中国には高級仕上げのIT製品で富裕層を狙ったスマートフォンもいくつか登場しています。E人E本という不思議な名前のメーカーは、ビジネス層や社長向けともいえる、外観も内部も質感とデザインを高めたタブレットで一時人気となりました。スマートフォンの本格展開を前に市場から撤退してしまった同社の製品を振り返ってみましょう。
高級文房具にも通じるタブレットを展開
E人E本は自社開発の手書き入力システムや、スタイラスペンを使った操作にも対応するAndroidベースのUI「EPOS」を開発するなど、紙のノートを置き替えることのできるタブレットの製品化を進めてきました。また製品は革調の表面仕上げとし、アプリのアイコンもAndroid標準のものではなく独自にデザインしたものとするなど細部にまでこだわった製品を作り上げてきたのです。
2010年1月に発表した最初の製品「T1」は、7型800x480ドットディスプレーに3Gモデムを内蔵し、OSにはWindows Embedded CE6.0を採用した世界初の「スタイラスペン対応の手書き対応PC」の触れ込みで中国国内に投入されました。タブレット本体は白色で、茶色の革ケースが付属しペンの収納も可能という、IT文房具を目指した製品でした。
同年7月には早くもOSをAndroid 2.1に入れ替え、Androidタブレットとしてもペン入力に本格的に対応したコンシューマー製品とした「T2」を発売します。Windows CEと比べると対応アプリが多く、操作性も高いことから注目を集めます。当時のスマートフォンはまだSymbian OSがメジャーであり、Androidスマートフォンも画面の狭さとタッチパネルの制度の悪さから中国語の文字入力は面倒なものでした。タブレットもペン入力対応のものはほとんど無く、このT2が唯一の紙のノートのように自由に手書きできるタブレットだったのです。本体カラーも黒色とし高級感も高めました。
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