱いであるThomas J. Watson Research Centerに勤務するほどスキルの高いメンバーが、ワークステーション作りという新しいIBUに集結することで、第3の製品が生まれることになる。
UNIXベースのオペレーティングシステム
AIX
まずAIXについて話をすれば、RT PC Workstation向けに当初投入されたVersion 1に続き、翌年にはコネクティビリティーの充実や独自のディストリビューションサービス、さらにはX Window(X10 R3/R4)まで実装したAIX 2が翌1987年にリリースされる。
ただ、IBUはこれで終わらせるつもりはなかった。1987年といえばSun MicrosystemsがSPARCベースのSun-4を出荷した年でもあり、またSGIがMIPS R2000ベースのIRIS 4D/60を出荷開始した年でもある。こうした動向は当然AESのメンバーも理解しており、競合製品に負けないより高速なプロセッサーと、この性能を引き出せるAIXを作る気が満々であった。

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