世の中は、指数関数的速度で日々変化している。2045年に迎えるとされているシンギュラリティ(技術的特異点)に向けて、我々はどのように生きればいいのか。
米シリコンバレーに拠点を置く「シンギュラリティ大学」。そのエグゼクティブプログラムを修了した齋藤和紀氏が「エクスポネンシャル思考」を上梓した。AI時代における最前線の「知」、そして必須スキルとは一体なんなのか? 今回、本書の中から「第2章 全産業が根こそぎ変わる時代の必須スキル」の一部分を抜粋してご紹介。テクノロジーが変える仕事のカタチと、それをうまく乗りこなしていく生き方を学びたい方はぜひチェックしてほしい。
●目次
『空域という未活用空間への進出』#1
『空域という未活用空間への進出』#2
『脳とコンピューターネットワークが融合する』
エクスポネンシャル思考
著者 齋藤和紀
定価 1728円(本体1600円+税)
発売日:2018年5月23日
『空域という未活用空間への進出』#1
無人飛行機、いわゆるドローンは、近年になって破壊のフェーズに入っている技術の代表格です。とくに小型のマルチコプターと呼ばれるプロペラが複数ついたタイプは進化が著しく、センサーやモーターに加え、演算能力の高いチップの価格下落がこの後押しをしているといわれています。アメリカではドローンというと軍事用の無人爆撃機のイメージが強く、UAV(Unmanned Aerial Vehicle)と呼ばれることが多いように感じます。
その普及には、かつてスペースシャトルにしか使えなかったような高性能のジャイロセンサーや気圧センサーの価格が大幅に下落していることの恩恵が大きく、数ヵ月おきにより新しくより小さい機種が登場しているのが現実です。高性能機種のドローンでも20万円を切るものが出てきており、その性能当たりの価格は9ヵ月ごとに半減しているともいわれています。
また、モバイル・コンピューティングのおかげでチップの演算能力が格段に上がったためプロペラの回転数の制御が非常に緻密にできるようになりました。現在のドローンの機動性は恐ろしいくらいです。
世界中で売られているドローンの大半が中国で作られているのですが、必要な部品はプロペラとモーターを除けば、ほぼスマートフォンと同じです。いわば、ドローンは空を飛ぶスマートフォンともいえるでしょう。
ですので、スマートフォンを大量に作っている中国、とくにファーウェイやZTEといった巨大スマートフォンメーカーや中国最大のインターネット企業であるテンセントが本拠地を置く深せんでドローン産業が栄えているのは、そこで部品が手に入りやすかったという事情もあると思われます。
そして、世界中で売られているドローンの制御システムもまた、中国が世界で最も進んでおり、市場を押さえているのです。私は、日本の上空を飛ぶドローンのデータはほぼすべて中国の企業に送られて分析されていると考えており、これは国難にも等しい由々しき事態と考えています。