頂点を極める追及をスペックしたプロの道具に:
アップル新MacBook Proが「歓迎」された理由
2018年07月31日 09時00分更新
「Back to the Mac」からの脱却はあるか
今回のMacBook Proは「すばやい問題解決」と「ピーク性能の追究」という、とても基本的なアップデートから生まれていました。まだアップデートされていないiMac、MacBook、Mac mini、Mac Proについても、間違わずに刷新してくるのではないかと思います。
一方、現在のアップルのテクノロジーの流れについて懸念することもあります。前述の通り、技術開発がiPhone、iOSに偏重している点です。
これまでMacには、iPhoneやiOSの技術が流れ込んできました。高精細のRetinaディスプレー、音声アシスタントSiri、Mac App Store、指紋認証Touch ID、3Dタッチと同じTapTicエンジンを用いた、動かないけど押し込める感覚をおぼえるトラックパッド、環境光でホワイトバランスを調整するTrueToneディスプレーなどです。
2016年モデルのMacBook Pro 13インチ(左)と2018年モデルのMacBook Pro 13インチ(右)。TrueToneディスプレーでホワイトバランスが調整されている様子が分かる。
2010年にMacBook Airの第2世代を披露した際、iPhoneでつちかった技術をMacに戻す、「Back to Mac」というフレーズがイベント名に使われました。この後もその流れは続き、Macの進化の方程式となっています。
では、Macの「Macらしさ」をどこで生み出すのか、という疑問も生まれます。
たとえば、iMac ProとともにMacBook Proにも採用されたT2チップもまた、Appleがデザインする独自チップの採用という点ではiPhoneのやり方です。しかし、独自進化の可能性もまた、開かれていきます。
MacはT2チップによって、Touch Barの制御やTouch IDでのセキュリティに加え、新たにファイルの暗号化やセキュアブートなど様々な独自の価値が付加されました。
特にファイル暗号化やセキュアブートは、モバイルPCであるMacBook Proには重要な価値となり、性能を求めるクリエイターやエンジニアだけでなく、セキュリティを求めるビジネスや官公庁でのニーズにも応えます。
最新のインテルチップが載ることはもちろんですが、Tシリーズのチップの役割は、今後のMacらしい発展を担う重要な鍵になっていくでしょう。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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