UNIXへの移行をスムーズに実現し
顧客のIBM離れを防ぐ
ASEが作り上げたのはPOWER(とPowerPC)だけではない。業界が次第にUNIXに移行していき、多くのベンダーがあわててUNIXへの移行を余儀なくされるという話は“業界に痕跡を残して消えたメーカーシリーズ”でしばしば見られたが、IBMはAIXのおかげでUNIXへの移行をそれほど大きな混乱なく実現できた。
連載493回で、ROMP向けにまずVRMというHypervisiorを作り始めたという話をしたが、この機構はAIX3以降にもそのまま継承されている。
この結果として、AIXは引き続きVRMをサポートする形で実装されたが、これはAIXをPOWER以外のプロセッサーに実装することを容易にした。要するにハードウェアの違いはVRMでカバーできるので、後はCコンパイラさえ用意すれば他のハードウェアへの移植は難しくない。
画像の出典は、Executive (AIX) operating system overview
実際1987年にはPS/2に対応したAIX PS/2が(ただし作業はLocus Computing Corporationが行った)、1988年にはSystem/370に対応したAIX/370が投入され、後にはESA/390に対応したAIX/ESAもリリースされている。
結果的にPOWER/PowerPCとAIXは、「顧客のメインフレーム離れ」を「顧客のIBM離れ」につなげないための良いバリアーとなったし、さらに新しい市場や顧客を開拓することにもつながった。これもまたEDSに続く、IBUの勝利と考えても良いのではないかと筆者は考えている。
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