圧倒的なスタビリティ!
車体が地面に吸い付いて離れない
ルノー・ジャポンからメガーヌR.S.を1日お借りし、横浜の市街地と東名高速道路、そして御殿場まで赴いてワインディングに峠道と、実に12時間たっぷりと走った。なお、本国のメガーヌR.S.には足廻り違いで2種類(柔らかめのシャシーカップと硬めのトロフィー)、変速機違いで2種類の計4種類が用意されているが、日本にまず上陸したのはシャシーカップのAT仕様。ルノー陣営いわく「もっとも日本の道に適しているのはこのモデル」ということだ。
市街地を走って驚いたのが「思ったより脚が柔らかい」ということと「取り回しの良さ」。柔らかいといっても、メガーヌGTよりは硬めなのだが「スポーツモデルだから……」という覚悟はまったくもって不要。これなら助手席の人も不快にはならないだろう。
コンフォートとナチュラルの2つのモードを試したが、個人的にはナチュラルの方が脚の収まりがよくて好ましい。小回りがとても効くのも好印象。バックカメラを備えているので、狭い駐車場で苦労することもなさそうだ。
タイヤが発するロードノイズは、かなり大きめ。フランス車なのでタイヤはミシュランかと思いきや、同車専用設計の「ブリヂストン・ポテンザS001」が装着されていた。足廻りついでにいえば、ブレーキも前作より大幅に強化。特にフロントにブレンボ製の4ピストンモノブロックキャリパーと直径355mmのブレーキディスクが装備され、強力なストッピングパワーとコントローラブルの高いブレーキ性能を有する。特にキャリパーの剛性感には驚くべきものがあり、硬いディスクを少し柔らかい摩材が掴む様子が脚から感じられた。
カーナビは車両とスマートフォンをUSB接続し、Apple CarPlayもしくはAndroid Autoを利用するタイプ。AndroidとiPhoneそれぞれに良さと悪さがあり、使い勝手は一長一短といったところ。選ぶ道もAndroid Autoは「ココ、本気で通るの?」というルートが出ることが多く、Apple CarPlayは「通りやすい道」を選ぶも渋滞にひっかかる確率が高いと違いがある。
メガーヌR.S.と峠の相性はバツグン
さてメガーヌR.S.が活きるところは「峠」といってもいいだろう。今回は御殿場と箱根を結ぶ「長尾峠」を走ってみた。長尾峠は路面のところどころに亀裂が入ったバンピーな場所で道幅が狭く見通しも悪い道が続く。さらに取材日は雨が降り、さらに路面には落ち葉が積って滑りやすい上に、山頂に進むと霧が出てくる状況。はっきり言って、まともに走れる状況ではないように思われた。
しかし、その中でもメガーヌR.S.は「水を得た魚」の如く絶好調だった。シャーシがエンジンパワーより勝っており、運動性能の高さと相まって、ちょっと底なしの印象。そして、大きなバンプでもクルマが浮き上がるような感覚は皆無。滑りやすかろうが道が荒れようが車体が地面に吸い付いて離れない。スタビリティーがめっぽう高いのだ。つまり「まったく怖くない」のである。
スポーツモードにすると室内には「いかにも直4ターボ」の排気音が車内に響き、ハンドルもぐっと重めに。脚もかなり固くなる。クルマはもっともっと機敏に動き、エンジン音の高まりと共にドライバーのテンションも上がり、クルマは前へ進めとドライバーを急かす。
面白いと思ったのは「舵角が少なく回る」「リアの軽さ」という独特の四輪操舵感。ミドシップとまではいかないものの、自分を軸にして回る感覚は独特で、コーナーリングがとても楽しい。
さて、峠を走った後に御殿場インターチェンジから東名高速に乗って都内へ。途中、足柄のダウンヒル区間があるのだが、ここでもメガーヌR.S.は無類の性能を発揮する。リアタイヤの同位相コーナーリングは、まるで四輪駆動車のような接地感だ。
さらにスピードバンプにおける振動吸収がいいものだから恐れ入る。メガーヌR.S.の設計スピードはもっと高いスピードレベルにあるのは明らかで、その領域を楽しめる高速道路も捨てがたい。この美味しい領域を知ると「もっと……」という欲が右足のアクセルペダルを刺激する。このワクワクこそスポーツカーの魅力だ。
低速における回頭性能の良さと、スタビリティの高さ。そして快適性。やたらめっぽう速いメガーヌR.S.の気になるお値段は「440万円」(税込)。日常使いを視野に入れるなら、メガーヌR.S.を選んで後悔することは絶対にないことは断言したい。

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