動画のエンコード作業もマルチスレッド処理がカギになる。そこで「TMPGEnc Video Mastering Works 6」を利用し、再生時間3分のAVCHD動画をそのままMP4形式に変換する時間を計測した。エンコーダーはx264(H.264)およびx265(H.265)を利用し、それぞれ2パスでエンコードした。ビットレート等のパラメーターはソフト側の標準設定のままにしている。
このベンチの場合は、H.264とH.265で大きく傾向が異なる。まずH.264の場合はV-Rayとほぼ同じ結果が出ており、コア数が多くクロックの高いCPUから順次処理を終えていく。この点だけ見れば第2世代Ryzen、特に最上位の2700Xのパフォーマンスは抜群だ。
だがH.265を利用すると、一転Core i7-8700Kが最速、6コア6スレッドのCore i5-2600KがRyzen 7 2700より速いという結果が得られた。この傾向は先代Ryzen 1000シリーズと同様で、H.265の処理(AVX2周り)がRyzen全般にとって不利なものになっているからと考えられる。実行するコードによってはこういう差も付く、という程度に考えておきたい。
今度は軽めの処理も交えた総合的なパフォーマンスを「PCMark10」でチェックしてみよう。テストは全てのワークロードを実行する“Extended Test”を実行する。総合スコアーだけでは得手不得手が分かりにくくなるので、ワークロード別のスコアーも比較した。
このテストではコア数が多くシングルもマルチも満遍なく速いCore i7−8700Kが総合スコアーでトップに立ち、続いてRyzen 7 2700X、Ryzen 5 2600Xとクロックの高いモデルが続く。8コア16スレッドのRyzen 7 2700のスコアーが奮わないのは、TDPを65Wに抑えるためにクロックを相当抑えているためだろう。
ワークロード別スコアーを見ると、CPUの特性がもう少し詳しく分かってくる。総合スコアートップのCore i7−8700Kがダントツに強いのはゲーム性能(Gaming)とオフィス系(Procuctivity)および軽作業(Essentials)の3つ。いわば、小回りの効くクロックが高いCPUが高く評価されているわけだ。では第2世代Ryzenはというと、CGレンダリングやビデオ編集等のマルチスレッド処理の多いDigital Contents Creationが良いスコアーを出している。ただし、Core i5/i7に対し僅差で買っているという点を考えると、シングルスレッド性能の弱さが伸び悩みの理由と考えてよさそうだ。
ここでもう少しクリエイティブ系の処理性能を確認しておこう。今回は200枚のRAW画像(6000×4000ドット、NEF形式)を「Lightroom Classic CC」に読み込み、DNG形式に変換する時間と最高画質のJPEG画像に書き出す時間をそれぞれ計測した。JPEG書き出しの際は“スクリーン用、標準”のシャープネスを適用している。シャープネス処理が以外とCPUに負担をかけるため、コア数の多いCPUが有利になる。
ここでも処理の内容により結果の傾向が若干異なる。CPU負荷の低いDNG変換では、シングルスレッド性能が高いCore i5/i7がRyzenを抑えてしまう。しかしマルチスレッド処理がかかるシャープネスが加わったJPEG書き出しでは、第2世代RyzenがCore i7-8700Kを上回った。CINEBENCHではCore i7−8700Kに歯が立たなかったRyzen 5 2600X等の6コア12スレッドモデルは、このテストでは比較的Core i7−8700Kに食らいつけている点も見逃せない。
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