サブスクリプションサービスの下地作りか:
アップルがAirPlay 2対応テレビを増やすワケ
2019年01月09日 09時00分更新
●Siri対応製品が増えることは考えづらい
アマゾンもグーグルも、スマートスピーカーと連携するデバイスを用意するだけでなく、デバイスから直接音声アシスタントを利用できる仕組みを提供しています。こうして、自社デバイスの販売に関係なく、アシスタントが利用できる増えていく戦略を採っています。
アップルもこうした音声アシスタントをサードパーティーから呼び出せる戦略に舵を切るのでしょうか。個人的には、難しいのではないかと考えています。
アップルの音声アシスタントSiriは、すでに膨大な台数が市場に出回っているiPhone、iPad、Mac、Apple Watchから利用でき、ホーム製品ではApple TVとHomePodで利用できます。競合が躍起になってアシスタント対応デバイスを増やさなくでも、既に十分に普及している状況といえます。そのため、自社デバイス外で無理にSiriを対応させなくても良いのです。
加えて、冒頭のプライバシーの問題が関係します。アップルはSiriを含めて、できる限りユーザーのデータをiPhoneの中にとどめようとつとめます。そのため、Siriをサードパーティーデバイスに対応させようとすると、ユーザーデータをクラウドもしくはそのデバイスへ持っていかなければならなくなり、冒頭にあげた屋外広告のステイトメントがくずれます。
プライバシーは、テクノロジーの加速度的な発展に制限をかける傾向にあります。アップルはそうした制約の中で、現実的な音声アシスタントの発展を目指しているのです。ただし、プライバシーはブランド化しつつあります。そして選択するのは、そのプライバシーデータの源であるユーザーです。
理解の上で、進歩的なテクノロジーを選ぶのか、コンサバティブに自分のデータを守るのか。2019年もこの議論は続きます。アップルにとって最大のリスクは、iPhoneやiCloudのプライバシーの脆弱性を突かれ、データが流出することでしょう。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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