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スタートアップと地方工場が良好な関係を築くためには?

斬新なアイデアと量産ノウハウのマッチング、JDSoundとMakers Boot Campが実態を語る

連載
IoT&H/W BIZ DAY 4 by ASCII STARTUP

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資金調達:「初期費用で数千万円」多額の資金をどう調達するか

 JDSoundでは、GODJ Plusのリリースに向けて、同社で初めてクラウドファンディングに挑戦した。金型費用や部品調達費用などの初期費用だけで数千万円のコストが予想されたが、従業員7名の小さな会社で大規模な資金調達は難しかったためだと、宮崎氏は説明する。

JDSound 宮崎氏

 Makuakeを使いクラウドファンディングを実施した結果、およそ1300人の出資者から、これまでの日本最高額となる5300万円超の投資を集めることに成功した。前世代機のGODJにおける実績や、製品そのもののユニークさももちろんだが、「東日本大震災のあとに仙台で立ち上がったスタートアップが、実際に津波をかぶった(被災した)石巻の工場と共に作る製品、というストーリーも出資者の共感を呼んだのではないか」と宮崎氏は振り返る。

 ちなみにJDSoundでは当初、クラウドファンディングの出資目標額を「2000万円」と設定していた。だが、実際には「4000万円か、そのくらいギリギリのラインまでお金がかかった。逆に2300万円とか、目標を少し超えるラインで達成していたら厳しかったかもしれない」(宮崎氏)。目標ラインを高くすると達成が難しくなるが、むやみに低くすれば赤字になってしまう。クラウドファンディングにおいては目標ラインの引き方が重要だと、宮崎氏は説明する。

 また牧野氏は、「クラウドファンディングの反響を見て、融資を決める銀行もある」とコメントした。クラウドファンディングの段階で多くの支援者が集まれば、その製品が売れそうだという傍証となり、銀行としても資金を融資しやすくなる。実際に、MBCが支援する中には、クラウドファンディングで調達した資金と銀行融資資金を組み合わせて事業に取り組むスタートアップもあるという。

MBC 牧野氏

量産化試作:工場側でもビジネスとして成り立たせるためには

 次は「試作」だ。一口に試作と言っても、デモ用試作、展示会用試作、量産化試作と何段階もの試作があるが、スタートアップが特につまづきやすいのは「量産化試作」だという。製品を効率良く、かつ品質のばらつきを抑えて量産するためには、実践的な量産のノウハウをふまえた設計と試作が必須となる。そして、ほとんどのスタートアップはそんなノウハウを持たない。

ハードウェアの製造プロセスには「量産化試作の壁」があり、多くのスタートアップがつまづく

 MBCが提携する京都試作ネットでは大企業を中心に試作のサポートしており、「年間で1000件ほどの問い合わせ」(牧野氏)を受けているという。ただし、大企業とスタートアップとの大きな違いが資金の問題だ。工場の側としては、その後の量産につながらないかぎり、試作だけの収益ではビジネスとして厳しい。だが、資金力に乏しいスタートアップは、事前に大量生産を約束することができない。まるで鶏が先か卵が先か、という話だ。

 「(工場の立場では)試作だけではなかなかお金にならない。その先の量産まで見据え、(スタートアップ側が)『年に何個売れる』という話をすることで、やっと話が前に進む」(宮崎氏)

 試作をビジネスとして持続可能な仕組みとするために、MBCでは前述のShisakuファンドを立ち上げた。スタートアップに対し試作費用を投資したうえで、量産化後の製品販売や株式売却を通じて回収していく仕組みだ。しかも、国内だけでなく海外のスタートアップも対象とすることで、「海外スタートアップ+日本の製造業」という新たな枠組みを拓こうとしている。

 「生産拠点としての日本の工場の認知度はまだまだだが、期待感はある。海外のスタートアップも、中国で量産することの問題点(品質など)は感じている。MBCの取り組みを通じて、生産拠点の選択肢として日本の工場もあるということを知ってもらいたい」(牧野氏)

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