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シリコンバレーとは違う、日本流オープンイノベーション実現のために

連載
ASCII STARTUP 業界ポジトーク

 はじめまして、株式会社アドライトの木村忠昭です。英字で書くと「addlight」のため「広告関係ですか?」と聞かれますが、イノベーション創造を支援するコンサルティング会社です。社名には「私たちのサービスにより世の中を明るく照らし(light add)出したい」という意味が込められています。私たちはオープンイノベーションのマッチングから事業化まで一気通貫で支援のほか、新規事業の開発支援、国内外スタートアップの育成支援などを手がけています。

日本のオープンイノベーションの問題点

 新しい事業の柱をつくるべく、トップダウンによりイノベーション戦略部門が発足。担当者が任命されたものの、どこから手をつけるべきか解が出ない。周囲から「何だかよくわからない部署」と揶揄される。そもそも既存事業で十分利益は出している。ベンチャーと組んで失敗でもしたらどうするんだと言われ、リスクが先行し、どこか他人事となる。

 新規事業やイノベーション推進チームは既存事業で成果を出している方が任命されることが多く、「彼らなら結果を出してくれるのではないか」という期待が込められています。成功体験もいくつも重ねているし、一定のプライドもある。言われたからにはやろうという気持ちもありますが、新規事業にはこれまでの経験だけではどうにもならないことばかり出てきます。失敗に失敗を重ね、壁にぶちあたってばかり。何度も何度も繰り返して進んでいかないといけない。このような部分が、イノベーションには熱意が重要と言われる所以です。

 アイデア、ビジネスコンテストをやってみる、マッチングプラットフォームを使ってみるなど、なんとなく“オープンオープンイノベーション”をやっている感を出し、予算も使い切ったところで、「これだけやってダメだからやめよう、我が社には向いていない」という号令を待つ。こんな状態が世の中には存在しています。

 ある大手企業へのヒアリング中、「イノベーションを推し進めるうえで我が社に足りないことがあるとすると何だと思いますか?」と、打ち合わせも終盤に差し掛かった頃こう尋ねられ、「困っていない」と返答したところ、どよめきが起きた――これは実話です。

 現状に満足し、新しいことへの価値創造を見出す気概が薄いように感じたため、僭越ながらそう返したのですが、驚きのけぞったのち先方は我に返り、「そうだよな、想いを持ってないもんな……」と、沈黙を作ってしまいました。

日本流オープンイノベーションにこだわる理由

 こうした現状を打破し、我々はイノベーションへの糸口を見つけていただこうと、一般の方向けにリアルイベントを開催しています。なかでも、オープンイノベーションにかかわる大手企業やベンチャーが自社の事例や取り組み内容を伝える「Mirai Salon」シリーズは好評をいただいています。

「Mirai Salon 6―ロボティクスから自動車まで オープンイノベーションがもたらす次代」の様子

 2017年12月に開催した「Mirai Salon 6―ロボティクスから自動車まで オープンイノベーションがもたらす次代」で、オーディエンスから「日本でもシリコンバレーのスタイルを適用できるか?」と聞かれ、「ものづくりが強みの企業につき、シリコンバレー流は合わないと考えている」とは、株式会社デンソー 技術戦略企画室 技術企画課・栗山裕樹氏。

 オープンイノベーションは国ごとにスタイルがあり、そもそも文化も違うため、他国の事例をそのまま踏襲するのは難しいのが実状です。当たり前のようにオープンイノベーションや産学連携がおこなわれているシリコンバレーですが、その事例を日本にそのまま適用することはできません。

「Mirai Salon 6―ロボティクスから自動車まで オープンイノベーションがもたらす次代」の様子

 また、このイベントで唯一オーディエンス参加したスタートアップの経営者からは「日本でも優秀なスタートアップはいるが、接点があるのはたいていVCやエンジェル投資家。大手企業とはない。シナジーのあるスタートアップに賭ける動きや、一緒に動ける場が大企業との間にもあると嬉しい」と切実な想いが投げかけられました。

 それに対し、Japan Digital Design株式会社 代表取締役CEO 上原高志氏は「日本のスタートアップも経験を積んだアドバイザリーや社外取締役を入れたほうがいい。サービスに実績がないのは仕方がないが、それまでのトラックレコードは見たい。ライフサイエンスやロボティクス、AIの事業を推し進めるなら、資金調達の金額規模と、それに応じてどういう座組みをするのかないと厳しい」と答えました。

 シリコンバレーの事例も参考になるところはもちろん参考になります。ただし「らしさ」を活かすことで、日本流オープンイノベーションが形成されていくものと思われます。本連載ではより具体的な日本流オープンイノベーションにまつわる事例やイベントレポートをお届けしていければと思います。

木村忠昭(アドライト)

著者近影 木村忠昭

株式会社アドライト 代表取締役CEO。
大学院卒業後、大手監査法人に入社し、株式公開支援業務に従事。2008年、イノベーション共創を手掛ける株式会社アドライトを創業。合わせて国内スタートアップ企業へ社外役員就任によるハンズオン支援を行い、うち5社(ユーグレナ、じげん、クラウドワークス、エスエルディー、マネーフォワード)が上場を果たす。
アジアやアメリカの海外スタートアップ企業の支援にも積極的で、これまでに20社以上の投資育成を行いうち3社が買収される。これら国内外スタートアップの知見やネットワークを活かし、大手企業のオープンイノベーションにおける一気通貫での事業化支援を得意とする。
主要な国立/私立大学との産学連携プロジェクトの支援実績も豊富。東京大学経済学部経済学科、東京大学大学院経済学研究科修士課程卒業。
株式会社アドライト(addlight Inc.)は、イノベーション創造支援会社としてオープンイノベーションのマッチングから事業化まで一気通貫でご支援のほか、新規事業開発支援、国内外のスタートアップの育成等支援。

■お知らせ
 Mirai Salonを含む国内外のイノベーショントレンドを随時開催しております。ぜひチェックしてみてください。
イベント情報(addlight.co.jp)
イベントレポート(journal.addlight.co.jp)

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