
今回のことば
「中期経営計画が未達に終わったのは市場への過度な期待と、実行力不足。新たな中期経営計画では実行力を強化し、成長の柱づくりに挑む」(NEC 代表取締役執行役員社長兼CEOの新野隆氏)
実行力不足と新事業立ち上げで見えた数々の課題
NECは、2018年度を最終年度とする「2018中期経営計画」を発表した。同計画では「変革の第二期として、成長の柱づくりに取り組む」ことを掲げ、2018年度の売上高は3兆円、営業利益は1500億円、当期純利益は850億円を目指す。
「内なる努力として、現在3%台の営業利益率を5%とする収益構造の確立を目指す一方、外なる努力としては、社会ソリューション事業のグローバル化によって、成長軌道への回帰を目指す」と、NEC代表取締役執行役員社長兼CEOの新野隆氏は、新たな中期経営計画の基本姿勢を示す。
2016年4月に社長に就任したばかりの新野新社長が挑む、初の中期経営計画となる。
新たな中期経営計画の前提となっているのが、2015年度を最終年度とした前中期経営計画での反省だ。
2015中期経営計画では売上高が3兆2000億円、営業利益が1500億円、当期純利益で600億円を目指したが、2015年度実績は売上高が2兆8212億円、営業利益は1073億円、当期純利益は687億円。最終利益は計画を達成したが、ここでは携帯電話事業を担っていたNECモバイルコミュニケーションズの解散および債権放棄が増益に寄与した影響が見逃せない。
新野社長は「2015中期経営計画はポートフォリオ改革が進展したほか、十分とはいえないが、利益体質、財務体質の強化を図ることができた。だがその一方で事業成長や収益改善に遅れが見られた。計画に対して未達となったのは、市場への過度の期待と実行力不足が原因」と総括。
「環境変化を感じながらも、それを埋めるための実行力が不足していた。新規事業の立ち上げの遅れ、海外事業の成長の遅れが原因。リスクが発覚したときへの対応に課題があること、リソースが確保できていないにも関わらず、新たなことをやろうとしていた反省がある」とする。
さらに「NECには創業から培ってきたDNAともいえる強みや企業文化がある。それは技術へのこだわりであったり、真面目、誠実という社風や、最後までやりきるという文化である。だが、3年前に社会イノベーション事業を軸とする方針へと変更。自ら価値創造に挑むことが求められるなかで、これまでの文化のままでは世界で戦っていけないと考え、この3ヵ年を成長の礎を作る期間に定めてきた。だが、1階建てに例えられる既存事業と、2階建てに例える新たな事業を、同じ考え方で取り組んではいけないとわかっていも、この意識が社内に十分に定着していない。また、新たなところに出て行くのに、現状を守ることに追われてしまう環境もある。そして、新たな価値を創造していくことができる人材を育てていく必要もある。まだまだ課題がある。文化の醸成のなかで、新たなビジネスモデルの考え方を定着させたい」とする。
同時に、新たな事業に取り組むと、事業部門をまたぐために責任の所在が不明確になるという課題解決にも取り組むという。
2018中期経営計画において、こうした数字に見えない取り組みが重視されることになりそうだ。「階段をひとつひとつ昇るように強くなる会社を目指す」と、新野社長は語る。

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